正確に予想することが難しい線状降水帯 予想技術は開発途上【暮らしの防災】

気象庁が力を入れている防災情報は「顕著な大雨に関する気象情報(線状降水帯に関する情報)」です。線状降水帯は、積乱雲群が線状に並んで長い時間、ほぼ同じ場所に大量の雨を降らせます。

<線状降水帯の予想技術は開発途上>

線状降水帯は「線状に伸びる、長さ50〜300km・幅20〜50km程度の強い降水をともなう雨域」と定義されています。 気象庁は2021年から線状降水帯の「発生」を発表していて、発生の可能性がある場合、半日ほど前から予報文に「線状降水帯」という言葉を入れて警戒を呼びかけています。 2023年5月末からは、最大約30分前倒しして「発生」を発表し始めています。さらに2024年5月28日からは、対象地域をこれまでの地方単位から府県単位に絞りこんで発表する運用になります。 しかし線状降水帯に関する予想技術は、開発途上です。 気象庁によると、2023年は半日前に予測情報が発表された22回のうち、実際に線状降水帯が発生したのは9回で「的中率」は約41%、2022年の23%からは上昇しています。 また情報が出されずに線状降水帯が発生した「見逃し率」は約61%で、去年の73%から改善しています。気象庁自身も予想には課題があるとしています。

<なぜ予想が難しいのか?>

なぜ予想が難しいのか?それは主に以下のことが考えられます。 ■発生の仕組みに未解明な部分がある ■予想するために必要なデータが不十分(主に空気中の水蒸気について) ■予想するための計算プログラムが開発途中 つまり、現在の観測・予想技術では、いつどこで発生し、どのくらいの期間継続するのかを、事前に正確に予想することはできないと言います。 それでも「命」を守るために、気象庁は今出来ることを頑張っています。 「顕著な大雨に関する気象情報(線状降水帯に関する情報)」が発表されたら、当該地域と、その周りの地域の人は「早めの避難」など対策が必要です。 現代科学には限界があります。それを前提とした防災対策・行動が求められます。 ◇ 被災地取材やNPO研究員の立場などから学んだ防災の知識や知恵を、コラム形式でつづります。 ■五十嵐 信裕 東京都出身。1990年メ~テレ入社、東日本大震災では被災地でANN現地デスクを経験。報道局防災担当部長や防災特番『池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ』プロデューサーなどを経て、現ニュースデスク。防災関係のNPOの特別研究員や愛知県防災減災カレッジのメディア講座講師も務め、防災・減災報道のあり方について取材と発信を続ける。日本災害情報学会・会員 防災士。

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