和菓子屋の息子、「パティシエ」になる 独立し洋菓子店オープン、家族への思いは… 実家を継いだ弟はマツコ・デラックスさんも絶賛の“元ホスト”

5月、島根県松江市におしゃれな洋菓子店がオープンし、早速人気を集めています。店を立ち上げたパティシエは、実は元々"和菓子店"の息子。和菓子屋で育った彼が洋菓子店を始めた理由とは?

松江市に5月にオープンしたばかりの「HAPPY SWEETS FACTORY」。店頭には見た目も美しい洋菓子の数々が並びます。

HAPPY SWEETS FACTORY 吉岡徹さん
「バタバタしてたらここまで来たなって感じですね。ずっと独立したくて」

オーナーパティシエの吉岡徹さん、36歳。
県内外数々の洋菓子店で修業を積み、念願だった自分を店をオープンさせました。

そんな徹さんには、ある意外な縁があります。

HAPPY SWEETS FACTORY 吉岡徹さん
「斐川町の吉岡製菓が実家になります。」

じつは徹さんの実家は、出雲市の人気和菓子店「吉岡製菓」なんです。

HAPPY SWEETS FACTORY 吉岡徹さん
「洋菓子がずっと子供の頃から好きで、なんで和菓子なんだろ、ケーキのほうが好きだしシュークリーム好きだしなぁって思ってた」

吉岡製菓といえば、去年、TBSの人気番組「マツコの知らない世界」でも取り上げられた人気店。

マツコさん絶賛の和菓子を生み出したのが…

吉岡製菓 吉岡洸さん
「あの、ホストをさせてもらってました」

店の3代目、吉岡洸さん。
元ホストという異色の経歴をもつ和菓子職人です。

洸さんは、徹さんの実の弟。
オープン前、徹さんが仕込みをしてると…

「洸かな?」

兄をたずねて、洸さんがやってきました。
仕事の合間を縫って時々手伝いに来てくれるんだそうです。

洸さん(弟)
「仲いいんじゃない?」
徹さん(兄)
「多分いいと思います。喧嘩もするししょーもない話もするし」
洸さん(弟)
「どっちかっていうと俺が兄貴側というか。多分(兄は)俺に憧れてる」
徹さん(兄)
「俺こんなサングラスかけないんで!」

高校を中退しふらっと大阪に行ってしまうなど、自由奔放な洸さん。
その兄弟ということは、徹さんも昔はやんちゃだったのかと思いきや…

HAPPY SWEETS FACTORY 吉岡徹さん
「ずっと石橋たたいて歩くタイプで、とりあえず自分のしっかりした経歴作ってみたいな。あいつは最初から自分を表現してたんですよ、だけど僕は、当時自分の色がなかったんで、とりあえず何か可能性を広げるために目の前のスポーツだったり勉強に打ち込むしかゴールが見えない、みたいな」

性格は対照的だという兄弟同士。
それは仕事でも…

HAPPY SWEETS FACTORY 吉岡徹さん
「親父と洸は感覚タイプなんです。感覚で『これくらいの水の量』『この前はもうちょっと多かったじゃん』『それは冬だったけん』みたいな。今思えば分かるんですよ、季節や厨房内の湿度や気温によっても変わるんで。でも数値にしたいんですよ、俺は。データ残さんと不安なんですよ」

それぞれ違うアプローチで菓子作りをしていますが、互いにその実力は認め合っています。

そのきっかけとなったのが、今から9年ほどの前こと。
吉岡製菓の大規模なリニューアルです。
テナントとして入っていたスーパーが閉店したことで新しい店を立ち上げることを決断。
県外で修業していた徹さんも戻り、兄弟2人で新店舗に勝負をかけまし
ほとんど寝る時間もなく、働きづめでしたが…

弟・吉岡洸さん
「やっぱりチームがいないとキツイんですよね、1人じゃ止まっちゃうこともあるんで」

兄・吉岡徹さん
「自分が洋菓子店わたってきて、家族より一緒にいるんですよパティシエ同士。洸とも一緒ですけど、そういうやつらって信頼できるんですよ、任せられる。」

家族一丸となって一緒に店を盛り上げてきた徹さん。
なぜ吉岡製菓を離れて独立する道を選んだのでしょうか?

HAPPY SWEETS FACTORY 吉岡徹さん
「最初は吉岡製菓で洋菓子部門で立ち上げるっていうのも視野に入れたんですけど、『ルビーのイチゴ』が誕生したんで。吉岡製菓は和菓子を主軸にあるべき会社だし」

洸さんが開発したフルーツ大福「ルビーのイチゴ」がメディアなどにも取り上げられ、全国から注目を集める大ヒット商品に。
これを機に徹さんは再び県外に行き、店のリニューアルのため半ばとなっていたパティシエ修業を再開したのです。

ロールケーキが有名な店で技術を磨き、独立。
夢だった自分の店のオープンにまで至った徹さんのスペシャリテが、ふわふわの生地に特製のクリームを挟んだ「クリームサンド」です。

HAPPY SWEETS FACTORY 吉岡徹さん
「ロールケーキにすると、巻くときに生地をいじめてる感じなんですよ、ぐりって。せっかくふわふわに焼きあがったのに何ぎゅってしてくれてんねんって、あんまり負荷をかけたくないんですよ。
そうしてたどり着いたのがクリームサンドです。
これ、めっちゃこだわったんですよ。毎回数本しか出せない。やっぱり自分がやりたい菓子がやりたいんで」

和菓子屋育ちのパティシエが手掛ける洋菓子店。
こだわりのスイーツの数々を、ぜひ味わってみてはいかがでしょうか。

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