【ハンドボール】パリ五輪へ男子日本代表(彗星JAPAN)14人 | オルテガ流スピード重視

フォトセッションに応じる彗星ジャパンのメンバー。前列左から中村匠、安平光佑、櫻井睦哉、杉岡尚樹、吉田守一、部井久アダム勇樹、徳田新之介、渡部仁、岡本大亮。後列左から元木博紀、玉川裕康、吉野樹、藤坂尚輝、髙野颯太、坂井幹、水町孝太郎、笠原謙哉=2024年6月28日、久保写す(以下すべて)

日本ハンドボール協会は2024年6月28日、ハンドボール男子日本代表(彗星ジャパン)のパリ五輪メンバー14人とAP選手(交代選手)3人を発表しました。選ばれた17人は7月1日・3日、東京・代々木第一体育館で行われるフェロー諸島と親善試合をしたのち、7月27日午後2時(日本時間午後9時)の対クロアチア戦を皮切りに、パリ五輪一次リーグを戦います。17人をポジション別に紹介します。(久保弘毅)

オルテガ監督「3人まで入れ替え」想定

FCバルセロナで今シーズン、ヨーロッパチャンピオンズリーグを制したカルロス・オルテガ監督が何度も口にしていたのが「スピード」でした。積極的なDFでボールを奪って、速い攻撃で得点に結びつける。その狙いを踏まえて14人が選ばれました。当初の20日の発表予定から延期して、ギリギリまで見極めて選んだのでしょう。またAP選手については「大会中最大3名まで選手の入れ替えができるので、3人にした」とのことでした。強度の高い国との連戦が続き、ベンチ入りが世界選手権より2人少ない14人ですから、かなりの消耗が予想されます。AP選手にも出番はありそうです。

LW:杉岡尚樹、髙野颯太(いずれもトヨタ車体)

#09 杉岡 尚樹(トヨタ車体)
#44 髙野 颯太(トヨタ車体)

スピードのある杉岡と、DFでアクセントになる髙野が選ばれました。真ん中を守れ、5:1DFのトップで欠かせない髙野は当確として、あとはオールラウンダーの小塩豪紀(豊田合成)と、サイドのスペシャリストの杉岡の争いでした。五輪ではベンチ入り人数が少ないため、攻守に複数のポジションをこなせる小塩が有利かと思われましたが、ふたを開けてみると杉岡のスピードが評価されました。1枚目しか守れないレフトウイング専門の選手を入れるということは、オルテガ監督は杉岡の攻守の切り替えの早さを相当買っているのでしょう。「60分間走り切ります」と宣言した杉岡の脚力に、チームの命運がかかっています。

LB:部井久アダム勇樹(ジークスター東京)、吉野樹(トヨタ車体)

#15 部井久 アダム勇樹(ジークスター東京)
#31 吉野 樹(トヨタ車体)

世界レベルでロングシュートが入る部井久と吉野は、何があっても外せない2人です。2人がいない時間帯は攻撃の選択肢が限られてくるので、9mの外から打ち込めるどちらかが、必ずコートに立っていてほしいのです。部井久は3枚目やトップDFで、吉野は2枚目のDFでもチームにプラスをもたらします。プレータイムを分け合いながら、攻守にエネルギッシュに動いてくれることでしょう。

CB:安平光佑(ヴァルダル)、藤坂尚輝(日体大)東江外れる

#2安平光佑(ヴァルダル/北マケドニア)
#39藤坂尚輝(日本体育大学)
AP選手
#38水町孝太郎(豊田合成)

今回のメンバー選考で一番のサプライズ。キャプテンの東江雄斗(ジークスター東京)が外れました。オルテガ監督は「スピード」だけでなく「インテンシティ(強度)」も強調していました。当たりの強い連戦を考えると、今の東江のコンディションでは厳しかったのでしょうか。そして東江の代わりには唯一の大学生・藤坂が選ばれました。他の選手に聞くと、すでに誰もが認めるシュート、パス、スピードを見せているとのこと。ここから実戦で合わせていけば、パリ五輪本番は安平、藤坂の若き司令塔コンビの活躍が見られそうです。年齢を重ねて判断力とパスの速さに磨きがかかった水町が、AP選手でいるのも心強いですね。センターだけに限らず、バックプレーヤー3ポジションのバックアップで期待できます。 

RBとRW:櫻井睦哉、徳田新之介、渡部仁、元木博紀

#04 櫻井 睦哉(トヨタ車体)
#19 徳田 新之介(アル・ドゥハイル/カタール)
#20 渡部 仁(トヨタ車体)
#25 元木 博紀(ジークスター東京)

ライトバックとライトウイングは2ポジションまとめて紹介します。両方ができる渡部、元木のベテラン2枚はほぼ当確でした。残りを1枚にして、2ポジションを3人で回すなら、サイズとDF力のある櫻井が浮上してきます。徳田兄(弟はアルバモス大阪の徳田廉之介)はやや不利かと思われましたが、スピードに乗った攻撃と高い位置で仕掛けられるDFを買われて、見事メンバー入り。4人でバランスを取りながら、左利きの2ポジションを回すことになりました。実戦ではどういう組み合わせが見られるでしょうか。

PV:吉田守一(ナント)、玉川裕康(ジークスター東京)

#13 吉田 守一(ナント/フランス)
#27 玉川 裕康(ジークスター東京)
AP選手
#74 笠原 謙哉(ハルズール/アイスランド)

ライン際の強さは日本歴代最強の吉田。2mのサイズにDF力と走力を兼備した玉川。OFとDFでライン際の要になる2人が選出されました。吉田はフランスで3枚目DFも修行中。吉田がDFで狙われなくなったら、攻守のバランスが格段によくなります。8年前の第1次オルテガ政権を経験している玉川は、成長した姿をオルテガ監督に見せたいところ。AP選手に最年長36歳の笠原がいてくれると、安心感があります。3枚目DFでも5:1DFのフルバックでも、ピンチを未然に防いでくれます。

GK:中村匠(豊田合成)、岡本大亮(トヨタ車体)

#01 中村 匠(豊田合成)
#16 岡本 大亮(トヨタ車体)
AP選手
#17 坂井 幹(大崎電気)

国内で常にタイトルを争う豊田合成とトヨタ車体の正GKが選ばれています。中村は迷いのないキーピングだけでなく、今すぐにでも国内トップのメンタルトレーナーになれそうな声かけが大きな武器です。岡本はここまで3番手だった序列をひっくり返してきました。足を手のように操り、顔のあたりのシュートでも足で止める動きは、本場ヨーロッパのファンをうならせるはずです。AP選手には国際大会に強い坂井。国内の実績は中村>岡本>坂井ですが、国際試合ではほぼ横一線です。「途中から登録した坂井が一番活躍した」なんてことが起こっても、不思議ではありません。

フェロー諸島戦後の7/6、オンラインイベントで解説

7月1日、3日のフェロー諸島との国際親善試合は、テレ東スポーツで配信されます。実況を担当する中川聡アナウンサーはハンドボール経験者(ポジションはGK)です。「アナウンサー歴23年目にして、今回がハンドボール初実況です」とは言いますが、10年以上も前からハンドボールの取材を続けていました。代表戦やプレーオフだけに限らず、ハンドボールを盛り上げるイベントなどにも参加しています。卓球の実況や懐かしの「レディス4」などで鍛えたトーク力で、男子日本代表の魅力を伝えてくれることでしょう。この試合を踏まえて7月6日(土)20:00~、アルバモス大阪監督の元日本代表・銘苅淳さんと筆者が対談、自力では36年ぶりのオリンピック出場となる彗星JAPANの一次リーグ突破への道を展望します。ぜひご参加ください。

パリ五輪一次リーグ日程

  • 7月27日(土) 14:00(日本時間21:00)クロアチア-日本
  • 7月29日(月) 9:00(日本時間16:00)日本-ドイツ
  • 7月31日(水) 14:00(日本時間21:00)スペイン-日本
  • 8月2日(金) 19:00(日本時間翌2:00)日本-スロベニア
  • 8月4日(日) 9:00(日本時間16:00)スウェーデン-日本

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