ピンクのウェアと強気のパット 桑木志帆が惜敗から変わったこと

涙があふれた(撮影/和田慎太郎)

◇国内女子◇資生堂レディスオープン 最終日(30日)◇戸塚CC西コース(神奈川)◇6697yd(パー72)◇曇り(観衆7752人)

この日、桑木志帆が着ていたピンクのウェアは、優勝者が着る赤いジャケットを意識して選んだもの。「赤にしようと思ったけど、“赤すぎるから”」とピンクを選択したが、優勝を狙う気持ちは少しも曇らなかった。

昨年のプレーオフ2ホール目は、6mのバーディパットがショートして惜敗に終わった。「“しっかり打てるんだぞ”というのを前面に出しながらやっていました」と、強い気持ちが初優勝を引き寄せた。

最終日に4バーディ、1ボギー「69」で回って通算11アンダーまで伸ばし、堀琴音との1打差を逆転して優勝。「去年の自分と比較しながら回っていた」と、昨年との大きな違いは強気のパッティングとメンタル面だ。

ロングパットが次々入った(撮影/和田慎太郎)

「去年はショートが多かった。周りの人やネットでも、『打てないと勝てない』という言葉を見ていたのですごく悔しかった」。パッティングを課題のひとつに挙げ、今年の4月頃に福岡のパッティングスタジオに足を運んで、右脳と左脳の使い分けを学んだという。脳の状態を解析できる「フォーカスバンド」という器具を使い、メンタルに左右されずパットを打つことに集中。この日は5番(パー3)で右奥から8mのバーディパットを入れて堀に追いつくと、9番で13m、12番で6mとロングパットをねじ込みスコアを伸ばした。

自信がついたことでメンタル面も安定。もともと「ネガティブになりやすい」という性格で、今までは「バーディを獲らなきゃ」と焦りに負けて崩れてしまう場面もあったが、今週は最後まで冷静に戦えた。

ギリギリで入ってガッツポーズ!(撮影/和田慎太郎)

堀に1打差をつけて迎えた18番も、「ことしはプレーオフにはしたくない。セーフティに行くと負けると思った」と勝負を決めるつもりで入った。ラフからの2打目をニアサイドのラフに外したが、気持ちは少しも焦らなかった。

「練習でやっていたので、動揺しないで寄せられる」と10ydからの3打目を寄せてウィニングパットは1m前後。強気に打ったファーストパットはフチを回ってカップイン。「ギリギリで入って危ないと思った」と直後は喜ぶ余裕もなかったが、グリーンを降りる頃にはうれし涙がこぼれた。

家族で記念撮影(撮影/和田慎太郎)

「トップ10には入れるけど、優勝争いに絡めない試合が続いていたので悔しかった」。2試合前の「ニチレイレディス」では、2位で最終日を迎えたが「72」と伸ばせずに10位。今季は今週までに7度のトップ10入りを果たしていたが、なかなか初優勝には届かなかった。

「素直に、うれしいです。次は2勝目を挙げたい」と力強く話す姿に、もう“ネガティブ”という言葉は似合わない。(横浜市旭区/谷口愛純)

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