「命の価値や大切さ考えて」 対馬丸の引率教諭だった祖母の体験を教材に 沖縄   

義祖母の糸数裕子さんの体験を副読本に執筆した眞榮城善之介さん

 真和志小学校教諭の眞榮城善之介さん(45)が執筆した、対馬丸事件の生存者の体験談が、県内で活用されている小学校道徳の副読本に掲載されている。眞榮城さんの妻は、事件の生存者で2022年に亡くなった糸数裕子(みつこ)さん(享年97)の孫で、義祖母の体験をまとめた。「命の大切さや人と人の関係性を教える上で、多くの先生に活用してほしい」と呼びかけた。

 糸数さんは1944年当時、国民学校の教師を務めていた。沖縄戦が始まる前に子どもたちを疎開させようと各家庭を訪問し、親を説得して回ったという。同年8月22日、対馬丸は米潜水艦の魚雷攻撃を受けて沈没し、糸数さんが引率した児童13人は全員、船とともに海の底に沈んだ。

 糸数さんは自分だけが生き残った自責の念などから、対馬丸の慰霊祭に「私は行く資格がない」などと長らく参加しなかったという。

 眞榮城さんは折に触れて糸数さんの体験を聞いていた。教科書の副読本作りに携わることになった際、義祖母の話を題材にしたいと考えた。「死にたいほどつらかったのだろうと推測していたが、義祖母は『死にたいとは思わなかった』と言った。その思いを考えてもらうような教材にした」と語る。

 副読本では文章の最後で「自分ならどう考えたら生きていけるか、考えてみましょう」と問いかける。眞榮城さんは「周りの人がいて自分がいるとか、自分が死んだら悲しむ人がいるということ。そこから命の価値や大切さを考えてもらうきっかけづくりになれば」と思いを込めた。

 副読本は2019年に発行し、インターネットで全文を公開している。詳細は「沖縄県郷土資料集」で検索。

 (外間愛也)

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