アナログ作業や報酬の低さ・・・ 統計調査員の確保困難 県の統計調査課「現場はものすごく苦労」 国に抜本的改革求める

 国勢調査などの基幹統計の調査書類を配布、説明する「統計調査員」の確保が困難になっている。島根県が初めて実施した実態調査で「十分確保できている」と回答した市町村はゼロだった。アナログ作業や報酬の低さ、個人情報保護や防犯意識の向上で警戒されるなど精神的負担の重さが理由という。県は全国的に同じ状況とみて、他の都道府県と連携し、統計手法の抜本的改革を国に求める。

 「『一切答えたくない』と言われた。何回説得しても駄目」

 島根県統計調査員協議会連合会会長で、調査員歴40年超の伊藤京子さん(74)は仲間から同じ言葉を聞く。詐欺などへの警戒感は強く、居留守も多い。アルバイトなどで家にいないことが多い学生に対しては部屋の明かりがつくのを待って訪問を試みる。時間帯を変えながらチャイムを何度も鳴らすといい、「調査員歴が浅い人は割に合わないと思っているのではないか」と話す。

 県の調査で、5月時点で調査員を「十分確保できている」と答えた市町村はなく、「苦労しているが確保できている」は江津市と美郷、津和野、吉賀の3町、知夫村の5市町村にとどまった。残り14市町は「確保できていないため他の手段(行政職員や自治会の協力など)で対応」と回答した。

 2025年に控える国勢調査に向け、13市町が「他の手段で対応できる見込み」と回答する一方、30年国勢調査は3町に減り、14市町が「国が想定する配置基準では確保が困難」と答えた。

 実際、松江市は20年国勢調査時に確保できたのは107人。国が求める必要数の1213人の1割に満たず、自治会や市職員、業務委託による対応を余儀なくされた。

 県は確保が困難な理由として、同じ家への訪問回数の増加や回答拒否による精神的負担の重さのほか、国が運用で定める手作りの地図作製や調査票の手渡しなどを挙げる。報酬は国勢調査の試験調査の場合、1調査区(約50世帯)4万3380円で、1カ月程度かかる作業の割には低いとしている。

 県は戸別訪問し、対面調査する手法が時代にそぐわないとして、マイナンバーの活用や完全オンライン化など国に抜本的改革を求める。県統計調査課の松尾周一郎課長は「現場はものすごく苦労している。国に強く求めたい」と話した。

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