マドリーが視察を繰り返し、マンC、アーセナルも関心を寄せるブラジルの超新星ロランは、「ロナウジーニョとネイマールを足したようなアタッカー」【現地発】

ブラジルにまた一人、野性味たっぷりの若手アタッカーが出現した。

7月4日で18歳になる。トップ下か右サイドが主戦場。常にボールを欲しがり、細かいタッチでボールに触り続け、屈強なDFの激しいフィジカル・コンタクトを物ともせず、左足から強烈なシュートを叩き込む。

ドリブラーでありながら視野が広く、逆サイドへのロングパスが秀逸で、精巧なスルーパスを通す。跨ぎフェイント、シャペウ(つま先でボールを瞬時に跳ね上げて相手の頭上を越してかわす)といったトリッキーなプレーも得意で、ロナウジーニョとネイマールを足したようなプレーヤー。それがフラメンゴに所属する話題の超新星、ロランだ。

生まれ育ったのは、リオデジャネイロの最も危険な貧民街の一つ。ギャング同士の抗争を描いた2002年制作の映画のタイトルとして世界的に有名になった「シダージ・デ・デウス」地区が、ロランのルーツだ。

「危ない、汚い、という見方をされることが多いけれど、僕にとっては世界で最も安心できる場所。この街の出身であることを誇りに思う」

と本人は胸を張る。

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2019年、13歳でフラメンゴのアカデミーに加わった。15歳でU-16の主力となり、ブラジル代表でもU-16とU-17代表でプレー歴がある。

23年1月にリオ州選手権の試合でトップチームにデビューすると、2試合目で早くもネットを揺らす。16歳7か月での初ゴールは、ヴィニシウス(レアル・マドリー)の17歳1か月を破るクラブ史上最年少記録だった。

試合後、シダージ・デ・デウスの自宅に戻ると、住人たちはけたたましい爆竹を鳴らし続けてヒーローを出迎えた。

23年シーズンは控えの位置づけだったが、24年シーズンは先発出場が増え、早くもチームの中心選手となりつつある。ロラン本人は、「もっとスタミナをつけて、すべての試合で得点に絡みたい」と意欲を漲らせる。

これほどの逸材だ。欧州の強豪クラブが早速、獲得を狙っているという。実際、5月からR・マドリーがスカウトを派遣して視察を続けており、マンチェスター・シティやアーセナルなども強い関心を示している。

フラメンゴは少なくとも今年末までは売却しない意向のようだが、地元メディアは「いつ欧州のビッグクラブが獲得を発表してもおかしくない」と報じている。

文●沢田啓明

【著者プロフィール】
1986年にブラジル・サンパウロへ移り住み、以後、ブラジルと南米のフットボールを追い続けている。日本のフットボール専門誌、スポーツ紙、一般紙、ウェブサイトなどに寄稿しており、著書に『マラカナンの悲劇』、『情熱のブラジルサッカー』などがある。1955年、山口県出身。

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