【合計特殊出生率】出生率が過去最低を更新!少子化なのに子どもが増えている地域の事情

千葉県流山市、島根県隠岐郡海士町の例をご紹介

2024年6月5日に、厚生労働省が発表した2023年の出生数は、72万7277人と過去最小を記録しました。

そして、1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標である合計特殊出生率は1.20となり、こちらも過去最低となっています。

令和5年の出生数は 72 万 7277 人で、前年の 77 万 759 人より4万 3482 人減少し、出生率(人口千対)は 6.0 で、前年の 6.3 より低下している。

結果はメディアでも大きく取り上げられましたが、少子化に歯止めがかからない状態です。少子化が加速することで働き手不足、経済の衰退や社会保障制度や公的サービスの維持が難しくなるなどあらゆる面に影響を及ぼします。

今回、合計特殊出生率は全国すべての都道府県で前年を下回る結果となりましたが、日本全国のどの自治体でも平等に「子どもが減っている」というわけではありません。子どもや若年層の人口が増えている自治体もあります。

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日本の少子化対策はバブル崩壊前夜から

少子化の話題が上がる時、よく耳にするのが「団塊世代」と「団塊ジュニア世代」という言葉です。団塊ジュニア世代が20代の頃、バブル崩壊が起きて就職氷河期に突入しました。

「非正規雇用の労働を余儀なくされ、経済基盤が弱く結婚に踏み切れなかった団かジュニアで未婚者が増えたのが今の少子化につながる」という論調を目にすることもありますが、実際に国が少子化対策に本腰を入れるきっかけとなったのは1989年の合計特殊出生率に由来する「1.57ショック」からです。

奇しくもバブル崩壊の年である1990年6月、前年1989年の合計特殊出生率が「丙午」で出産を意図的に避けたことにより極端に出生数が減った1966年の1.58を下回ったことで「少子化問題」が差し迫った問題だと受け止められるようになりました。

1.57ショックを受け、1994年には通称「エンゼルプラン」と呼ばれる「今後の子育てのための施策の基本的方向について」が策定されました。子育て支援策はこの後、1999年に現実の問題をより反映させた「新エンゼルプラン」へと変わります。

政治課題として少子化対策や子育て支援策が注目を集めていますが、実は30年以上前から解決できていない国の重要課題として扱われているのです。

【千葉県流山市】子育て世帯が魅力を感じる街づくり

千葉県流山市の人口はこの10年で約4万人の増加

自治体で少子化が進むと学校の統廃合や街の活性化、働き手不足や住民が少なくなることで税収入が減り、財政悪化に直結し、衰退を招きます。

こうした問題を解決すべく子育て世帯が住みやすいよう、様々な取り組みを実施している自治体があります。首都圏近郊のなかでとくに子どもや子育て世代が増加していることで有名なのが千葉県流山市です。

流山市は2005年に開通したつくばエクスプレス線により都心とのアクセスが向上したことも影響し、人口はこの10年で約4万人増えています。市のホームページに記載されている5歳年齢別人口構成の2014年と2024年の比較グラフを見ても20歳以下の子どもの人数が増加しています。

また、最も多い年齢層が35歳から39歳と若い世代が多い街になっています。

千葉県流山市で最も多い年齢層が35歳から39歳

都心まで電車で20分という立地や、自然の残る環境をアピールし、2010年に発表したキャッチコピー「⺟になるなら、流⼭市。」「⽗になるなら、流⼭市。」を皮切りに子育て世代、共働き世帯にとって住みやすい街を実現してきました。

待機児童解消にもつながる保育施設への送迎システム「送迎保育ステーション」など、子育てをしている親にとって「ありがたい」と感じる子育て支援策を打ち出し、子どもの人口が増えていることから新しい小学校の開校も続いています。

子育て中、または子どもを生む予定のあるカップルにとって子どもを育てる時に便利なサポートの種類が豊富な自治体は魅力的です。「ここで子どもを育てたい」と移住を決断する決め手にもなります。

【島根県隠岐郡海士町】教育と少子化問題が融合した離島留学

島根県の海士町では、離島留学の先駆けの自治体として知られている。

子どもの人口が増える自治体は都心からのアクセスが良く、子育て支援が充実しているだけの話で、過疎が進行している地域には無縁というイメージが強いです。

都市部からの移住を推進する動きはありますが、すぐに結果が出るのは難しいものがあります。そうしたなか、国土交通省を主体とした全国から離島の学校に通いたい子を募集する「離島留学」も行われています。

島根県の海士町では少子化により廃校も時間の問題となった島根県立隠岐島前高等学校で募集対象の生徒を全国に拡大し、離島留学の先駆けの自治体として知られています。

住民の高齢化が進む地域で県内外からやってくる生徒との交流をし、地域活性化や離島への移住または就職という形で子どもの人口が増えていくことにもつながります。また、自然が身近な地域で生活することで子どもは都市部では経験できない教育を受けることができます。

2020年12月からは海士町を含む隠岐島前地域(西ノ島町・海士町・知夫村)で20歳から35歳を対象とした「大人の島留学」もスタートし、若い世代の人口を増やす取り組みも始まり、地域を上げて人口流出や少子化対策を行っています。

海士町の人口構成を2023年と2010年で比べると49歳未満の人口が増加しており、昨今の少子高齢化を乗り越えていることが分かります。

あああ

魅力あるコンセプトを本気で実行できるか

少子化問題は全国各地で起きています。その中でも、自治体が本気で対策をして子育て世帯の移住が増え、少子化にストップをかけることに成功している地域もあります。

少子化という厳しい状況の中でも人口増加という結果を残している自治体は他にはないコンセプトを打ち出しています。

こうした取り組みが広がることで、子どもを望んでいる人たちが「安心して子どもを産んで育てる気持ち」が育っていくのではないでしょうか。

参考資料

  • 令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況
  • 出生数及び合計特殊出生率の年次推移(6ページ)
  • 千葉県流山市「年齢別・男女別人口(住民基本台帳による) 【各年4月1日】」
  • 島根県海士町「ないものはない~離島からの挑戦~最後尾から最先端へ~」(PDF)
  • AMASAS 「海士町人口構成」

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