広島・新井監督 惜敗も6月首位締めでV確率80% 戦いぶりに手応え「若い選手の成長感じる」

 9回、捕邪飛に打ち取られ、がっくりと引き揚げる小園(中央左)=撮影・佐藤厚 

 「巨人3-2広島」(30日、東京ドーム)

 広島は初回に3失点を喫するも1点差に詰め寄り、九回は一打逆転の好機までつくった。惜しくも敗れ、リーグ最速での貯金2桁到達は逃したものの、新井貴浩監督(47)は戦いぶりに一定の手応えを感じ取った。6月は13勝10敗。首位をキープしたままで終え、7月戦線に入る。

 2-3で迎えた九回2死満塁の絶好機。ベンチの中で立つ新井監督の口角はわずかに上がっていた。結果的に小園が捕邪飛に倒れて敗れたものの、「あともうちょっとのところまでいって惜しかった。今日は若い選手が多く出たけど、みんなそれぞれがいいものを見せてくれたと思う」と大きくうなずいた。

 九回は1死から代打・羽月が一塁方向へのセーフティーバントを試み、ヘッドスライディングで出塁。さらに野間、上本が四球を選び、相手守護神・大勢を攻め立てた。少ない打席で持ち味の脚力を生かした羽月は「最後のチャンスにつながったのだとしたら、自分としては良かった」と、指揮官のプラス思考が波及したかのように前向きに捉えた。

 六回には勝負手を連発した。先発・菅野から坂倉の適時打で1点を返し、1死二、三塁での左腕・高梨に対し、代打で右打者・堂林を投入。空振り三振に倒れたが、次打者に二俣を代打として送り込む。ここで投手が右の船迫に代わると、今季初めて“代打の代打”を選択して、切り札の松山を打席に立たせた。

 松山は申告敬遠、次打者・石原は遊ゴロに倒れて得点にはつながらなかったが「あそこはもう勝負だと思ったんで、どんどんいった」と新井監督。前日の一人一殺継投に続き、手札を惜しみなく切る積極采配で、勝利への執念を見せた。

 6月は13勝10敗でフィニッシュ。指揮官は「いい戦いができていると思う。見ていて本当に若い選手が少しずつですけど、成長しているなというのを感じる」と肯定的なコメントを並べた。24歳の羽月、好救援を見せた22歳の河野、懸命なリードを見せた26歳の石原…。戦いながら強くなっていくことを目指すチームにあって、接戦で敗れても収穫は多くあった。

 順位は2位・DeNAに3差をつけた首位で、本格的な夏場を迎える。直近10年で6月を首位で終えたチームの優勝確率は、80%(新型コロナの影響で、20年の巨人は6月終了時で10試合の消化)。「勝負はまだまだ先」と常々話す新井監督だが、現状について「それくらいの力はあると思っている」と胸を張った。

 今年も下馬評は決して高くなかった。そんなチームが見せる快進撃。7月は2日からの本拠地での阪神3連戦から始まる。虎たたきから首位固めへ、新井ゴイは勝ちながら成長していく。

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