稲垣吾郎・草彅剛・香取慎吾、今だから話せる“激ヤバ”話も 2024年上半期最後の『ななにー』振り返り

「それ言っていいんですか!?」

と、香取慎吾が思わずドギマギするほどのトークが飛び出した『ななにー 地下ABEMA』(ABEMA/以下、『ななにー』)の#30、#31。6月23日、30日放送回は「ヤバいジャーナリスト大集合SP」と称して、裏社会の“激ヤバ”ジャーナリストや専門家たちが大集合。

多くの謎に包まれている国として知られる北朝鮮の実態や、SNSを通じて世界中からも注目を集めているという新宿東宝ビルの横のシネシティ広場=トー横界隈、都市伝説的に語られている高額バイトについて。さらには、身近になりつつある美容医療の裏側から、映画やドラマさながらに暗躍するスパイ、公安、探偵の実態まで。『地下ABEMA』の名にふさわしくディープな世界が紐解かれるのと同時に、稲垣吾郎、草彅剛、香取の“らしさ”と3人のバランスのよさがあらためて浮き彫りになる展開となった。

■ファッション、エンタメ愛にまっすぐな草彅剛

近年、他国への警戒をより強めている北朝鮮では、「オッパ」(女性から見た年上の男性、お兄さん)や「ヒョン」(男性から見た年上の男性、兄貴)といった韓国風の言葉を発することが公開処刑の対象になるという。また、アメリカ文化を象徴するデニムを履くことも禁止になったのだと、日本では考えられないような厳しい実態が次々に明かされていく。

なかでも「デニム履いちゃいけないんですか……」と、ショックを受けた様子だったのが草彅だ。草彅といえば韓国の映像作品をリスペクトし、韓国語を習得した過去を持つ。デニムについても博物館クラスのヴィンテージものをコレクションしていることでも知られており、さらには愛用しているギターやクラッシックカー、バイクも古きよきアメリカを代表する製品ばかり。

MCを務めるEXITのりんたろー。から「苦しいですね?」と問われると、「苦しいね」と率直な感想をこぼす。稲垣からも「草彅くんの趣味は全部ダメだね」と言われた通り、現在の北朝鮮で草彅が好きなことを謳歌することは至難の業となりそうだ。しかし、そんな履くのも命懸けという過酷な実情に触れながら、それでも「ヴィンテージとかないんですね」とデニム収集を諦めるつもりのない言葉がついて出るのも、一途な草彅ならではといったところ。

一方、トー横界隈についての話題になると、この日初耳だったという草彅。「トー横」と呼ばれる東京・新宿歌舞伎町にあるシネシティ広場についても「私は知らなかったです」と言いつつも、「知らないけど、映画とかによくこの場所出てくるなと。だからその感覚で、もう、すぐ! 私、飲み込み早いんで! わかりますよ」と意気揚々と話し始める。

そして、最近観たNetflix映画『シティーハンター』でも家出少女を探しに行くシーンでシネシティ広場が出てきたと続け、今回の説明でなぜその場所が作品に出てきたのかがつながり、余程うれしかったのか、思わず口数が多くなる。そんな草彅に、香取からは「すごい喋るな!」とのツッコミが入り、スタジオは笑いに包まれた。

好きなもの、興味のあるものには一直線。そこで蓄積された知見がさらに新たな情報とつながる喜びを前面に出す無邪気さ。そんな草彅のピースフルな姿が場を大いに和ませていた。

■稲垣吾郎の冷静さと香取慎吾のクレバーさが浮き彫りになった尾行エピソードも

また、冒頭で記したように香取が「言っていいんですか!?」と言わずにはいられなかったのは、ドラマ『VIVANT』(TBS系)の監修を務めたことでも知られる勝丸円覚氏が語った元公安警察のエピソードだ。

2002年、FIFAワールドカップの開催中に国際テロ組織・アルカイダによって新幹線の爆破計画があるという情報を入手した公安警察は、都内のとあるマンションを捜索。部屋に踏み込んだところ爆薬が発見され、テロを未然に防ぐことに成功したのだそう。

まるでドラマのような展開が現実にあることにも驚かされるが、そうした情報がバラエティ番組で披露されることも意外に感じた。こうした生々しい話が長年伏せられてきた印象があるのは、香取だけではないはず。勝丸氏曰く、テロやスパイの手口を広く知らせることで、一般の人からの通報につながるようにと「時代が変わってきている」のだという。

そんな“今だから話せる”エピソードといえば、彼らも負けてはいない。公安警察による尾行話を聞いた香取は「(週刊誌に)尾行されるよね、うちらもね」と切り出すと、稲垣が「すごく上手な方もいれば、わかりやすい人もいる」と続けて笑いを誘う。

「しょっちゅう僕らも追われてきたもんね」と言う稲垣は、尾行に使われる車について「たまに外車とか高級車も最近ありますよね」と振り返る。すると、その手法は「まさかあんな車で?」という油断を誘う目的で実際に使われるのだそう。稲垣の鋭い視線は「やっぱり向こうも人間なんで、その気配みたいなもの、焦りみたいなものは100m後ろの車でも伝わる時はありますよね」と冷静に分析する。

そんな稲垣の言葉に「ある!」と共感した香取は、「一回、海外に何人かで行って。空港を降りて、みんな浮かれてるわけ。そしたらかなり遠くで(写真を)撮ってる人に僕だけ気づいて……」と、過去に経験した尾行話を披露。

カメラに気がつかない仲間たちがワイワイしているその場を香取だけ離れ、サッと記者のもとに行き「本当勘弁してください」「まず名刺ください」「本当お願いします」と頼み込んだというのだ。

一旦は納得して退散したと思われたのだが、夕方にショッピングモールに出かけると、またもやその記者が張りついていることに気がついた香取。再び記者のもとへと向かい「言ったでしょ! ちゃんと僕は話に来たんです」「本当に勘弁してください」と頼み込む。その熱意に押される形で「そうだね……ゆっくりしてください!」と記者はカメラを持つ手を下ろし、記事になることもなかったようだ。

どんなシビアな話題を取り扱ったあとにも周囲を平和な気持ちにさせてくれる草彅の存在感、そしてゲストのトークに紐づけて“今だから話せる”話をクールに語る稲垣と、アイドルとは思えない対応力でドラマチックなエピソードを披露する香取。そんな彼らだからこそ、「激ヤバ」と言われる裏社会を伝えるコンテンツであっても安心して楽しめるように思う。これからもその絶妙なバランス感覚で、私たちのまだ見知らない世界を新しい地図として広げていってほしい。

(文=佐藤結衣)

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