【社説】能登地震半年 命を守る取り組み強化を

元日の能登半島地震からきょうで半年を迎えた。

石川県の犠牲者は災害関連死を含め約300人に上る。2016年の熊本地震の276人を上回り、平成以降の自然災害では東日本大震災、阪神大震災に次ぐ人的被害となった。

被災地では余震や長引く避難生活による被災者の体調悪化が懸念される。命を守る取り組みを一層強めたい。

最大震度7の激しい揺れや津波による爪痕が奥能登を中心に残る中、能登地方では6月3日にも最大震度5強の揺れに見舞われた。

元日から続く一連の活動の余震で、今後も警戒が必要という。損壊した家に戻って生活している人もいる。被害拡大を防ぐ対策が急務だ。

学校の体育館や公民館などの1次避難所に身を寄せる被災者は、ピーク時の3万4千人超から大幅に減った。とはいえ、いまだに千人余りがプライバシーの確保もままならず、つらい集団生活を強いられている現実に胸が痛む。

過酷な避難生活や環境の変化によるストレスで、持病が悪化して亡くなる人がいる。こうした災害関連死は約70人に上る見通しだ。認定審査が進めば、さらに増えるのは間違いない。

元々、高齢化が進んでいた地域だ。心身への負荷が、一気に体調を悪くさせたのだろう。心疾患や脳梗塞などを発症した例が目立つという。

暑さが本格化する夏を前に熱中症や食中毒の危険も高まる。関連死は見守りやケアによって防ぐことができる。高齢者を中心に避難所や自宅に戻った人たち向けに、健康状態を把握する体制を強化しなければならない。

仮設住宅は必要とされている約6800戸のうち7割が完成し、残りも8月中の完成を目指すという。

仮設住宅での孤独死を防ぐ視点が欠かせない。輪島市で5月、1人暮らしの70代女性が亡くなっているのが見つかった。能登半島地震後の仮設住宅で初めての孤独死とみられる。

過去の震災では、仮設住宅でコミュニティーを築く重要性が提起された。今回は抽選で居住地区が異なる住民を集めた事例もあり、孤立する住民がいないか気がかりだ。

部屋にこもりがちになると心身の不調が進みかねない。周囲が日常的に声をかけ、不安や孤立感を和らげる取り組みが必要だ。自治体や住民が協力し、自由に交流できる場をつくっていきたい。

交通網が寸断されたままの地域や、倒壊した家屋が手つかずの場所も多い。過去の震災に比べ復旧の遅れは明らかだ。高齢化や過疎化による人手不足が影響している。

それでも能登6市町全体で7割の事業者が営業を再開した。復興に向けた確かな歩みを刻んでいる。

地震や豪雨などの災害を数多く経験してきた九州からも途切れぬ支援を届けたい。

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