現代では絶対不可能? 昭和キッズを大興奮させた「東映まんがまつり」のヤバすぎラインナップ

DVD版「復刻!東映まんがまつり 1973年夏」(東映ビデオ)

かつて、子どもたちの長期休み中の楽しみだった「東映まんがまつり」。春休みや夏休みといった開放的な時期に、劇場の大きなスクリーンで人気アニメ作品などがまとめて観られるという、夢のような企画だ。

そんな「東映まんがまつり」の過去の同時上映ラインナップをあらためて振り返ってみると、今となっては豪華すぎるタイトルばかり。まさに「まんがまつり」の名にふさわしい、超豪華なオムニバス映画のなかから、とくに印象的だった作品を振り返っていこう。

■パイオニア的な作品が満載!(1973年・夏)

1973年の上映作品は、「まんがまつり」初期の頃だけあって、さまざまな作品のルーツとなったパイオニア的な作品が目立った。

とくに73年夏の「まんがまつり」で上映された『マジンガーZ対デビルマン』は、ロボットモノの金字塔『マジンガーZ』にとって、記念すべき初の劇場オリジナル作品だ。

フジテレビ系列で放映されたアニメ『マジンガーZ』と、テレビ朝日系の『デビルマン』によるクロスオーバー作品というのは、今はもちろんのこと、当時ですら実現は難しいとされた貴重なケースだ。

さらに、『魔法使いサリー』のアニメ89話をベースにした映画も同時上映。こちらは言わずもがな、魔法少女モノの原点と言われている。

そして『バビル2世』の21話を再編集した作品も上映。同作は、学生が超能力や駆け引きを駆使して戦う作品のパイオニアとも言われ、後に『ジョジョの奇妙な冒険』をはじめ、さまざまな作品でオマージュされるほどの影響を与えた。

また、同年夏の「まんがまつり」では、人気の特撮ヒーロー作品のラインナップも超豪華。日本に変身ヒーローブームをもたらした『仮面ライダーV3対デストロン怪人』を筆頭に、『キカイダー01』、『ロボット刑事』といった特撮作品が上映されている。

なかでも『ロボット刑事』は、変身しない等身大ロボットが主人公という、個性あふれる特撮ヒーローモノで、実は「ジャパンアクションクラブ」単独でアクションを担当した初めての作品でもある。東映の特撮モノといえば「ジャパンアクションクラブ」のイメージが強いが、その礎となったのが『ロボット刑事』だったのだ。

■多彩なジャンルの超有名作品がズラリ(1976年・夏)

1976年、夏の「まんがまつり」は、合計8作品が上映されるという特大ボリュームと豪華ラインナップが目をひいた。

まず注目なのが『秘密戦隊ゴレンジャー 爆弾ハリケーン』だ。「スーパー戦隊」シリーズの元祖である『秘密戦隊ゴレンジャー』にとって、初のオリジナル映画作品である。

さらに『グレンダイザー ゲッターロボG グレートマジンガー 決戦!大海獣』のインパクトも強烈だ。永井豪氏原作の人気ロボットアニメ三作品がクロスオーバーする豪華さは、多くのファンの注目を集めた。

タイトルには入っていないが、兜甲児はもちろん、ボスボロットやダイアナンAも登場するので、初代『マジンガーZ』の要素もしっかり含まれている。ダイナミック企画のロボットアニメの集大成と言っても過言ではない作品だ。

そして、なぜか日本アニメーション制作の世界名作劇場『母をたずねて三千里』まで同時上映されている。日アニ制作のアニメ作品が「東映まんがまつり」内で公開されたのは、このときが初である。

また、NHKの歌番組『みんなのうた』の楽曲『山口さんちのツトム君』が短編映画化されるなど、ほかにもおもしろい試みが目白押し。ロボット特撮モノの『宇宙鉄人キョーダイン』、変身ヒーローモノの『ザ・カゲスター』、とんちで事件を解決する人気アニメ『一休さん』など、同年の「まんがまつり」のジャンルは、とにかくバリエーションに富んでいた。

■次世代のレジェンド作品が勢ぞろい(1989年・夏)

「昭和」から「平成」へと時代が変わった1989年。この年の夏の「まんがまつり」では、いまだに高い人気を誇る『ドラゴンボールZ』初の劇場作品が上映。それだけでなく、過去のレジェンドアニメをリメイクした作品も注目を集めた。

『ひみつのアッコちゃん 海だ! おばけだ!! 夏祭り』は、1969年放映のアニメ『ひみつのアッコちゃん』ではなく、1988年にリメイクされたアニメの劇場用作品となっている。

また、水木しげる氏による伝説のオカルト漫画『悪魔くん』の劇場アニメも上映された。『悪魔くん』は1966年に実写ドラマ化されたものの、長らくアニメ化はされなかったが、1989年にようやくテレビアニメ化。ちなみに「まんがまつり」で上映された『悪魔くん』の映画作品は、本編とは多少設定が異なっている。

1989年の「まんがまつり」はすべてが新作映画で、過去の名作のリメイクやアニメ作品の比率が上がったことなど、世代の移り変わりを感じさせるラインナップが印象的だった。

そして1990年代に入ると「東映まんがまつり」の名称は使われなくなり、このようなかたちの映画興行が行われる頻度も低くなっていく。近年「まんがまつり」は何度か復活したが、やはり「東映まんがまつり」といえば、昭和時代の映画館を思い浮かべる人が多いことだろう。

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