【能登半島地震半年】イチゴで笑顔取り戻したい 富山県滑川市出身の皆口さん、珠洲の農園復活へ奮闘

被害を受けたイチゴの栽培施設で作業する皆口啓伊子さん(左)と英樹さん=皆口農園

 能登半島地震で甚大な被害が出た石川県珠洲市で、富山県滑川市出身の農家、皆口啓伊子さん(44)が農園を復活させようと奮闘している。広大な畑は地割れや地盤沈下に見舞われ、倉庫も全壊。半年がたち、栽培を再開した作物もあるが、人気のイチゴの観光農園は今も復旧のめどが立っていない。「にぎわっていた農園の姿を何とか取り戻したい」。皆口さんは家族と前を向く。

 皆口さんは高校時代まで滑川市で暮らした。専門学校を卒業後、金沢市で看護師として勤務。10年前に珠洲市出身の皆口英樹さん(44)と結婚して農園に嫁ぎ、夫と小学生の娘2人、義理の両親と生活する。

 皆口農園は、珠洲市で特に被害が大きかった正院町にある。東京ドーム約5個分に当たる25ヘクタールの畑で、特産の「能登すいか」や「能登大納言小豆」、イチゴ、コメなどを栽培。富山県内にもファンがいる。

 元日の地震で、自宅や農園の周辺は道路や住宅の崩落が相次ぎ、避難所までの道が寸断された。行き場のない住民が多数いたためイチゴのビニールハウス2棟を開放し、約50人が避難。その後は20~30人がハウスで過ごし、5月まで4世帯が身を寄せていた。

 皆口さんの畑は広範囲で地割れが起き、地盤が約1メートル沈下。農業用水を引くパイプや倉庫も壊れ、農業ができない状態になった。3月から、荒れた畑の整地や、断水対策として7トンの貯水タンクを新たに設置するなど復旧作業を進め、スイカやコメ、サツマイモの栽培を再開した。

 だが、イチゴを栽培する施設は3棟全てが壊れたまま。修理には約700万円が必要なため、不足する資金をクラウドファンディング(CF)で募っている。

 「元日からの半年はあっという間だった」と皆口さん。珠洲は農業だけでなく漁業なども深刻なダメージを受けており「市全体が大変な状況。全てを一気に復旧するのは難しいが、鬱々(うつうつ)とした気持ちにならず、少しずつ、できることをしていきたい」と力を込める。

 地震前のイチゴ農園には幼児からお年寄りまでが訪れ、多い年で県内外の約4千人がイチゴ狩りを楽しんだ。皆口さんと英樹さんは「もう一度、皆さんが珠洲のイチゴを食べる時の笑顔が見たい」と話した。

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