【天風録】半年後の能登半島

 半年たつとは到底信じられないような光景が広がっていた。先週訪れた能登半島地震の被災地の感想を同僚に聞いた。震度7の揺れで倒れたビルや家の多くは放置されたまま。「発生時の様子と大差ない」。取材した現地の人たちも話していたそうだ▲公費で解体しようにも、手続きに時間がかかり発注は遅れがち。人手不足も立ちふさがる。2万棟を上回る見込みの公費解体が終わるのは来年秋。そんなスピード感を欠く石川県の目標ですら、実現が危ぶまれている▲壊れた家屋の片付けは復興の第一歩といわれる。それがこの調子だからか、なりわい再建も、もたついている。それどころか170を超す事業所が廃業に追い込まれた。能登は見捨てられたという被災者の嘆きは、国や県に届いているのか▲激戦だった2年前の知事選を制したのは、中央政界との人脈を誇った人物。なぜ、太いパイプを生かして政府に支援の拡充を求めないのだろう。得意技を披露する機会はあっただろうに▲どうすれば、能登半島に以前の光景が早く戻るのか。地理的な制約や少子高齢化による人手不足…。抱える問題は、中山間地の多い中国地方とも重なっている。人ごとではない。

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