【社説】能登半島地震から半年 生活再建の遅れ、見過ごせぬ

 能登半島地震はきょう、発生から半年を迎える。石川県内の被災地では多くの家屋が倒壊したまま残され、生々しい爪痕をさらしている。

 変わり果てた古里で不便な暮らしを続け、「能登は見捨てられた」と嘆く被災者がいることを、私たちはもっと知らなければならない。

 本来ならほぼ復旧を終え、復興への取り組みを本格化させている時期だろう。「元日の光景と変わっていない」という住民たちの声を国や自治体は重く受け止め、生活再建を急ぐ必要がある。

 避難者は発生直後の3万4千人から減ったとはいえ、まだ2千人以上が避難所や県外で暮らす。仮設住宅の建設状況について石川県の馳浩知事は「順調」と胸を張るが、問われるのは生活の質である。

 象徴的なのは水道だ。県は5月末の珠洲市と輪島市を最後に断水が解消されたとするが、これは道路下の水道管まで。ここから各住宅をつなぐ配管が壊れ、水道を使えないケースが両市で相次ぐ。

 敷地内の修繕は住民負担になるが、地元業者に依頼が殺到して数カ月待ちの状態という。熊本地震では発生3カ月で水道の復旧がほぼ完了しただけに、今回の遅れが際立つ。国や県には、県外の業者を招くための支援などをさらに強化してもらいたい。

 生活再建を最優先すべき理由は、災害関連死の抑制に尽きる。既に遺族らの認定申請は200人を超え、52人が認められた。

 夏場も水不足が続けば、熱中症や衛生面のリスクが高まる。熊本地震のケースを当てはめれば、今回の関連死は900人を超えるとの見方もある。一刻も早く不便な暮らしを改善し、心身の負担を和らげることが求められる。

 行政が家屋の所有者に代わって行う「公費解体」もスピード感に乏しい。全半壊した2万棟以上の申請に対し、実施できたのは5%足らず。住民が復旧を実感できないのも無理はなかろう。

 背景には交通アクセスの悪さや、建設業界の人手不足がある。所有者全員の同意や書類作りなど煩雑な作業もネックになっているそうだ。手続きをなるべく簡略化しつつ、人や重機を集中的に投入できるような態勢も整えたい。

 もちろん、地域の過疎・高齢化が復旧に影を落とした側面は否めない。中国地方をはじめ、全国の自治体が将来直面するかもしれない事態だ。その意味でも国が果たすべき役割は大きい。

 政府はきょう、被災地で支援活動する100人規模の省庁横断チームを発足させる。県や市町村と円滑に役割分担し、血の通った支援が求められよう。防災から災害対応、復興までを一元的に担う「防災省」創設への検討材料にもできるのではないか。

 石川県は「創造的復興プラン」で、地域が考える未来を尊重する姿勢を示す。再生に取り組むのも、集団で移転するのも住民の選択である。

 地域で意見をくみ上げるためにも、未来を語れる日常を早く取り戻さねばならない。国や県は肝に銘じるべきだ。

© 株式会社中国新聞社