災害時のトイレ

 朝から大変恐縮だが、今からトイレの話を書く。あなたは1日何回、用を足すだろうか。きょう、南海トラフ巨大地震が起きたら、生き残った多くの県民は空腹よりも早く、尿意や便意を感じることになる。
 熊本地震の調査では、発災後、3時間以内に4割の被災者がトイレに行きたくなったと回答した。断水などで水が流れなくなったトイレは、あっという間に大小便で満杯になってしまう。発生から半年を迎えた能登半島地震でも、このトイレ問題が繰り返された。
 発災2週間後、現地に入った国交省宮崎河川国道事務所の職員は被災者に近い経験をした。ビニール袋と吸水シートの携帯トイレを持参したが、「不便なのでなるべく使いたくなかった。水分を控えて、食事を取るときも水は2、3口で、湿らす程度にとどめた」と語る。
 現地の避難所では「高齢者が使いにくい和式だった」「携帯トイレ1回分を数人で使った」などストレスに満ちた環境が続いた。NPO法人日本トイレ研究所の調べでは、災害用トイレの備蓄が「足りる見込み」と答えた自治体は全国で3割。断水や在宅避難を考え、個々の備えがより大事となる。
 食べたら出る。当たり前なのに、家庭での災害用トイレ備蓄率はおよそ2割にとどまり、飲食料の備えより低い。目安として、国は1週間分の備蓄を勧める。平時の今ならホームセンターや通販でも十分に在庫はある。「あとで」ではなく、始めるのはきょう。

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