能登地震半年 半島の地理復旧阻む 仮設整備や住宅再建福島に比べ遅く 用地少なく、人手も不足 本紙記者ルポ

輪島港近くに整備された仮設住宅(奥)。周辺の歩道は地割れしたまま=30日、石川県輪島市

 能登半島地震は1日で発生から半年となった。一時4万人を超えた避難者は2千人台まで減少したが、石川県の被災地では倒壊した建物の解体・撤去やインフラ復旧の遅れが深刻だ。仮設住宅の整備は7割強にとどまる。発災後、定期的にボランティアで被災地に通っているいわき市の男性は「半島特有の地理的要因や人手不足などから福島に比べると復旧は遅いと感じる」と懸念している。(本社報道部・舟山光)

 梅雨前線上の低気圧の影響で、30日の石川県内は広い範囲で雨となった。輪島市では時折激しく降り、屋根に張ったブルーシートが外れそうになる風も吹いた。輪島港に面するエリアに約300戸整備された仮設住宅「マリンタウン団地」には多くの被災者が暮らす。元々はサッカー場や陸上のトラックなどを備えたスポーツ広場だった。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生後の福島県と同じような光景が広がる。ただ、足元に目を向けると歩道は地割れしたままだ。

 石川県によると、2288人(6月27日現在)が避難所生活を強いられている。県内で着工した仮設住宅6642戸のうち5006戸(75%)が完成した。地震発生から半年時点の仮設住宅の整備状況は、原発事故に見舞われた福島県は85%近かった。半島の地理的要因で被災地に入る業者や住宅整備用の平地の少なさに加え、人手不足が遅れに拍車をかけているとの指摘がある。

 恒久的な住まいとして木造型の建設も進んでいるが、着工したのはまだわずか。自力でアパートを探したという女性(40)は「近くの仮設住宅は8月にできるようだ。もっと早く造ってほしかった」と不満げに語った。

 輪島市内で大工業を営む下地祐功さん(70)は4月末に仮設住宅に移った。地震で自宅1階が2階に押しつぶされた。自らは一命を取り留めたが、母(90)が下敷きになり亡くなった。「この半年はつらいことばかりで振り返りたくない」と声を震わせた。「自分は仮設住宅に早く入居できたが、入りたくても入れない人が多い」と現状を明かす。

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 いわき市の小名浜消防署員の新妻拓弥さん(33)は1月から月に1度、珠洲市を中心に重機を用いた技術系ボランティアとして汗を流す。6月に訪れた際は、倒壊した家屋の解体が進み、地震発生直後に比べると更地が増えてきたとの印象を持っている。ただ、原発事故で立ち入りが制限された双葉郡を除けば、震災後の福島県より、がれきの撤去や仮設住宅整備、住宅再建などが遅れていると感じる。新妻さんは「ボランティアや業者などの人員確保は継続的に必要だ」と訴える。被災者の生活再建への道のりは険しい。国や県などのさらなる支援が欠かせない。

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