能登半島地震から半年…死者数で熊本地震超え「災害関連死」リスクは高いまま

撤去が進まぬ「輪島の朝市」=6月10日撮影(C)日刊ゲンダイ

復興の道筋がまったく見えない中、1日で能登半島地震から半年経った──。被災地では避難生活などの負担が原因で亡くなる「災害関連死」の認定が相次ぎ、石川県輪島市と七尾市は先月27日、新たに計22人を認定した。

これで犠牲者数は281人になる見通しで、2016年に発生した熊本地震の276人を上回っている。

能登半島北部にある能登町の総務課は日刊ゲンダイの取材に「報道を見て『自分のケースも震災関連死に該当するのではないか』という遺族の申請が増えています」と話し、申請はこれからも増える可能性が高い。

「災害関連死」の多くは災害発生から3カ月以内に起こるとされる。しかし復旧が遅れる中、能登半島の被災者は依然として健康面のリスクが高い環境に置かれている。

NPO法人「日本防災士会」理事の大月真由美氏は、こう危機感をあらわにする。

「珠洲市や輪島市ではいまだに断水状態が続く地域が多くあります。トイレの水が流せないため、排泄物を保管し一般ごみで捨てなければならず、ハエがわかないよう対策しなければなりません。トイレ事情は山奥の地域に行けば行くほど劣悪で、今も仮設トイレを使っている人も少なくありません。水が十分に使えないと衛生面も悪化し、夏に向けて食中毒が発生する危険性があります」

避難生活は特に高齢者にとって負担が大きい。

「仮設住宅では今までの環境がガラッと変わり、人間関係が希薄になり孤立してしまう危険があります。具合が悪くても相談できず、SOSが出せなかったり、相互の見守りができず知らぬ間に栄養状態が悪化したりすることがある。特に、これからの季節は熱中症が怖い。体調を崩して病院にかかろうにも、バスは減便し、車などの移動手段がない人も多くいます」(大月真由美氏)

危険な状態の家屋で暮らさざるを得ない被災者もいる。一般社団法人ピースボート災害支援センターの辛嶋友香里氏はこう話す。

「避難所が閉鎖されていく中で行き場がなく、ダメージを受けた自宅の一室にテントを張って生活している人もいれば、隣の家屋が崩れてもおかしくないような状況で生活している人もいます。自宅など元々住んでいた場所に戻れても、倒壊の危険や衛生面の問題が付いて回ります」

■いまだに水道が復旧しない異常

正月までは当たり前だった生活を、被災者は取り戻せていないままだ。

「半年経ったのに蛇口をひねっても水が出ない。生活再建の見通しが全く立たず、『供与期間の2年以内に、仮設住宅で死ねたらいい』と話す高齢者もいました。こんなことでいいのでしょうか……」(大月真由美氏)

熊本地震では、発生から1カ月後に断水はほとんど解消している。復興は遠い。

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