昨季2冠の青森山田がもがいている。プレミアで早くも4敗目。“憎らしいほどの強さ”を取り戻せるのか

昨季はU-18高円宮杯プレミアリーグと高校サッカー選手権を制して2冠を達成した青森山田がもがいている。

6月30日のU-18高円宮杯プレミアリーグ・第10節。3連敗を喫した後に3戦負けなしで調子を上げてきた青森山田だったが、首位の川崎フロンターレU-18に1-2で敗れた。

序盤から押し込まれ、自分たちの時間帯をなかなか作れない。相手のパス回しに翻弄され、自陣で守りを固める展開となる。

「持たれる時間は予想していた。前半は高い位置から良い形で奪って勝負できていた。でも、相手にボールを持たれてしまうと、後ろに引いてしまう。逆に跳ね返して前に向かう選手がどんどん出てきてほしい」とは正木昌宣監督の言葉。

決して前半は褒められた内容ではないが、選手たちは苦しいなりに、今できることに全力で取り組んでいた。しかし、相手からボールを奪えない時間が続くと、ジリジリと最終ラインが後退。自陣で耐える展開となり、本来の狙いであるショートカウンターを発動できない。

ロングカウンターで仕掛けるため、後方から前に出ていくスタイルで体力は消耗。人数も掛けられず、セットプレーに持ち込む場面も限られた。

0-0で折り返したものの、後半に2失点。まず62分、右サイドを崩されると、MF児玉昌太郎(3年)に折り返され、斜め後ろに入ってきたボールに対応できず、最後はMF矢越幹都(3年)にネットを揺らされた。

「サイドからのクロス、マイナス気味に来るボールは分析したうえで選手にも試合前のミーティングで伝えていた。それをきちっとやられて...」(正木監督)。

71分に再び、失点。右SB柴田翔太郎(3年)にライナー性のシュートを放たれると、GKの手前でFW恩田裕太郎(2年)にヒールで合わせられる。技ありの一撃を決められた。

残り15分を切ってから本来の姿を取り戻し、迫力のある分厚い攻撃で相手を圧倒。フィジカルの強さを活かし、セットプレーから何度も相手ゴールに迫った。

87分にはロングスローの流れからFW石川大也(3年)が押し込んで1点差に。しかし、「スイッチが入るのが遅い」と指揮官が嘆いた通り、あと1点が遠い。4分のアディショナルタイムでは何度も押し込み、3連続ロングスローから決定機を作り出したが得点できず、試合終了のホイッスルを聞いた。

がっくりと膝を突いた青森山田の選手たち。唇を噛み、誰もが「こんなはずじゃない」という表情で天を仰いだ。その姿からはチームの苦悩が見て取れた。

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今季、昨季からトップチームでポジションを掴んでいるのは右SB小沼蒼珠(3年)だけ。それ以外は総入れ替えとなり、文字通り一からのスタートで、不安視されていた部分もあった。

1月下旬の東北新人戦では準決勝で尚志に敗北。そこから修正を図り、シーズン開幕直後はリーグ戦を2勝1分で乗り切ったものの、そこから3連敗。強固な守備と勝負強さは影を潜め、脆さが顔をのぞかせた。直近3試合はディフェンス陣が奮起して1失点に留め、1勝2分で乗り切ったが、この川崎戦で今季4敗目を喫して、順位も12チーム中で暫定9位となっている。

「無失点の時間帯をどれだけ長く作れるかがうちのサッカー。今年は決して上手い選手が多いわけではないので、今できる100%、120%は、川崎戦の最後に見せた。相手よりも早く動き出し、予測の部分で上回ること。そして、ゴール前で迫力を持って押し込む形。これがどんどん出てこないといけない」(正木監督)

昨季のような強さはまだなく、浮き沈みが激しい今季の戦い。小沼もチームの現状について聞かれると、厳しい表情を見せた。

「こういう負け方をしてしまったのは、自分たちの力不足。エンジンがかかるのが遅いし、前半にあったチャンスを決め切れなかった」

しかし、浮上の兆しがないわけではない。川崎戦の最終盤に見せた攻撃の迫力は“さすが”の一言で、敵将・長橋康弘監督も思わず唸った。

「山田さんはかなり映像を見たけど、外に蹴らせるようなプレスをしてくるし、セカンドボールを拾うための陣形を作るのが上手。選手たちも外に蹴り出すような状況を作るほかになかった」

ロングスローも含めた得意のセットプレーは健在で、サイドアタックもハマった時の威力は凄まじい。そのスタイルを立ち上がりから貫ければ、相手を一気に飲み込んでいける。そして、守備陣が“ゼロ”で凌げなくとも、最小失点で切り抜ければ光は見えてくるはずだ。

「ちょっとしたきっかけで変わりそうな状況ではある」と正木監督が話した通り、攻守の歯車が噛み合えば、一気に浮上することも不可能ではない。インターハイまでに残されたリーグ戦は、7月7日のU-18高円宮杯プレミアリーグ・第11節の柏レイソルU-18戦のみ。もがいて苦しんだ分だけ強くなる――。憎らしいほどの強さを取り戻すべく、絶対王者は前進を続けていく。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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