ピット入口にまさかの停止車両。終盤にフェラーリを逆転したアストンマーティンが76年ぶりのスパ24時間制覇

 6月29〜30日、ベルギーのスパ・フランコルシャンでIGTCインターコンチネンタルGTチャレンジ第3戦およびGTワールドチャレンジ・ヨーロッパ第4戦を兼ねる『クラウドストライク・スパ24時間』レースの決勝が行われ、コムトゥーユー・レーシングの7号車アストンマーティン・バンテージAMR GT3がドラマチックな終盤を経て優勝を遂げた。

 7号車をドライブしたマティア・ドルーディ/マルコ・ソーレンセン/ニッキー・ティームの3名は、今年デビューした最新型のバンテージGT3にとって初めての24時間レース優勝をもたらすと当時に、アストンマーティンにとって1948年以来となるスパ24時間での優勝を記録することとなった。

 レースはスタートから7時間経過後に豪雨に見舞われるなどスパらしい展開となり、トラブルやクラッシュで有力車両が脱落するなか、最後の4時間を迎えてもなお、リードラップに13台の車両が残る接戦模様となった。

 日曜の昼が近づき、最近舗装し直されたサーキットの路面が乾くと、AFコルセの51号車フェラーリ296 GT3(アレッサンドロ・ピエール・グイディ/ダビデ・リゴン/アレッシオ・ロベら)が勢いづく。ピエール・グイディは、残り3時間45分のところでアウトラップの2台を抜いて実質3番手から一気に首位へと浮上、優勝候補に踊り出た。

 最後の1時間を迎えても、ピエール・グイディは2番手の7号車に対して30秒近いマージンを保っていたが、残り49分で迎えた最終ピットインで悲劇が。ピットロード入口でスタックし、動けなくなっていたGRTグラッサー・レーシングの19号車ランボルギーニ・ウラカンGT3 EVO2の横を通り抜けることができず、AFコルセの挑戦は崩れ去ることとなった。

 最終的にランボルギーニは牽引され、ピエール・グイディは最後のピットストップを行うことができたが、7号車アストンマーティン、ローヴェ・レーシングの998号車BMW M4 GT3、96号車ポルシェ911 GT3 Rらの先行を許し、5番手へと後退。その後、ピエール・グイディは2台をパスして3番手まで再浮上を果たした。

 さらに2番手を走行していた998号車のマックス・ヘッセが最大スティント時間超過を避けるためピットロードを走行したため、998号車は6番手へとポジションを下げた。これにより、51号車は2番手へとポジションを上げ、最後は首位アストンマーティンから33秒差でレースを終えた。

 ドリス・ファントール/シェルドン・ファン・デル・リンデ/シャルル・ウィーツ組のチームWRT32号車BMWは、14時間目にフルコースイエロー違反で30秒のタイムペナルティを受けたため後退したものの、最終的には3位に入った。

終盤に1位を走行しながらもピット入口の停止車両にスタックしたことでポジションを落とした51号車フェラーリ296 GT3
総合3位に入ったチームWRTの32号車BMW M4 GT3
2024年のスパ24時間レースを制したコムトゥーユー・レーシングのニッキー・ティーム、マティア・ドルーディ、マルコ・ソーレンセン

 レースの中間地点でリードしていたWRT BMWの両車は、最後まで首位に挑戦できず、残り5時間を切ったところでバレンティーノ・ロッシが3台が絡む事故を起こし、フロントボディワークが損傷したため、46号車は2周遅れとなった。

 さらに、レース序盤にロッシとリゴンの51号車フェラーリが接触したことでドライブスルーペナルティが課せられ、最後の4時間ではアンセーフリリースによる10秒間のストップ・アンド・ホールド・ペナルティも受けることになった。

 ワーケンホルスト・モータースポーツの34号車アストンマーティンは、51号車フェラーリとの接触で10秒のペナルティを受けた後も、GRTグラッサー・レーシングの163号車ランボルギーニを上回り、総合4位でフィニッシュした。

 予選でポールポジションを獲得した163号車は、燃料リグの問題で序盤に総合トップ50から外れた後、追い上げたが、義務的な5分間のテクニカルピットストップにより再びリードラップから脱落することとなった。

 ヘッセ/ダン・ハーパー/アウグスト・ファーフスの998号車BMWは、終盤にピットレーンを走行した結果、6位でフィニッシュした。

 7位は、ゴールドカップを制したアル・ファイサル・アル・ズバイル/ドミニク・バウマン/フィリップ・エリス/ミカエル・グレニエのアルマナー・レーシング・バイ・ゲットスピード777号車メルセデスAMG GT3 Evo。

 ブロンズクラスの栄誉は、アンドレイ・ムコボズ/アレクセイ・ネソフ/ディラン・ペレイラ/マックス・ホファーのトレゾール・アテンプト・レーシング66号車アウディR8 LMS GT3 Evo2が総合10位でフィニッシュしたことで獲得された。

 ゲットスピードはさらに、ヤニック・メトラー/ジェームズ・ケル/アンソニー・バートン/アーロン・ウォーカーの運転する3号車メルセデスAMGが、シルバークラスの栄誉もつかんでいる。

 一方、プロ/アマクラスの優勝は、ジョージ・カーツ/コリン・ブラウン/ニッキー・キャツバーグ/イアン・ジェームズのクラウドストライク・バイ・ライリー4号車メルセデスの手に。ターボのトラブルで終盤に脱落したチームRJNの100号車マクラーレン720S GT3 Evoとのレース中ずっと続いた戦いの末の勝利となった。

ゴールドカップを制した777号車メルセデスAMG GT3
ブロンズクラスを制した66号車アウディR8 LMS GT3
プロ/アマクラスで優勝を飾った4号車メルセデスAMG GT3

 ポルシェの有力候補だったピュア・レクシングの911号車ポルシェ911 GT3 Rは、2番手を走っていた17時間目にクラッシュ。一方、ハブオートのエントリーは、パトリック・ピレがドライブしていたときにサスペンションが故障して早々にリタイアとなった。

 有力チームがさまざまな問題によりリタイアしたため、メルセデスAMGのプロ・クラスのエントリーにとっては、忘れたいレースとなってしまった。

 パンクするまで最初の1時間をリードしていたルーカス・アウアーのチーム・マンフィルター48号車は、2回目のパンクでダニエル・モラドが順位を落とした後、多重車両事故に巻き込まれ、13時間目にリタイアした。

 グループMレーシングの猛攻は、GT3デビューのフレデリック・ベスティが夜間にランオフエリアに突入したため、スプリッターが破損して終了。一方、ゲットスピードの2号車は残り8時間でホイールを失い、大きなダメージを受けた。

 一方、前回優勝者のローヴェE98号車BMWのフィリップ・エング/ニック・イェロリー/マルコ・ウィットマン組は、水圧の問題により、わずか71周を走行しただけでリタイアを喫している。

2024年スパ24時間レース スタートシーン
フロント部分を損傷したチームWRTの46号車BMW M4 GT3
トリプルエイトJMRの888号車メルセデスAMG GT3

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