公表されている平均年収の不思議。私は30歳の会社員ですが周りで誰も平均年収を超えていません。中央値の違いとは?

30代の平均年収

国税庁が公表している令和4年度の民間給与実態統計調査によると、30代の平均年収は表1の通りです。

表1

※国税庁「令和4年度の民間給与実態統計調査」を基に筆者作成

男性は30代後半になると70万円程度高くなっているのに対し、女性はほぼ同じ平均年収となっており、30代全体と比べても低い傾向にあるようです。全年齢での平均年収は457万6000円とされており、30代後半の全体の平均年収と同等の年収となっています。

公表されている平均年収のからくり

国が公表している平均年収と実際にもらっている年収に差が出る理由には、さまざまな要因が考えられます。ここでは、公表されている平均年収のからくりやその理由を解説します。

高所得者により平均値が押し上げられている

公表されている平均年収のなかには、年収が低い方もいれば年収が高い方も含まれます。つまり、一部の高所得者層の年収が全体の平均年収を引き上げてしまっている可能性があります。

例えば、10人中5人が年収300万円、3人が600万円、残り2人が1000万円とすると、平均年収は530万円となります。年収300万円台の方から見れば、自身の年収は200万円程度少ないと感じ、600万円台の方からすると平均年収よりも高いと感じるでしょう。

このように自分の年収と平均値だけを見てしまうと、人によって差が大きくなることが分かります。そのため、平均年収だけを見て評価するのは、正しいとはいえないでしょう。

年齢・性別・職業などで平均年収が異なる

年収額は年齢や性別、職業などの要因に左右されます。前述した30代の平均年収のケースでも、男女で100万円以上の差がありました。

また、ある業界での平均年収が500万円だとしても、その業界で働く20代の方と50代の方では年収に差がある場合があります。さらに、同じ年代でも正規雇用か非正規雇用かなどで、それぞれ年収に差が生まれるでしょう。

この結果からも、平均年収を自分の期待する年収と考えることは正しくない可能性があります。

平均値でだけでなく中央値も参考にする

年収を調べる際は年収の平均値だけではなく、中央値も参考にするとよいでしょう。平均値と中央値には、以下のような違いがあります。

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・平均値:すべての数値を足してすべての個数で割って出る数値
・中央値:小さい数値から大きい数値を順番に並べてちょうど真ん中に位置する数値
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中央値の場合は平均値と比べて外れ値(極端にずれている数値)の影響を受けづらいため、より正確な数値を調べることができます。例えば、以下の年収の異なる5人のケースで考えてみましょう。

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・1人目=200万円
・2人目=300万円
・3人目=400万円
・4人目=500万円
・5人目=2000万円
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この場合、平均値は680万円で中央値は400万円です。平均値の場合は2000万円という外れ値を含んで計算しているため、数値が高く出ています。一方で、中央値の場合は外れ値の影響が少なく、実態に近い年収額となっています。

平均年収は一部の高所得者層や年齢・性別・職業などに左右される

国が公表している平均年収には一部の高所得者層の年収が含まれており、実際よりも高くなる可能性があります。また、年齢や性別、職業などによっても年収はさまざまであるため、平均年収=一般的な年収とは一概には言えません。

完全に正しい数値ではありませんが、年収を調べる際は平均値だけでなく、外れ値の影響を受けづらい中央値も同時に確認するとより実態に近い年収を確認できるでしょう。

出典

国税庁 令和4年分 民間給与実態統計調査-調査結果報告-(15、170ページ)

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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