昨今スケジュール告知ツールとしてライブアイドルの使用実績が増えているカレンダーアプリ『TimeTree』と、長年ライブアイドルシーンを追いかけているライターの冬将軍による新インタビュープロジェクトが始動。
その第1回目のゲストとして、“狂おしいほど、依存して”をキャッチコピーに圧倒的な世界観で躍進を遂げているMAD MEDiCINEが登場した。
“あえて露骨なPR記事”をテーマにしながら、アイドルとアプリ制作会社が本音トークをくり広げた模様をお届けする。
撮影：河邉有実莉
冬将軍、TimeTreeに呼ばれる——。
TimeTree（タイムツリー）は、家族やグループなど複数人でスケジュール共有できるアプリである。プライベート、ビジネスといったカテゴリ別にカレンダーを分けることができ、必要な相手とだけ情報共有ができる。
そんな有能アプリを開発したイケイケのIT企業さまが私に何の用だというのか。心あたりは1つだけあるのだが……。
というわけで、株式会社TimeTreeに向かった。
TimeTree担当者：
現在、TimeTreeでは、家族やサークルなどクローズドなグループで使う“共有カレンダー”に加え、新たな機能で“公開カレンダー”というものに注力しています。街のお店やスポーツチーム、お笑い芸人といった“世の中に発信するイベント情報”を持った方々が、カレンダー形式でイベント情報を発信できるというものです。この機能が現在、ライブアイドルの方々に刺さっていて、今、自然増で利用されるグループが増えてきているのです。我々としてはこの動きを決定的なものにしたく、マーケティングに力を入れ始めたところです。ただ、社内にアイドル業界を理解している者がいないため、ぜひ冬将軍さまのご経験豊富なお力をお借りしたいと思っております。
なるほど、予感的中である。私がTimeTreeを使い始めたのも、アイドルスケジュールを確認するためであった。自分がヲタクとして……じゃない、ジャーナリズムとして追っているグループの多くがライブスケジュール告知にTimeTreeを使っているのだ。週に何本もライブを行なうアイドルにとって、告知は重要だ。運営側の管理のしやすさもあって、数年前までは告知ツールとしての役割はGoogleカレンダーが主流であったが、SNSでの告知、特にXとの相性が重要視され、その即効性や昨今定番化しているフライヤーでの画像告知も相まって、リンクをまとめるアプリであるlit.linkをスケジュール告知として使っているグループが増えた。そして現在では、HEROINES、シンデレラの犬Project、サークルライチ……といった、インフルエンサー的な観点からアイドル本人のSNS自己発信に重きを置くグループの多くが使っているもの、それがTimeTreeの公開カレンダーなのである。
冬将軍：
話はわかりました。実際に公開カレンダーを使っているアイドルグループや、運営スタッフに使用感やどう使っているのか？ を訊くインタビュー記事を作成、というのが定番だと思いますが、ぶっちゃけそういうPR記事って、正直面白くないし、あまり読まれないんですね。
TimeTree担当者：
ああ、わかります。ならばどういう形がよいのでしょうか？ 弊社としましては、公開カレンダーをより多くのライブアイドルの方々に使っていただきたいなという想いでして、そこを汲み取っていただければ。
冬将軍：
アイドル本人たちがしゃべりたいこと、ファンが読みたい濃厚なインタビュー記事を作成し、そのスポンサーがTimeTreeだった！！というのが美しい形だと思うのです。ただ、それだと長期戦略になりますね。長く続けることで意味をなすものであり、1回2回やったところであまり効果はないと思います。……ならば、第1 回目は、あえて露骨なPR記事でいきましょう！ まだ公開カレンダーを使ってないグループに、公開カレンダーを使ってもらおう企画！！
TimeTree担当者：
おお！ 露骨すぎますね！！
冬将軍：
アイドル本人や運営さんに、TimeTreeさんが直接“こんなアプリです、こんな機能もありますよ”とプレゼンしてもらうような内容で。アイドルファンも、推しグループのスケジュールをチェックするためだけにTimeTreeを使ってる人も多いと思うんですよ。なので、そういう読者にも“そもそもTimeTreeとは？”というところからアピールできるのではないかと。
TimeTree担当者：
おお〜！！
……というわけで、記事掲載はいつも大変お世話になっているPop’n’Rollさまにお願いして、TimeTree＆冬将軍プロジェクト始動っ！ そもそもそんな露骨なPR記事に協力してくれるグループなんているのだろうか……、いたのである。
MAD MEDiCINE
“狂おしいほど、依存して”をキャッチコピーに、ゴシック×デジタルサウンドを展開。ダークながらも気高く美しい世界観構築と誰しもが持つ心の闇を力強く歌う、名古屋を拠点とする気鋭のグループ。
まさにTimeTreeを使っていそうで、使っていなかったグループである。メンバーから白色担当・憑宮ルチアと、グループのスケジュール管理担当・唯一むに。さらに、全身タトゥーのコワモテだけど動物好きの優しいお兄さんとして、マドメドファンにお馴染みのプロデューサー、株式会社ムスコノプロダクション代表取締役・堤俊輔氏が、株式会社TimeTreeに来社。代表取締役社長／最高経営責任者CEO、深川泰斗氏に話を訊く。
公開カレンダーを使ってくれる人を調べてみたら、アイドルが1番多かったんです（深川泰斗）
——まずは自己紹介からお願いします。
ルチア：
白色担当の憑宮ルチアと申します。MAD MEDiCiNEは今年4月に結成2周年迎えました。若い女の子たちのちょっとメンヘラチックな部分をゴシックなビジュアルで表現するというところが、ほかと違った新しい雰囲気のアイドルになっていて、曲自体はロックなんですけど、バンドというよりはデジタルサウンドを使ったアイドルグループです。
むに：
青色担当の唯一むにです。
深川：
キャッチーなお名前ですよね。
むに：
この方が天才的な名前を考えてくれました。
堤：
事務所の代表とプロデューサーをやっております、堤です。
深川：
TimeTree代表の深川です、よろしくお願いします。
——そもそも深川さんがTimeTreeを立ち上げたきっかけは何だったんですか？
深川：
私、もともとYahoo! JAPAN（現・LINEヤフー株式会社）におりまして。Yahoo!カレンダーなどを手掛けていたんです。でも予定って、1人で完結することはあまりないじゃないですか。会社と調整して仕事を休んだり、家族と相談してこの日を空けるとか。そういうものなのに、手帳をスマホに入れただけみたいな1人用のツールしかないのがすごく不便だなと思ったんですよ。なので、他人とコミュニケーションしながら共有するカレンダーのサービスを作ろうと思って、Yahoo!をやめてTimeTreeを作りました。最初に作ったのは、“共有カレンダー”というもので、LINEグループのように中に入っているメンバーだけが見られますよ、だから安心して家族やサッカーチームなどで共有できますよ、というアプリだったんです。でも実は、最初からそれだけじゃなくて、次は公開用のもの、みんなに知ってもらいたいイベントなどを発信できるカレンダーを作ろうと思ってました。
——今、アイドルのみなさんがライブスケジュールの告知として使っている“公開カレンダー”ですね。
深川：
そうです。僕、もともとバンドをやっていまして、告知にものすごく苦労したんですね。僕の時代はTwitter（X）もあったけど、SMS、ショートメールで友達や1度でもライブに来てくれた人へ告知を送る、という形だったんです。だけど、みんな忙しいので忘れてしまったり、来られなかったりもして。もっとウマく告知できないかなと思ったのが1つ。もう1つは、もちろん音楽を聴くことも好きだったので、“誰々が来日する”と知った時に、“絶対行こう！”って、その時は思うんだけど、忘れてしまって……。当日に“誰々のライブに来た”っていう友人のツイートを見て、“あ、今日だった！”と思い出す……、そういうこともあったんですよ。なので、カレンダーの形で告知もできて、自分の予定も入れられる、それを一緒にやれた方が絶対いいなと思って考えていました。
——立ち上げてから、どのくらい経っているのでしょうか？
深川：
弊社の設立が2014年9月なので、今年2024年で10年になります。共有カレンダーを9年くらい頑張って、そこが伸びて、今世界中で約5,500万登録ユーザーがいます（2024年6月現在）。日本が半分くらい、あとはアメリカ、ドイツ、台湾の方が多いです。みなさん、おもに家族やカップルで共有していらっしゃいますね。それだけたくさんの人が使ってくれるようになったので、そこにアーティストさんの情報や、お店のセール、イベントだったり、そういうものを発信したら便利になるんじゃないかなと思って、昨年の秋くらいから公開カレンダーに力を入れて、どんどん機能を追加し始めました。
堤：
僕、公開カレンダーがあるのを最近まで知らなかったんです。TimeTree自体を使い始めたのが2年くらい前、マドメドを結成した時期に、僕らスタッフだけとか、グループ単位でのスケジュール管理で使い始めたんです。外向けには、むにがやってくれてるんですけど、lit.linkでスケジュールをまとめていて。僕がアイドルプロデュースをやり始めた頃は、lit.linkが周りに多かったんですけど、気づいたらTimeTreeで管理してるところが多いなと思っていたところでした。
深川：
共有カレンダーは使っていただいてるんですね。
ルチア：
めちゃめちゃ使ってます！
むに：
この事務所に入って、“TimeTreeを使うから”と言われて入れたんです。もともと違うカレンダーアプリを使ってたんですけど、それよりも使いやすくて。プライベートもTimeTreeに乗り換えて作ったくらいです。
深川：
それは、ありがとうございます！
堤：
うちの事務所は現在マドメドを含めて3グループが所属しているんですけど、自分のプライベート用を含めて合計4つのカレンダーを使っています。
深川：
めちゃくちゃヘヴィユーザーですね。ありがとうございます。ご存知なかったのも当然で、公開カレンダーの方はあまり表に出してなかったんですよ。ひっそり作って、使ってくださる方から“ここがいまいち”とか、いろいろ訊いて修正を重ね、そろそろかなと、今年4月に正式版の提供を開始しました。
——なので、アイドルシーンで広く普及しているのは、予想外の展開だったんですよね。
深川：
そうなんです。ひっそりと出して、“どんな人が使ってくれるかな？”と調べてみたら、アイドルの方が1番多かったんです。次にお笑い芸人さん、VTuberさんという感じですね。
堤：
マドメドはたぶん名古屋で1番スケジュールが激しいんです。遠征が多いから、告知管理を悩んでいたので、いいタイミングでこういう機会をいただけました。
深川：
遠征が多いんですね。
堤：
先月だと、東名阪を何度も行き来して、福岡も行ったし、仙台も行ったし。昨年は北海道や沖縄にも行ったし、7月は台湾にも行くしっていう。
ルチア：
名古屋拠点だけど、名古屋以外でライブやってる方が多いんです（笑）。
堤：
マドメドはオフィシャルウェブサイトがあるので、現在はサイトのライブスケジュールと、プラスでメンバーのむにが代表してSNS用にlit.linkと、二重でやっているんですけど、やっぱりTimeTreeがわかりやすいのかな。
むに：
ヲタクからも“TimeTree作って！”って、めっちゃ言われますね。“TimeTreeが1番見やすいから”って。
その機能を作ってくださいってお願いしようと思って来たんですけど、すでにあるんですね（堤俊輔）
——今までTimeTreeを使わなかった理由は何だったんですか？
むに：
作ろうと思ったんですよ！ lit.linkはSNSなどのリンクを貼るためのもので、スケジュール管理するものではないじゃないですか。だから更新がめっちゃ大変なんですよ。それでTimeTreeをやろうと思ったんです。でも新しくカレンダーを作ろうと思ったけど、やり方がいまいちわからなくて……。自分のプライベート用のカレンダーがもともとあるから、マドメド用に新しく作ったら自分のカレンダーも公開されちゃうんじゃないかっていう不安もあって……。
深川：
なるほど、めちゃめちゃ参考になる意見です。
堤：
僕もまったく同じですね。プライベート用とスタッフ用を間違えて、よくスタッフ用の方にタトゥーを入れる予定を書いちゃったりするんで……。
ルチア：
キャハハ！ よく見る！（笑）
深川：
その辺のわかりやすさと安心感が足りてないわけですね。でも、ご安心ください！ 共有カレンダーの予定を、間違えて公開カレンダーへ入れるようなことは絶対できない作りになってます。
堤・ルチア・むに：
おおっ！！
——そもそも、むにさんがスケジュール管理担当になったのは？
ルチア：
むにがマドメドに入る前（※2023年3月加入）は私がやってたんですよ。私がlit.linkを始めたのが2年前で、その時は名古屋のアイドルさん、みんなlit.linkを使ってたから、それを手本にして同じように何とか作れたんですけど……。
むに：
そうなんです。もともとは、るちゃん（ルチア）がやってたんですけど、管理が大変だということで1回やめたんですね。“オフィシャルサイトを見てください”ってことになったんですけど、でもやっぱり“欲しい”という声が多くて。自分は管理することが好きなので、私がやるよってことになったんです。
堤：
オフィシャルでlit.linkを管理してるグループさんもいるんですけど、僕がそれを採用しなかったのは、フライヤーを順番に並べられるけど、フライヤーによって表記のデザインが違うじゃないですか。イベント名が大きかったり、グループの写真が大きかったり。チケットの値段や会場が書いてある位置もバラバラだから見にくいなと思って。なので、オフィシャルサイトだけでいこうってなったんですけど、お客さんは意外と“lit.linkが見やすい”って言うんですよね。それでメンバー主導でやり始めました。
——Xからまとめて気軽に見られるのがいいんでしょうね。でも、そこはTimeTreeもフライヤー画像を貼れますし。
深川：
あとは2週間分くらいの予定を1枚の画像にして、シェアできる機能があります。
ルチア：
えーっ！ 知らなかった！！
深川：
画像でXにポストしやすいということで導入したんです。ほかにはウェブサイトに埋め込める機能も最近出しました。そうやって、みなさんのご要望を聞いて、これを作ろう、あれを作ろうと日々取り組んでおります。
——マドメドは、ライブアイドルには珍しいちゃんとしたオフィシャルウェブサイトがありますが、そこにこだわりが？
堤：
僕ももともとバンドやってたんで、ウェブサイトは絶対必須だと思っていて、作り込み含めてちゃんとやりたかったんです。さっき深川さんがバンドやられてた時の告知の話がよくわかるんですけど、僕も10年くらい前にバンドやってた当時は、メールマガジンで配信していて。Twitterができてからも今みたいにライブ情報が出るたびにツイートする時代じゃなかったですし。あ、そうだ、質問というか、要望があって。このカレンダーとこのプライベート用、2つだけを表示させることってできませんよね？
むに：
それ、普通にできますよ！（笑）
堤：
あれ、ホントだ！ その機能を作ってくださいって今日お願いしようと思ってたんですけど（笑）。
深川：
わかりにくいのはすべてこちらの責任でございます。あとはパソコン版もあるので、パソコンとスマホ両方で編集できます。
——深川さんはユーザーの声をよくチェックしてるんですか？
深川：
はい。公開カレンダーを使ってくださってるアイドルの方や、ファンの方のXのポストとかをよく見てるんですけど、ファンの方が“とりあえず仮でいいから予定出してもらった方が仕事のシフトが組みやすい、休みが取れる”とおっしゃっていたりして、そういうふうに使ってもらえるとすごくいいなって。とりあえず、“大阪”とだけ書いておいて、あとで詳細を追加するっていう。
むに：
そうやって使っているグループさん多い。
深川：
ちなみに告知で大事にしていることって何ですか？
むに：
速さは大事だと思っています。今は9月くらいまで、詳細は公開してないけど、日程が決まってるものはもう出してるんです。それこそ、シフトとかを空けられるように、なるべく予定が決まったらすぐ入れるようにしてます。あとは、Xだとやっぱり見やすさ。リンクだったり、URLを貼ってチケットの取りやすくすることですね。
堤：
お客さんが今1番頼りにしてるのは、むにのlit.linkなので。TimeTreeを使うなら、とりあえず日程だけはどんどん出していきたいですね。特にワンマンや主催ライブには星マークとかをつけられたら、ヲタクもそこだけは絶対有休取ろうと思うだろうし。
深川：
大事なイベントを目立たせる機能は今後つけていきたいです。集客が重要なライブには“重要”と書いているアイドルさんも多いので。あと、ライブが終わったらセットリストを書かれる方もいます。そうするとファンの人が振り返れますし。
ルチア：
それ、いいな〜！！
深川：
日記を書いている方もいらっしゃいますね。
——自分も最初はそうでしたが、プライベートでは使ってないけど、アイドルのライブスケジュールをチェックするためだけにTimeTreeを使っているアイドルファンもすごく多いと思うんですよ。
深川：
複数のアイドルグループファンの方はフォローしてまとめて見られます。フォローしているカレンダーに更新があった時は、赤ポチがつくので、それを見に行けばいい形になっております。
——マドメドとよく対バンするグループは、みんなTimeTreeを使ってますよね。
むに：
本当に！ 自分が作ろうと思った時に、ちょっと怖くて作れなかったので……。今回いいタイミングでいろいろお話を聞けてよかったです。改めてマドメドもTimeTreeを使った方がいいなと思いました！
——それでは、これを機にマドメドのTimeTree公開カレンダーを……？
堤：
はい、早速作り方を教えてくださいっ！
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