シャープ、呉社長がCEOとして最後のメッセージ 就任中言い続けた2つのこと

シャープが6月27日に大阪府堺市の同社本社で、第130期定時株主総会および取締役会を開催。シャープ 代表取締役副社長の沖津雅浩氏の社長兼CEOへの就任を決議するとともに、代表取締役社長兼CEOの呉柏勲(ロバート・ウー)氏が代表取締役 副会長執行役員に就く人事を決議した。

株主総会および取締役会の終了後、呉副会長は、社員に向けて、「CEO退任にあたって」と題したメッセージを発信した。

メッセージの冒頭には、株主総会において、新取締役体制を含む3つの議案を審議し、すべてを可決したこと、株主総会終了後の新体制での取締役会においては、今後の執行役員体制を決議したことを報告。「6月26日の発表通り、私は本日の取締役会をもって社長兼CEOを退任し、今後は副会長として、デバイス事業およびアセットライト化などの重要課題を担当する」と自らの役割について説明した。

また、沖津副社長が、新たな社長兼CEOに就任し、新体制の詳細や今後の取り組みなどについては、近日中に、沖津新社長から説明することを明らかにした。

その上で「2022年に、私がCEOに就任して以降、シャープは非常に困難な時期が続き、従業員の皆さんやご家族の皆様、さらにはすべてのステークホルダーに対して、迷惑や心配をかけたことを申し訳なく思っている。その一方で、こうしたなかでも業績改善に懸命に努力し続けたすべての社員に、心から感謝する。本当にありがとうございました」と述べた。

「改善」ではなく「改革」に挑戦してほしい

また、「この2年間、私はシャープの将来の飛躍に向け、2つのことに重点的に取り組んできた」とし、「イノベーション」と「人への投資」を推進してきたことを強調した。

「イノベーション」では、「私はCEO就任当初から、『改善』ではなく、『改革(イノベーション)』に挑戦してほしいと言い続け、新規事業専門組織の立ち上げや。インキュベーション体制の構築、AIやEVをはじめとしたNext Innovationへの挑戦など、シャープに新たな風を吹き込む取り組みを推進してきた。これは、近年、世の中がものすごいスピードで変化していくなか、シャープの事業ポートフォリオが長期間変わっていないことに対して、大きな危機感を抱いていたからである」と述べた。

ここでは、堺工場をAIデータセンターに転用する発表について言及。「今後のシャープが、生成AI分野を強化していく上での基盤となり得る取り組みのひとつである。これを機に、今後生まれてくる生成AI関連の様々な事業機会に挑戦することで、将来の大きな事業の創出につなげることができると考えている」と述べた。

また、「新規事業を担う社員は、世の中の変化に対する感度や、それを『自分事』にする積極性が飛躍的に向上したと感じている。こうした姿勢が、シャープのなかに広がっていけば、世界初を次々と生み出してきた強いシャープを復活できると信じている」と強調した。

「人への投資」では、「シャープに、『若くて活気溢れる企業風土』を根づかせることを狙い、『HITOを活かす経営』の方針のもと、人事制度や処遇制度の見直し、新たな研修プログラムの導入、新卒およびキャリア採用の強化など、さまざまな観点から改革を進めてきた。だが、いずれの取り組みも道半ばであり、心から変化を実感できるまでには至っていない。しかし、この仕組みは、2年間で確実により良い方向に向かっている。今後も改革を続け、社員の皆さんが大きな希望と誇りを持って働ける会社になってほしいと考えている」と述べた。

最後に、呉氏は、「先日示した中期経営方針を、スピードを上げて実行していく。私自身もシャープ再生に向け、新たな役割に全力を尽くす覚悟である。沖津新社長の強力なリーダーシップのもと、これまで以上に一致団結し、全員の手で、新たなシャープの姿を創り上げていこう」と呼びかけた。

なお、社員に向けたCEOメッセージは、前任の戴正呉氏の時代から行われており、呉氏もこれを踏襲。呉氏がCEO在任中に発信したメッセージは、就任直後の2022年4月2日以降、合計で19回に及んだ。

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