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今回のゲーム系プラモデルレビューは、コトブキヤより2024年1月に再販された1/72「ミラージュ C01-GAEA」。このキットは、2004年発売のフロム・ソフトウェアの『アーマード・コア ネクサス』(以下、ACNX)に登場するレイヴンであるエヴァンジェ操るACオラクルをベースにしたキットで、元々は2005年12月に発売されたものでした。なお、エヴァンジェ自体はPS2時代の最終作である『アーマード・コア ラストレイヴン』にて機体構成が違うものの再登場しています。
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このオラクルは、『ACNX』においてパッケージ機体となっただけでなく、ゲーム本編にもアリーナで登場しプレイヤーが戦いを挑める他、オープニングやバッドエンドなどで登場する看板機体です。この「ミラージュ C01-GAEA」は、コトブキヤの『アーマード・コア』プラモデルのシリーズ「ヴァリアブル.インフィニティ.」の第1弾ですが、再販の機会が多くないキットでした。
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本稿では、キットの作りやすさと塗装のしやすさ、可動域、ゲーム内モデルとの差異を探りレビューします。
ACプラモ黎明期のキットとして驚くべき色分けだが、初期キット故の作りにくさも
ここからは組み立を行う前にランナーを見てみましょう。ランナーは、ポリキャップを含めて全13枚。パッケージの大きさは、ガンプラで例えると嵩の高いMGパッケージぐらいのもので、シール類は無く、組み立て説明書とカラーガイド、部品注文カードが同梱されているのみです。また部品注文カードは、2023年10月からの注文方法変更によってQRコードと品番が記載されたものに変更されています。
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組み立て順はARMS(腕部)→LEGS(脚部)→HEAD(頭部)→CORE→LEGS(股)→EXTENSION(エクステンション)→BACK UNIT(キャノン)→BACK UNIT(ミサイル)→ARM UNIT L(ブレード)→ARM UNIT R(ライフル)→最終組立の順番です。
組立説明書には、組み立て図の他にACの構成パーツとフレーバーテキストも記載されています。説明書の図も必要最低限で描かれてており、シンプルにまとまっています。
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スナップフィットのプラモデルであるために組み立て自体のハードルは低いものの、色分けをほぼ完璧に行う方針なためか1部位を構成するパーツは多く、腕部だけでもポリキャップ込みで27パーツに分かれているほどです。手間は掛かりますが塗装しなくてもリッチに見えるのは嬉しいところ。脚部も同じように大量の細かなパーツを組み合わせて立体感を表現しており、オープニングでみるようなプロポーションを再現できています。
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脚部だけでなくコア部のパーツ数も多量で、特にコア部は上下にモナカ割りされた本体に装甲やセンサーなどC01-GAEAを象徴する意匠を組み込んで完成させるほどです。
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武器類はほぼ全てモナカ割りで造形されているため、本体と比べるとそこまでリッチに作られているようには感じません。他のACプラモと同じように他のキットとの組み替えや作りやすさを優先しているように感じます。
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個々のパーツの造型が良く出来ていると思えるものの、組み立てに難点を覚える箇所が複数ありました。その1つ目が、古いキットでありコトブキヤのACプラモ黎明期というのも関係しているのか、パーツ同士の接続がタイトすぎてパーツに隙間が出来てしまったり、ポリパーツが削れてしまうことです。
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そのため、一部接続部分をヤスリで削り、タイトさを和らげるなどの微調整が必要な箇所も多く、組み立てが思うように進みません。他にも頭部パーツのダクトや胴体パーツのボルト、腕部のオレンジクリアパーツなど、3mm以下の極小パーツも5~6個ほどあり、制作には細心の注意を払う必要がありました。
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合わせ目に関しては、パーツの色やエッジに合わせて組み上げる形となっているため、正面から見てラインが極力目立たない構造です。しかし、武器パーツは基本的に左右中央で切り分けるモナカ割りで造形されているために、普通に組み立てるとラインが目立ってしまいます。
また、個体差があるのかもしれませんがコアパーツのEOを搭載させようとするとパーツ同士が干渉してしまい、収まりきらないことがありました。部位の端を削るなど色々試してみましたが、どうしても解決することが出来ず、そこだけパーツを浮かせることで対応。パーツ同士の接続の悪さなど、黎明期キット故の明確な弱点が表れてしまっています。
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極小パーツに接着剤を使って固定したり、ポリパーツの保護や可動のしやすさを確保するためにバリを削ったりすることが本キットを攻略する要です。組み立てには予想より時間がかかり、丁寧に1つ1つ処理していくと体感ではありますが大体12時間ほどで完成したように思えます。
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素組みの「ミラージュ C01-GAEA」―ACプラモ第1弾としての意気込みが感じられる造型
ここで、素組みの状態で完成したキットを見てみましょう。素組みでも豊なディテールから視覚的に満足出来る仕上がりとなっています。
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可動域は、肘が約90度ほど、膝が約100度ほど曲がりますが、足首と足先がほとんど曲がりません。また、足首が曲がらないため構え撃ち姿勢を取らせようとすると、重心がずれて倒れてしまうことが多くありました。
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また、フライングベースなどを繋げられる接続穴もないために、ジャンプ中の姿勢などを表現するのが難しいものとなっています。また腕を前に突き出し右側へ構えようとするとバックユニットの軸と干渉してしまい腕を開けません。そのためバッドエンドのポーズを再現するためにはバックユニットを1つ外す必要があります。
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前述の通り「ミラージュ C01-GAEA」の造形は、オープニングやエンディングで登場するプリレンダリングで描写されたものをベースにしており、ゲーム内モデルと比べてみると細部の体型やバランスが大きく異なります。ゲーム内モデルでは、エクステンションパーツが小さかったり、コアパーツが少し横に広かったり、脚部パーツの足首周りにある小型ブースターが省略されているなど(他の部位のセンサー色も多少違う)、細かな差異が数多くあるのです。
それでも、オープニングやエンディングではライティングやシチュエーションの関係から、全貌が見えにくいCGモデルをベースにしたことで、リッチな造型を360度思う存分眺め、作品世界に思いを馳せられるのはプラモデルならではの楽しみ方です。
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ただの素組みですが、ディテールや造形自体は2024年現在の目からしても一級品。2005年発売のACプラモ第一弾と思えないような、組み立て上げると塗装の必要がないぐらいの見た目と、ディテールの密度の高さから満足感も大きく惚れ惚れしてしまいます。まさに、オープニングのCGモデルを完全再現したプロポーション的に再現度の高い素晴らしいキットであることは、この素組みの時点でも間違ないありません。
「ミラージュ C01-GAEA」塗装編―最後まで悩まされた接続問題
続いて塗装です。まず塗料の選定ですが、カラーガイドを見ると数多くの部位に対して複数の塗料を選定してあるものの、ゲーム内モデルやコトブキヤの紹介ページにある作例、オープニングを見る限り基本的にメタリックブルーとシルバーの2色なのではないかと解釈しました。
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カラーガイドに載っている写真では、細かな部位の色が判別出来ないこともあり、ここは完成写真からみえる色をシンプルに考えました。下地はメタリック系が中心となるために、クレオスの「Mr.フィニッシング サーフェイサー 1500 ブラック」を選択。シルバー部分はガイアの「EXシルバー」を、ガンメタルらしき部分はガイアの「ダークステンレスシルバー」を、メタリックブルー部分はクレオスのXC05「サファイアブルー」を、小さなセンサー部をN92「クリアオレンジ」に決めました。オープニングやゲーム内モデルもそこまで色が分けられていないことを考慮してシンプルさを心がけました。
塗装の前に合わせ目消しと分解です。合わせ目自体は目立たないものの武器を含めてそこそこ存在します。本キットはほとんどのパーツが色分けされているために、パーツを一つ一つ分解してから塗装ほうが手間が小さく確実です。また大きめのパーツの合わせ目消しは、接着剤とパテで隙間と段差を埋めてヤスリで削り取ります。
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合わせ目消しは接着剤とパテを塗った後に乾燥を待たなければならないため、乾燥を待つ間に個々のパーツ塗装から入りました。まずはシルバーのパーツを黒サフ下地にEXシルバーで塗装。続いて、ガンメタルのパーツをダークステンレスシルバーで塗装しました。同じシルバーですが、EXシルバーは粒子が粗く白っぽさが強調され、ダークステンレスシルバーは粒子が細かく黒めに反射するのでEXシルバーと微妙な違いが、ライティングよって見比べられます。
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加えて青パーツも合わせ目消しの後にサファイアブルーで塗装。モナカ割りの割合が多く、塗装の効率を考えると単体で成り立っているものと、一部シルバーパーツが加わったものを分ける必要があります。パテと接着剤の乾燥が終わったパーツは、ヤスリ(240番目→800番目)にて削り余剰分を馴らします。
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最後が脚部やコア部などの大きな面積を占めるパーツです。このパーツは先に塗装したパーツが含まれているため大多数をマスキングして塗装しなければなりません。マスキング自体は難しくありませんが、この「ミラージュC01-GAEA」は、ほとんどが曲線で占められており、ラインに沿ってマスキングテープを切り貼りするため、細かい所まで丸みを帯びたACであることに気付かされます。
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塗装を全て終え、いよいよ再組み立てを行うにあたって、一つ問題がありました。それはパーツの合いの悪さに最後まで悩まされたことです。合わせ目消しで接続部の穴がより狭くなってしまったのか、塗装皮膜が接続軸に影響したのかはともかく、全く接続穴に挿せないことに何度も遭遇し、軸を接着剤で溶かすだけでなくデザインナイフなどで削る必要まで迫られました。
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この作業は慎重にやる必要があるために予想以上に時間がかかりました。スミ入れを並行しつつ全てを組み立て終えたら完成です。
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完全塗装の「ミラージュ C01-GAEA」
完成した「ミラージュ C01-GAEA」を見てみましょう。メタリック系塗料を中心にしたことで、光沢具合が強調され本キットが持つ曲線の美しさを表現出来たように思えます。360度見渡してみると、プリレンダリングのモデルは曲線を帯びて美しかったのかと思い知らされます。
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何かアクションを出来ないかと探ってみたところ、以前購入したシンプルスタンドを用いれば無理矢理ですがポーズを取らせることができました。
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前述の通り可動範囲自体はそこまで広くないため、ブレードを振るうようなポーズやリニアガンを構えさせようとすると微妙にぎこちない格好となっていまいます(エヴァンジェは強化人間なので構え撃ちはしてきませんが、構え撃ちも『アーマード・コア』の華でしょう)。
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左右にスライドしながらの小ジャンプ移動のポーズはスタンドを支えにすることで再現。このポーズはシンプルですが躍動感があり純粋にカッコよく、まさにPS/PS2時代の『アーマード・コア』シリーズを象徴するポーズでしょう。
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最高の造形だが黎明期故の作りにくさが共存するキット
PS3/Xbox 360世代になる前の『アーマード・コア』においてゲーム内モデルと、オープニングやエンディングなどのCGモデルは基本的な形を抑えてはいるものの、細部を見比べてみると大きく差があり、その違いに悩まされました。
1/72「ミラージュ C01-GAEA」の造型は2005年発売とは思えないほど精密さと華やかさに満ちています。ここから1/72「ホワイト・グリント」など後年のキットに至るまで高いクオリティを保ち続けたのは驚異的です。
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しかしながら、発売から20年近く経過した視点で見てしまうと、相対的に古いキット故の組み立て方法の煩雑さや、細かすぎるパーツ分割で組み立てるのに難しさを感じます。初心者/初級者が気軽に組み立てられるかと言えばそこそこ高めなハードルがあり、調整が必要な部位やパーツの小ささから、極小パーツを扱うための精度が高く繊細なピンセットやデザインナイフ、プラモデル向け接着剤、複数の紙ヤスリとスポンジヤスリが必要ではないかと思うのです。
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2024年1月に再販された本キットですが、少しばかりショップを探さなければならないものの6月現在でも新品で入手可能です。価格も4,180円(税込)と昨今の再販されているACプラモデルとしては比較的低めで、組み立てが難しいという黎明期キットの問題点を把握しておけば、素組みでも塗装でも満足できるプラモデルです。