キヤノン、トコジラミ捕獲デバイス開発企業に出資

by 清宮信志

キヤノンマーケティングジャパンは、グローバル・ブレインと共同で運営するコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)ファンド「Canon Marketing Japan MIRAI Fund」を通じて、ホスピタリティ業界向けにIoTを活用したトコジラミ捕獲デバイスとソフトを開発する「Valpas Enterprises Oy」に出資した。

Valpas(ヴァルパス)は、ホテルなどのホスピタリティ産業向けに、トコジラミの被害を未然に防ぐため、IoTを活用したトコジラミ捕獲デバイスとソフトを提供しているフィンランドのスタートアップ企業。

トコジラミは人を吸血すると激しいかゆみを引き起こす害虫で、近年、欧米や韓国ではその被害報告がメディアに大きく取り上げられている。部屋の衛生環境とは関係なく宿泊者により持ち込まれるため、日本でも海外からの旅行者の増加に伴い問題が拡大してる。また、殺虫剤に耐性を持つ個体の報告もされており、駆除が難しくなっている。

トコジラミが発生した宿泊施設は、専門の害虫駆除業者による数週間から数カ月におよぶ洗浄作業が必要となり、コストだけでなくブランドイメージも大きな損失を被ってしまう恐れがある。

Valpasが開発したIoTデバイスは、トコジラミの誘引・捕獲・駆除を行ない、宿泊者への被害を事前に食い止めることで、宿泊機会の損失回避とブランドイメージ向上に貢献するもの。ベッドの脚にトコジラミを捕獲する機能を持たせ、捕獲状況はアプリケーションで管理できる。殺虫剤などの薬剤を使わないため、生態系への影響が少なく環境への負荷低減を実現するという。

「Canon Marketing Japan MIRAI Fund」は、Well BeingとBusiness Transformationの2分野を投資領域としており、今回の出資では「Life Purpose(精神的な豊かさを通じて、誰もが健康で生きる活力を感じられるサービスの創出)」と「Regional Regeneration(地域の可視化・再認識と地域発の事業の創出)」の実現を目指す。

Valpasの事業が旅行客の安心安全、ホスピタリティ産業の持続的な発展に寄与することを期待し、さらには今後の世界的な旅行者増加によるニーズの一層の拡大を想定して、今回の資金調達に参画した。

出資を通じて、キヤノンMJグループは「安心安全でサステナブルな旅行・観光の実現」というテーマで新たな事業の創出を目指すとしている。また、キヤノンMJグループの顧客基盤を活かした日本市場への事業拡大支援など、多面的なサポートにより、Valpasの事業成長に貢献していく。今後の事業展開については「R&B」のホームページで公開する。

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