米アーカンソー州司法長官、ショッピングアプリ「Temu」に訴訟を提起。「無制限に情報を収集する危険なマルウェア」

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米アーカンソー州の司法長官、ティム・グリフィン氏は先週、中国のオンラインショッピングアプリ「Temu」の親会社PDD Holdingsおよびアプリ開発元のWhalecoに対して訴訟を起こすと発表した。

訴訟書類では、ショッピングアプリ「Temu」は、それをインストールしたスマートフォンのデータプライバシー設定を変更し、OSに無制限にアクセス可能になると主張されている。具体的には、カメラ、写真、位置情報、連絡先、テキスト メッセージ、文書ファイル、その他あらゆるアプリケーションにアクセスできるとのこと。

そしてグリフィン氏はこれが、アーカンソー州法における欺瞞的取引慣行法および個人情報保護法に違反するとし、「Temuはオンラインショッピングプラットフォームを名乗っているが、ユーザーの携帯電話上のほぼすべてのデータに密かにアクセスする危険なマルウェアだ」と書類に記している。

なおグリフィン氏は、Temuが収集した個人情報は第三者に販売して利益を得ているとも主張している。Temuの商品について人々は「どうやってあれほどまでに安く販売できるのかと思うだろう」「それは、それが彼らの仕事ではないからだ。 彼らの実際のビジネスはデータの販売だ」「マーケットプレイスでの製品の販売は、目的を達成するための手段なのだ」と述べた。

これに対しTemuの広報担当者は「訴訟の申し立ては主にインターネット上で流布された誤情報に基づいており、まったく根拠がない。われわれは申し立てを断固として否定する」とした。

グリフィン氏はこの問題に関して、他の州の司法長官とも話し合いの場を持ったが、複数の州にまたがる訴訟を準備する時間を待ちたくなかったという。ただし今回の訴訟には、他の州も追随するものと予想している。なお、訴訟書類では、Temuを運営するWhaleCoはボストンに本社を置いているものの、TemuはPDD Holdingsの監督下にあるとしている。そして、PDD Holdingsは最近アイルランドに拠点を移したが、中国の諜報機関である国家安全部への協力が義務付けられる中国独自の法律が適用されていると訴状は述べている。

Temuの前身は中国版グルーポンとも言われた「Pinduoduo」と呼ばれるECプラットフォームだ。Pinduoduoは中国農村部をターゲットとしてユーザーを獲得し、中国最大の利用者数を記録したが、ポルノ他の違法商品の取り扱いや、従業員への長時間労働の強制といった問題が浮上した。さらにAndroid版Pinduoduoアプリは、マルウェアであるとの疑いにより、Temuアプリのリリースからしばらくの後にGoogle Play Storeから削除された。またアップルは以前、Temuのユーザーデータの取り扱いが、プライバシー保護規則に違反しているとして、一時App Storeでの提供を停止していた。

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