【危険】観光地で“クマ”の出没相次ぐ…連日学校にも… 専門家「過疎化により人間が撤退しクマの生息地が拡大」

全国各地の観光地で相次いでいる、クマの出没。観光施設からは不安の声が上がっています。
2023年に1000万人近い観光客が訪れた人気観光地、栃木県日光市。多くの観光客が訪れる、奥日光三名瀑のひとつ「竜頭の滝」のすぐ近くの「龍頭ノ茶屋」でも、2024年6月28日にクマが目撃されました。

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「龍頭ノ茶屋」 店主 室根靖史さん:あんまり出ると、お客様も気にされるでしょうし、やっぱり木の上とかにいると気づかなくて、危なかったりもするんで。早めになんとかして…できるといいなとは思うんですけど。

さらに、6月24日には、日光市内にある学校の敷地内にもクマが現れました。

学校関係者「ツキノワグマだ!」

この学校では6月29日、30日にもクマの姿が目撃されています。

30日の午前10時頃、学校からの通報を受けて駆けつけた、警察と猟友会のメンバーが現場を確認。爆竹を鳴らしたところ、幸いクマは去って行きました。

日光市立中宮祠小中学校 川田正己校長:大変心配をしていますし、子供たちも心配ではありますけども、保護者の方に登下校は送り迎えをお願いして、集団登校も今は見合わせているところです。

「人を怖がらない」個人の対策では限界

日光市だけでなく、青森県八甲田山、山形県米沢市、岐阜県下呂市などの観光地でも出没しているクマ。

なぜこれほどまでにクマの出没が増えているのか?石川県立大学の大井徹特任教授に話しを聞きました。

大井徹特任教授:本州ではクマの分布が広がり続けています。そのため、山の中のほとんどの観光地の周辺というのは、すでにクマの生息地です。そして観光地ではたくさんの人が訪問するので、熊の餌になる生ゴミがたくさん出て、その管理が甘いとクマをひきつけることになります。
また、クマ自体も自分を見てもただ驚くだけの無害な人の姿を見る経験を積み重ねています。そうしたクマが人を怖がらなくなって、人目に付くところに平気で出てくるようになってしまったと。

連日クマが目撃されている栃木県では、クマの注意喚起のチラシを日本語だけでなく、英語、中国語、韓国語、タイ語でも作成し、増えている外国人観光客へも注意を呼びかけています。

2年前から同じクマが出没しているという「龍頭ノ茶屋」では、防犯カメラを設置し、出没した際は爆竹を鳴らすなどして追い払っていますが、すぐに戻ってきてしまうため、行政の力を借りないと厳しい現状があるといいます。

青森県の八甲田山では、6月21日に女性がクマに襲われ右足の太ももを負傷。同月25日には、タケノコ採りをしていた80代の女性がクマに襲われ死亡しています。

女性の死亡を受け、青森県は県内全域に「ツキノワグマ出没警報」を発表。(11月30日まで) 市や県など関係機関が現場周辺の入山規制を実施。酸ヶ湯キャンプ場は無制限の営業中止となりました。

さらに、八甲田山系をはじめ、白神山地、下北の3地域に定点カメラを設置して5年ぶりに県内のツキノワグマの個体数調査を実施し、今後の対策を検討する予定です。

大井徹特任教授:
観光地のクマ対策というのは重要です。観光地には無防備な人間がたくさん集まっています。そこに何らかの原因でパニックになったクマが突進してくると、大事故になります。2009年には、長野県の観光地で一度に10人が被害に遭うという事故もありました。
そこで、対策ですけれども、クマが出没するのはそこにクマをひきつける物があるからです。それは「エサ」です。
まず、観光客・観光施設から出る生ゴミをきちんと管理することが必要です。さらに、観光施設の周囲にクマが潜まないよう、藪の刈り払いをして、見通しをよくしておくことも必要です。また、問題が起きたときに、どう対処するか関係機関と事前に話し合っておくことが必要です。

――臭いや音など事前にクマが嫌がるものを設置することは?
大井徹特任教授:
色々開発されていますけれども、一時的な効果しかありません。それが無害であることをクマが学習してしまうと、屁にも思わなくなるということがあります。

――クマの絶対数が増えている?人間がクマの生活圏内に入りすぎている?
かつては人間がクマの生息地に入り込むということがありましたが、現在は過疎化が進んで、人口減少ですよね。人間の方が撤退して、クマの生息地が広がっている状態です。

新システム運用開始

2023年クマによるけが人が70人と過去最多になった秋田県では、7月1日から「クマダス」という新システムの運用が開始されました。

県や市町村がそれぞれで管理していた目撃情報を1つに集約。クマやイノシシなどが目撃された「場所」「時間」「当時の状況」「写真」などが地図上に1つにまとめて表示されます。

――このようなシステムをどう活用していけば良いでしょうか?
大井徹特任教授:
自治体のホームページなどを見れば、マップが見られますが、住民・観光客は自分が行動する場所がクマの出没の危険があるかどうか把握し、出会わない、ひきつけないための行動をすることが大事です。
ただ、自治体によっては本当にクマかどうかの情報の確認で、公開まで2~3日かかる場合があり、観光客がリアルタイムの情報を得られない場合があります。そのために、尋ねた先での最新情報の収集も大事です。また、自治体は情報を公開するだけでなく、情報マップに基づいて、出没の多い場所を特定して、なぜそこに出没が多いのか原因を分析して、原因を除去するという対策を進めることも、必要です。

――人間の世界は安全で怖くない、おいしい食べ物があると覚えてしまったクマの習慣を変えることはできないのでしょうか?大井徹特任教授:クマの行動の変化は、40年~50年かけて起きたことです。人間側の対応をきちんと整えて、時間をかけて山の奥にクマを押し戻す、そういった対応が必要になってきます。

(『めざまし8』 2024年7月1日放送より)

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