AIは金融に好機か危険なツールか、金融業界で見方分かれる

Ross Kerber Suzanne McGee

[シカゴ 28日 ロイター] - 人工知能(AI)をベースにしたシステムの普及を巡って金融サービス業界では、天与の大きな好機と経営者らから歓迎の声が上がっている。一方で、資産運用会社は機密性の高い情報を扱うため、ほかの個人向け事業よりもAI利用に伴う危険性に直面しているなど、見方は分かれている。

米オープンAIの元幹部ザック・カース氏は最近、シカゴで開かれたモーニングスター主催の投資家会議で利用メリットを強調した。例えば、運用担当者が顧客向けに運用資産配分(ポートフォリオ)や貸し付け決定など推奨事項について説明する場合は人間よりも優れている可能性があるという。

また、人間がそうした意思決定をする際、潜在意識の中にある偏見が影響を及ぼし得る上、偏見を説明するのが苦手だが「AIを使えばかなりよくなるはずだ」とカース氏。

AIは理論上、コンプライアンスフォームの記入のほか、あまり複雑ではないポートフォリオ構築などルーチンワークの多くを簡素化する。このため金融のプロは対人のやり取りや深い思索が必要な問題に従来よりも時間を振り向けられる。「金融アドバイザーは顧客サービスにもっと時間を費やせる」とモーニングスターのシニア・リサーチ・アナリストのカレン・ザヤ氏は指摘する。

しかし、退職金プランで投資先の資産を調整するといった仕事は、飛行機の座席予約や口座残高確認などと比べて、動きが激しくて目配りが必要なものがもっと多く絡み合っているという。

ザヤ氏は「今のところは、この業界で検討課題になっていると思わないが、われわれが意見を交わした企業はどこもAIをベースにしたシステム導入について相当考え込んでいるし、慎重になっている」と強調した。

米規制当局は現在、金融会社のAI利用に関し一般から意見を募集している。金融サービスへの包括的で公平なアクセスを促進するのが狙いだ。イエレン財務長官は金融でAIを使うと取引コストを引き下げられる可能性があるものの「重大なリスク」を伴うと注意も促している。

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