スポーツをやる際の必須運動で、ケガや不調を未然に防ぐ! 身体の歪みやバランスを整える「動きケア®」とは? 【スポーツ障害予防の教科書】

動きケア®の基本的な考え方

本来持っている動きができれば、我々は元気で活動的である

動きケア®とは、「身体の部分や全体の動きを整え調整する」ことによって、すべての人に必要な動きや姿勢、習慣を身体に負担がかからないものに変え、痛みや不調を改善し、楽に身体を動かせるようにするメソッドになります。まず動きケア®の基本的な考え方について述べていきます。
動きケア®の前提にあるのは、「身体は動くべきところが、動くべき方向へ、十分なだけ動くこと。それによって身体のした動きを複合運動と呼びます。また下半身や上肢、肩甲帯や指先など、様々な部位が連動します。本来持っている機能が発揮できないと痛みや不調が…体が協調して動けば、本来我々は元気で活動的である」ということです。もう少し詳しく解説しましょう。身体の各部それぞれが役割を果たすとは、各部の基本運動が不快感や痛みを伴うことなく十分な可動域で動かせる(力が出せる)ことを意味します。また、身体全体が協調して動くとは、スムーズな複合運動で動かせたり、各部をスムーズに連動させることができることを意味します。複合運動についてですが、野球の投球動作に例えるとただ単に腕を振る動作ではなく、腕を外旋(外側にねじる)させた状態から内旋(内側にねじる)するように腕を振ります。これは各部位の基本運動と呼ばれる運動が合わさっているのです。こうした動きを複合運動と呼びます。また下半身や上肢、肩甲帯や指先など、様々な部位が連動します。

本来持っている機能が発揮できないと痛みや不調が生じる

逆説的になりますが、現在身体に痛みや不調を抱えている方は
⓵身体各部の基本運動のいずれかに不快感や痛みがあったり、十分な可動域で動かせない
⓶スムーズな複合運動(基本運動の複合運動)で動けない
⓷スムーズな連動(身体各部の連動)で動けない(力が出ない部位がある)
といった状態にあることが多いのです。別な表現をすると「本来動くべきところが、動くべき方向に、十分に動いていない。そのため本来の複合運動や連動の動きがスムーズにできなくなっている」ことになります。動きケア🄬はこのような状態を改善することが目的なのです。

動きケア®による人体の分け方と部位ごとの基本運動

身体の部位を10に分ける

動きケア®では、人体を10の部分に分けて見ていきます。

頸部

胸郭部

肩甲帯(上肢帯)

骨盤部

股関節

膝(下腿)

足首

足部

このように部位分けをしたら、部分的に十分に動いていないところを動くようにし、最終的には連動によって本来の動きへ仕上げていきます。ここでポイントとなるのは、痛い部位を無理に動かさないことです。例えば肩に痛みがある場合には肩を無理に動かさず、その上下に位置する部位を動かします。それは「胸郭部」や「肩甲帯」、「骨盤部」や「股関節」になります。どこかの部位に痛みがある場合、その上下の部位の動きが不十分であったり、可動域が狭くなっているケースが多いのです。そして上下の部位の基本運動を行うことで本来の動きを取り戻し、痛みや不調を改善します。
人はどこかに痛みや不調がある場合、習慣(動きや姿勢)のなかに過度の負担がかかる癖ができてしまっています。その動きや姿勢を基本運動や複合運動、連動を通じて本来の動きや姿勢に戻すのです。つまり、身体を整える発想によって行う運動が動きケア🄬になります。

各部位の基本運動

それぞれの部位ごとの基本運動は、以下のイラストの通りです。

⓵上⇔⓶下 ⓷左⇔⓸右
⓹左斜め上から右斜め下(右斜め下から左斜め上)
⇔⓺右斜め上から左斜め下(左斜め下から右斜め上(左斜め下から右斜め上)
⓻右回し⇔⓼左回し ⓽より目

頸部

⓵屈曲⇔⓶伸展
⓷左側屈⇔⓸右側屈
⓹左回旋⇔⓺右回旋
※チェックでのみ使う

胸郭部

⓵屈曲⇔⓶伸展
⓷左回旋⇔⓸右回旋
⓹左側屈⇔⓺右側屈
⓻拡大⇔⓼縮小

肩甲帯(上肢帯)

⓵挙上⇔⓶下制
⓷外転⇔⓸内転
⓹上方回旋⇔⓺下方回旋

⓵屈曲⇔⓶伸展
⓷外転⇔⓸内転
⓹外旋⇔⓺内旋
⓻水平屈曲⇔⓼水平伸展

骨盤部

⓵前傾⇔⓶後傾
⓷左上傾け⇔⓸右上傾け
⓹腹圧

股関節

⓵屈曲⇔⓶伸展
⓷外転⇔⓸内転
⓹外旋⇔⓺内旋

膝(下腿)

⓵屈曲⇔⓶伸展
⓷外旋⇔⓸内旋
※⓷⓸は膝屈曲時のみ

足首

⓵背屈⇔⓶底屈
⓷外がえし⇔⓸内がえし
⓹外旋⇔⓺内旋

足部

⓵外がえし⇔⓶内がえし
⓷外転⇔⓸内転
⓹足指屈曲⇔⓺足指伸展

出典:『スポーツ障害予防の教科書 姿勢と動きのコンディショニング』

【書誌情報】 『スポーツ障害予防の教科書 姿勢と動きのコンディショニング』 土屋真人 スポーツと姿勢は重要な関係にあり、姿勢が歪んでしまうと筋肉・柔軟性・可動域・バランスなどに影響を及ぼします。姿勢はちょっとしたことでも狂ってしまいますが、その修正方法を多くの選手は知りません。本書は姿勢を改善することでパフォーマンスをアップさせるとともに、ケガの予防にも役立つために、なぜ不調や痛みが生じるのか、どこの姿勢が狂っているのが原因なのかをわかりやすく解説し、その改善方法やトレーニングについてイラストと写真でビジュアル的に紹介します。人によって不調が生じる部分は様々です。首、肩。胸郭部、背中、腰、股関節、足、などの各部位ごとに必要な柔軟性をチェックし、不調の整え方、効果的なトレーニング、改善方法を、トレーナーを指導する体育協会理事長の著者が徹底解説する初めての一冊になります。

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