かなわなかった挑戦は「失敗じゃない」 申ジエが戦い続ける理由

パリ五輪への切符は手にできなかった(撮影/和田慎太郎)

◇国内女子◇資生堂レディスオープン 最終日(30日)◇戸塚CC西コース(神奈川)◇6697yd(パー72)◇曇り(観衆7752人)

「体は少し大変だったけど、心は本当にスッキリした感じ」。シーズン前半を終えて、申ジエ(韓国)がひとつの目標に区切りをつけた。8月「パリ五輪」に韓国代表として出場するため、今季は本大会まで日米11試合を転戦。6月24日付の世界ランクに基づく五輪ランキングで15位以内を目指したが、27位で代表入りはかなわなかった。

米ツアーで賞金女王、2010年には世界ランク1位に立ったが、五輪の舞台は未経験。「いろんな経験をしてきた。もう20年やってきたのに、まだやったことのないチャレンジができることはすごく楽しみ」と、ランキングを上げるため、今季は2月の米ツアー「HSBC女子世界選手権」からスタートした。同週の国内開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」を欠場するのは2017年大会以来。「ツアー競技優勝者の翌年度出場義務」(ツアー規定第25条)違反として罰金100万円が科されても、海外へ飛んだ。

4月「シェブロン選手権」から海外メジャー3試合に出たが、上位に食い込めずに代表決定直前の「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」では予選落ち。「自分の力を出し切って挑戦できたので後悔はない。失敗ではなくて、そこで学んで感じたことはあった。これも経験になった」。挑戦し続ける姿は、後輩に見せたい“背中”にまた一歩近づいたはずだ。

8月にはセントアンドリュースへ(撮影/和田慎太郎)

キャリアが20年近くになる中、プロゴルファーとしての理想像はまだ固まっていない。「ただ上手にボールを打つだけがプロじゃない。姿勢や責任とか、何がプロかを考えて、まだ成長できることはある」と、積極的に後輩にアドバイスを送るのもその一環。2005年のプロ転向後、自分も先輩たちに色々なことを教わってきた。後輩が育ってフィールドのレベルが上がれば、自分のモチベーションにもつながる。

「ひとりでは絶対に成長できないから、私がやってきたことを後輩たちが持っていってくれたらと思う。私も、ちゃんと後輩たちに良い背中を見せたいです」。挑戦を続ける36歳は、来月もう一つ大きなイベントを控えている。

8月22日から始まる「AIG女子オープン(全英)」に参戦。今年の会場セントアンドリュースは、2007年に初めて全英を経験した舞台だ。「もうキャリアが長いから、セントアンドリュースの全英は3回目。本当に頭を使いながらプレーするんですが、とても楽しみ」と新たな学びを求めて渡英する。(横浜市旭区/谷口愛純)

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