「老齢化した大統領を見捨てる」イギリスメディアが“予言” テレビ討論会で“失態”のバイデン氏に撤退求める声相次ぐ

米大統領選挙のテレビ討論会でバイデン大統領が失態を演じて、党内から出馬を撤退するよう迫られることを予言していたマスコミがあった。英国の大衆紙デイリー・メールの電子版がそれで、討論会10日前の6月17日、次のような見出しの記事を掲載していた。

「バイデンを取り替える民主党の秘密計画が明らかに:クリントン、オバマそれにシューマーが老齢化した大統領を見捨てる…それをいつ実行するかが問題だ」

討論会は「国民に判断を委ねる最後の機会」

記事は、バイデン大統領の言動が最近とみにおかしくなってきていると指摘。15日、ハリウッドで行われた資金集めの集会で、バイデン大統領が退出するタイミングを失して舞台で立ち往生したのをそばにいたオバマ元大統領が手を取って舞台袖に案内したことや、5月10日にホワイトハウスで行われた奴隷解放を祝う「ジューンティーンス」のパーティでは、次々と登場するアーティストのリズミカルなパフォーマンスに合わせて聴衆が体を揺する中、バイデン大統領一人が凍りついたように無表情で過ごしていたことを衰えのなせるわざとしていた。

その上で、記事は「トランプ前大統領との討論会は、大統領があと4年の任期をまっとうできるかどうか米国民に判断を委ねる最後の機会になる」との識者の談話を紹介し、次のような一節に続いていた。

「実は、デイリー・メールは討論会でジョー(バイデン)が失敗したり支持率が下がり続けるようなことになれば、民主党リベラル派の大物たちが一致団結してジョーに代わりタオルを投げる(TKO負けを宣言する)という情報を入手した。
民主党の戦略家の一人がデイリー・メールに語ったもので、大統領に再選を断念させることができるのはバラク・オバマ元大統領、ビル・クリントン元大統領、ナンシー・ペロシ前下院議長、チャック・シューマー上院院内総務だけで、それも4人が団結して大統領に働きかけなければならないという」

事態はデイリー・メールが予言した通りになった。討論会でバイデン大統領は、声がかすれ口ごもったりして自らの実績さえ満足に語れず、保守派の大衆紙ニューヨーク・ポスト電子版は「ジョー・バイデンの大統領の終焉を目撃した」と報じた。

当のバイデン大統領は討論会の翌日、ノースカロライナ州での集会で演説し、「ここへ来たのは11月の選挙でこの州を勝利するためだ」と撤退を否定したが、民主党を支持するニューヨーク・タイムズ紙が社説で大統領の出馬撤退を要求したり、米国で発行されるタイム誌最新号がその表紙をバイデン大統領がページの枠外に退出してゆくような写真と「パニック」という一言で表現したり、もはや大統領の撤退は外堀を埋められたような状況になっている。

民主党トップによる“バイデン撤退”への布石か

今後、民主党の「大物」がどう大統領に引導を渡すかだが、私が気になったのはこの「予言」がなぜ米国のマスコミでなく英国の大衆紙にスクープされたのかということだ。

党派性が際立つ米国のマスコミを避けたのであれば、この情報は党利党略の思惑なしに受け止められることをねらってリーク(漏洩)されたものと考えられる。つまり、民主党のトップ周辺が、バイデン大統領に見切りをつけて撤退の布石を打ったのではないかと思わせた。

そうであれば、すでに後任の腹づもりもできているはずだが、デイリー・メールの記事は、筆頭候補であるべきカマラ・ハリス副大統領は民主党内部で反対論が強いという情報通の話を紹介し、「それでは誰が後を継ぐのか?」とだけに留めている。

ちなみに、現在名前の上がっている次候補者についてニュースサイトのドラッジレポートのアンケート調査では、これを書いている時点で次のようになっていた。

ギャビン・ニューサム カリフォルニア州知事(56)22%
カマラ・ハリス副大統領(59)13%
ヒラリー・クリントン元国務長官(76)11%
グレッチェン・ウィットマー ミシガン州知事(52)10%
それ以外 41%(いずれも小数点以下切り捨て)

「それ以外」が曲者だ。私はオバマ元大統領夫人のミシェル・オバマさん(60)以外にはいないと思っているのだが、バイデン大統領とはウマが合わず選挙応援も避けていたと言われる。そのミシェルさんの名前を出して、大統領の機嫌を損ねて撤退を渋ることを避けるために今は「それ以外」なのかもしれない。

いずれにせよ、討論会以降民主党内ではデイリー・メールが伝えた筋書き通りに事態が推移しているようで、このまま行くとバイデン大統領が大統領選を撤退することになるのだが……。
【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

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