「夏の雷雨のおとぎ話」 苦しみながらもデンマークを下した開催国ドイツに対する現地メディアは好反応!「異常な障害を乗り越えた」【EURO2024】

現地時間6月29日に行なわれたEURO2024のラウンド・オブ・16で、ドイツ代表はデンマーク代表を2-0で下し、2大会ぶりに準々決勝へ駒を進めている。

グループステージを内容の伴った2勝1分けの成績で首位通過した開催国は、開始4分のニコ・シュロッターベックのヘッド弾がVARで取り消されるも、逆に48分にヨアキム・アンデルセンにゴールを割られた際にはVARに救われた。そして、その5分後にアンデルセンのハンドでPKを獲得し、カイ・ハバーツがゴール右隅に決めて今度こそ先制。さらに68分にはシュロッターベックの縦パスに抜け出したジャマル・ムシアラがドリブルから冷静に流し込んでダメ押しゴールを決めた。

悪天候により中断を余儀なくされたドルトムントでの一戦を、ユリアン・ナーゲルスマン監督は「少し奇妙な試合だった。最初の25分は、この大会で最高の時間だった。その後、我々は正当だと思われるゴールを決めたが、審判はそれを無効にした。それはつまらない理由によるものだった。全体的には、逆境に満ちた試合であり、我々はそれを乗り越えた」と振り返っている。
審判の判定については、デンマークのキャスパー・ヒュルマン監督もセンチレベルでのオフサイド判定や「馬鹿げたハンドのルール」(本人談)によるPK判定に対して「意味をなさない。VARをこのように使うべきではない」「本当にうんざりしている」と不満を露にしたが、これに対してナーゲルスマン監督は「自分も逆の立場だったらフラストレーションが溜まっただろうが、ルールはルールとして受け入れざるを得ない」と言及した。

ちなみに日曜日発行紙『BamS』は、元審判のトルステン・キンヘーファー氏の「デンマークにとっては辛い3分間(ゴール取り消しとハンド判定)となったが、規則上はどちらも正しい。オフサイドはごくわずかのものではあったが、正しい判定だった。そしてハンドも明白だ。腕が外に出ており、ボールは明らかに親指に当たっている」との見解を紹介している。

さて試合について、現地メディアの報道を見ると、ドイツの日刊紙『BILD』は「VARの幸運もあり、ドイツにとっては『夏の雷雨のおとぎ話』となった」と報じ、スポーツ紙『Kicker』は「DFBチームにとって、準々決勝への道は決して平坦なものではなかった。悪天候のために長い中断があり、デンマークにリードを先に許したと思われたが、その後に2度目のVAR介入があり、わずかな時間で先制。ドイツはこのリードを決して手放さなかった」と伝えた。 国外では、英国の日刊紙『The Guardian』が「狂乱で騒々しく、時に感動的な試合は、最初は自然の力によって、次にはサッカーを圧倒する致命的なテクノロジーの力によって中断された。全てが終わった後、ドイツは新しい夏の夢を見ているかもしれない。なぜなら、彼らは異常な障害を乗り越えたからだ」と、今後の快進撃の継続を示唆している。

フランスの日刊紙『LA PARISIEN』は「ドイツが波乱に満ちた試合でデンマークを下して準々決勝に進出」、スペインのスポーツ紙『MARCA』は「ドイツが嵐を乗り越えた。開催国は非常に良いチームだったデンマークを下している」、そしてイタリアのスポーツ紙『Corriere dello Sport』は「多くの勝者がいる。ドイツは苦しみながらも次ラウンドに進出。VARは4回の介入で勝敗を決定し、試合を中断させた雷雨も勝者だった」とそれぞれ綴った。
この数年の低迷が嘘のように快進撃を見せ、デンマーク戦では勝負強さも見せたドイツ。強国復活の予感は、1996年大会以来の欧州制覇が実現するかという興味をさらに膨らませているが、フランクフルトの日刊紙『Frankfurter Rundschau』は、スーパーコンピューターによる最新の予想で、ドイツはフランス、ポルトガルとともに優勝確率が13%で、26.29%で1位となったイングランドに大差をつけられているという悲観的なニュースを報じている。

しかし、国民の期待は膨らむ一方であり、デンマーク戦後にはスタンドのドイツ人観客たちが「ベルリン、ベルリン、ベルリンへ行くぞ!」と大合唱。早くも7月14日の決勝に目を向けているという。これを報じた『Kicker』紙は、「スペインがジョージアに勝利した場合、準々決勝では、タイトル獲得の有力候補との真剣勝負が待ち受けている」と、この先もさらに厳しい戦いが続くと指摘した。

構成●THE DIGEST編集部

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