外国人観光客が食べたい日本食は寿司ではなく「麺」 爆買い減少の裏事情も…インバウンド客のリアル実態

外国人観光客が食べたい日本食第1位は寿司ではなく…… (photo library)

今や全国各地にインバウンド観光客が押し寄せるようになった、観光立国ニッポン。

「政府観光局によると、4月の訪日外客数は前月に続いて300万人を突破。コロナが弱毒化したこの夏は、さらなる増加が見込めそうです」(旅行誌ライター)

そこで、国際親善と相互理解を深めるべく、東京・浅草と、大阪・道頓堀界隈で道行く外国人観光客に直撃取材を敢行。カタコトの英語とスマホの翻訳アプリを駆使し、彼らの口にした、「日本での食事」について調査した。

まず大阪で声をかけたのは、フランスから来たという30代の男性。

「牛丼が好き。吉野家で食べたとき、セットでついてきた、みそ汁とお新香がおいしくてビックリした」

牛丼は日本のサラリーマンの強い味方だが、その味は世界でも通用するようだ。

浅草で会ったレゲエミュージシャン風のカナダ人男性に何を食べたか聞くと、「寿司」と即答したが、意外にもこれは少数派。外国の人にとって、生魚を食べるのはまだまだハードルが高いようで、寿司は、さほど人気がなかった。

他にも、「天ぷら、お好み焼き、カツ丼」(オーストラリア人のカップル)「しゃぶしゃぶ、トンカツ」(フィリピン人男性)と、日本食を堪能した観光客は少なくなかったが、圧倒的に人気が高かったのは、意外なメニューだった。

■人気ナンバーワンの日本食は

和服を着て浅草寺の境内を散歩していた台湾人カップルから、仲見世で買い物する母親に連れられたアメリカ人の女子小学生、おみくじを引いたら「末小吉」が出たというフィリピン人男性まで、「おいしかった日本料理」を尋ねたら、皆、真っ先に「ラーメン!」と答えたのだ。

インドネシアから来たという若い女性の2人組も、やはり「ラーメンがおいしかった」と言う。

ちなみに、インドネシアは国民の9割弱がイスラム教徒の国。戒律が厳しく、正当な手続きを踏んで提供される「ハラール食」しか口にしてはならないという。彼女たちも頭にヒジャブを被るイスラム教徒だ。

「日本のラーメンはハラール食なんですか?」と尋ねたところ、「普通の店はダメだけど、東京には何件か、ハラール認証店があるんです。そこで食べました」

値段は割高だが、戒律を破らずに、おいしいラーメンが食べられるとあれば納得できるという。かように、日本のラーメンは今や「国民食」の枠を超えて、世界中で愛されているのだ。では、外国人観光客は、どの店に行っているのだろうか。

「うまかったけど、店名は覚えてない」(オーストリア人とイギリス人のカップル)という答えも少なくなかったものの、全国展開する『一蘭』の名を挙げる人が多かった。実際、各地の店舗では、観光客で行列ができていることが多い。どのようにして人気に火がついたのか。『一蘭』の広報担当に聞いてみた。

「最初は、“ラーメンがおいしい”という評判が、口コミで広がっていき、その後、SNSブームと相まって、多くの方に知っていただけたのではないかと認識しております。中国や韓国、台湾などアジアの方をはじめ、ヨーロッパ、アメリカのお客様も近年、多くご来店いただいている印象です」

人気の秘訣を尋ねると、「一番は味」と胸を張る。

「なんば御堂筋店(大阪)では、100%とんこつ不使用ラーメンを提供しております。さまざまな事情で豚を口にすることができない方にも、楽しんでいただきたいとの思いから開発しました」(前同)

■“爆買い”は減少して――

また、券売機やオーダー用紙などの表記は、日英中韓の4か国語にするなど、企業努力が功を奏した面もあるようだ。

では、かように日本での食事を楽しんだインバウンド客は、おみやげに何を買って帰るのだろうか。

「日本みやげ」で想起するのが、中国人観光客による「爆買い」だろう。家電や薬品などを大量に買い込むさまが、一時、話題になった。しかし、実際に浅草のドラッグストアで話を聞いたところ、仰天の証言が。

「インバウンドのお客さんもよくお越しになりますが、普通に頭痛薬や化粧品を買っていかれるだけで、最近は特に“爆買い”なさることはありません」

中国人の旅行会社経営者が、裏事情をこう説明する。

「日本製品をまとめ買いする代行業者がたくさん生まれて、以前のように中国人が買い出しに来る必要がなくなったんです」

また近年、中国政府は団体ツアー客の出国を厳しくし、一方で日本政府も旅行代理店経由で納税証明を求めるようになったことから、納税していない高齢者や、低所得者は入国ビザを取得できなくなったという事情もあるという。

「そのため今、来日する中国人は、中間層から富裕層。ツアーではなく個人旅行が増えました」(前同)

かつては東京、京都、富士山などに集中していた訪問先も、変化している。

「先日、私が案内したお客さんは、何度も日本に来ているので、今回は通訳と運転手を雇って、長野県を回りました。食事するところも、それぞれの土地で、それなりの店に行きます」(同)

さらに、こんな買い物も。

「不動産の下見をする人も多いです。中国政府の締めつけに嫌気が差し、日本に移住することも考えているようですね」(同)

国が違えば事情も違う、インバウンド観光客。上手に付き合えば、日本にとって大きなビジネスチャンスになるのかもしれない。

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