医療機関と行政がタッグ組み“女性のための医療機関”をオープン!妊婦健診だけでなく幅広い女性の診療に期待【鹿児島発】

人口が1万2000人余りにまで減少した鹿児島・垂水市。1年間に生まれる赤ちゃんの数は2023年度に過去最低の36人となってしまった。その垂水市で子育ての充実や住みやすいまちづくりを目指し、行政と医療機関が手を取り合って1つのクリニックが誕生した。

院内は柔らかく優しい雰囲気

2024年4月、「垂水サテライトクリニック」が開業した。

垂水市内には、これまで産婦人科の病院がなく、婦人科診療や妊婦健診などは、自己負担で市外の病院まで足を運ばなければならず長年の課題となっていた。

垂水市では市民にニーズ調査を行い、2022年、鹿児島県内で総合病院や介護施設などを運営する公益財団法人慈愛会と包括連携協定を締結した。行政と医療機関がこのような協定を結ぶのは鹿児島県内初のケースで、協定に基づいて誕生したのがこのクリニックだ。

この女性専用クリニックの内装は、ピンクや木目を基調とした柔らかく優しい雰囲気になっている。また、待合室はカーテンで遮断され、プライバシーも配慮されている。車椅子やストレッチャーでも診察できるように、通路や診察室が広々としているのも特徴だ。

早期発見・治療が「社会の利益」に

垂水サテライトクリニックの貴島佳子院長は、「(これまで)我慢していた症状も、(このクリニックが)近くにできたからということで、受診のきっかけにしてもらえる。今まで産婦人科を受診したことがなかった人も受診してくれたことがうれしかった」と、悩みを抱えている女性が受診するきっかけになれたことは光栄だと語る。

貴島院長は普段、鹿児島市にある系列の総合病院に勤務していて、院長を含め3人の医師が毎週、火曜と木曜にこのクリニックで診察に当たっている。

「妊娠34週までの妊婦健診」や「産後のケア」といった産科の診療をはじめ、思春期から老年期までの全ての女性を対象にした婦人科診療も行っている。ちなみに診療は事前予約制だ。

貴島院長は「近くにあるから行ってみようかな」「隙間時間があるので行ってみようかな」ということで早期発見、早期治療につながれば「その人の人生だけでなく、その人の家庭、社会全体、垂水市全体にとって利益があることだと思う」とクリニックの存在意義を語った。

身近に産婦人科があるという安心感

垂水市民もクリニックができたことで、子育てなどの負担が減ると感じているようだ。

隣接する鹿屋市で出産し、妊婦健診をしたという女性は「行き帰りだけで2時間弱だったのですごく大変だった」という。それだけに「近くにできたのでありがたい」と笑顔で話してくれた。他にも「自分のことは後回しにしがちなママたちが多いと思うので『ちょっと困ったな』という時に近くにあるのは心強い」と話す人もいた。

行政もこのクリニックに注目している。垂水市役所の永田正一保健課長は「身近に産婦人科があるというのは大きな安心感につながる。垂水市内外問わず、多くの人に利用してもらえる医療機関になってほしい」と期待を寄せた。

新たに誕生した女性のためのクリニック。
子どもを産み、育てやすい垂水市を実現するために、その役割が大きく注目されている。

(鹿児島テレビ)

© 鹿児島テレビ放送