『鬼滅の刃』「柱稽古編」が描いた悪夢のはじまり 無惨への憎しみに溢れた耀哉の最期

TVアニメ『鬼滅の刃』柱稽古編第8話「柱・結集」が放送された。注目度の高さから言っても今期もっともアニメファンを唸らせた作品であることは疑いようがないが、1時間スペシャルの最終回をもって柱稽古編の幕を閉じた。

振り返れば、放送前には原作でも短いとされる「柱稽古編」をどのように描き切るのか、そしてどこまで描くのかに注目が集まっていたが、結果的には無限城までの手前と区切りの良いラストとなった。柱稽古編は決して大きな出来事が起こるわけではない章だが、一人ひとりの柱を深堀りしながら、鬼殺隊士との関係性を丁寧に描いていており、強く印象に残るものとなった。後述するが、続編は映画『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』三部作として公開されることが発表されており、まだまだ鬼滅は私たちを楽しませてくれそうだ。

前回のラストシーンで描かれた無惨が産屋敷邸に侵入するところから本編が始まった。スタッフクレジットを挟みながら、じっくりと無惨が闊歩するシーンを描く手法は実に映画的。耀哉が無惨に対し、弱々しい口ぶりで語りかけるシーンは森川智之のリアルな息遣いが感じられる素晴らしい名演だった。無惨が屋敷に来た時点で、すでに自分の命はここで終わりであることは悟っている。それでも、「永遠というのは人の想いだ。人の想いこそが永遠であり、不滅なんだよ」と無惨を諭し、人の想いやつながりを理解できない無惨に「君が死ねば全ての鬼が滅ぶんだろう?」とクリティカルな言葉を投げかける耀哉の強い信念には感情が動かされた。

言いたいことを言い終えた耀哉は自らの死を覚悟する。その時、屋敷は一気に溢れんばかりの炎に包みこまれる。原作では見開き1ページを使って、一瞬の爆発を描いていたが、アニメではCGを用いて爆発がじわじわと屋敷を破壊していく様を描いていた。安直な言い方にはなってしまうが、CGとは思えないリアリティのある炎の描写は最終回にふさわしいクオリティになっていた。

耀哉による家族を犠牲にした奇襲は無惨に大ダメージを与えることはできたが、無惨の再生能力をもってしては無意味だった。だが、耀哉はその先のことを考えていた。血鬼術によって無惨の体を固定し、目くらましの血鬼術で無惨の目の前に現れたのは珠世。耀哉に協力した珠世は鬼を人間に戻す薬を無惨の体に入れることに成功し、掛け声とともに悲鳴嶼が現れ、無惨の首を斬る。耀哉は首を斬っても死なないことは当然考慮に入れており、無惨を倒す唯一の方法として太陽の光を浴びせることが最善であることを理解していた。つくづく耀哉は思慮深い男だと思わされる。と同時に、悲鳴嶼との回想シーンからは彼がいかに柱から慕われる存在であったのかも伝わってきた。

悲鳴嶼と珠世のおかげで時間を稼ぐことに成功し、無惨のもとに柱たちが集結。追い詰めたかと思われたが、突如として床に扉が現れ、全員が飲み込まれてしまう。無惨は「これで私を追い詰めたつもりか? 貴様らがこれから行くのは地獄だ!!」と炭治郎に向けて言い放つと、炭治郎も「地獄に行くのはお前だ無惨。絶対に逃さない必ず倒す」と吐き捨てる。

ここで柱稽古編の本編は幕を閉じたが、この先こそが本当の“悪夢のはじまり”だ。いくつもの犠牲が生まれ、何を手にするのか。映画『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』でいよいよ完結することになるが、続きを見届けたいような見届けたくないような複雑な気持ちが渦巻いている。公開日は未定となっているため、それまでに心を落ち着かせたいと思う。
(文=川崎龍也)

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