家庭用蓄電池の新製品「EcoFlow DELTA Pro 3」発売、4kWhの大容量でEVスタンドでの充電にも対応

EcoFlow Technology Japanは、誰もが手軽に節電を実現できる家庭用蓄電池とうたう新製品のEcoFlow DELTA Pro 3を6月25日に発売した。4kWhの大容量バッテリを内蔵し、2台のエクストラバッテリと連結すると12kWhまで増量が可能だ。

シルバーを基調とした流線型設計のEcoFlow DELTA Pro 3

太陽光発電の買取価格は年々減少している

再生可能エネルギーの利用拡大のため、2025年から一部の地域では新築住宅に太陽光発電システムの設置義務化が予定されている。太陽光で発電した電力は自家消費に回したり、売電したりすることができる。この売電では、09年から開始され、国が決めた価格で電力会社が購入する固定価格買取制度(FIT)がある。

住宅の太陽光発電システムは一般的に屋根に設置する

買取価格自体は年々減額されており、さらに固定価格での買取期間は家庭用太陽光発電の場合、10年と決まっている。この固定価格での買取期間が終了した状態を卒FITと呼ぶ。2023年にこの卒FITの累計件数は165万件にも達し、今後の卒FIT件数はさらに増加していく。

買取価格が大きくダウンする卒FIT後の選択肢としては、1)売電価格が下がってもそのまま維持、2)売電する電力会社を変更する、3)売電せずに自家消費に回す、の三つがある。1)と2)については、FIT適用期間よりも確実に売電価格はダウンする。となれば、3)が現実的な選択肢であるといえるだろう。

固定買取価格が下がる中で卒FITの件数は増加していく

基本的に電力はためておくことができない。発電した電力を自家消費に回せるのは、実際に発電しているとき。つまり、太陽が出ているときだけである。電力をためて、必要なときに取り出すには蓄電池が必要となる。

一般家庭で電力をためておく機器が家庭用蓄電池。家庭用蓄電池の市場は年々拡大しており、ある調査によると2023年の家庭用蓄電池の市場規模は約1200億円。直近6年間で市場規模は1.5倍に拡大したと推計されている。

家庭用蓄電池の市場規模は徐々に拡大している

しかし、家庭用蓄電池は決して安価な製品ではなく、蓄電する容量にもよるが価格は数百万円というレベルだ。また、据え置きのため、外に持ち出して使用することはできず、増設自体も簡単にはできない。

増えていく卒FITに対して、自家消費でネックとなる家庭用蓄電池の価格や将来を見越した容量の増設という課題を背景に開発したのが、EcoFlow DELTA Pro 3(以下、DELTA Pro 3)だ。

13の出力ポートと6通りの充電方法に対応

DELTA Pro 3はリン酸鉄リチウムイオンバッテリを搭載し、容量は4096Wh。搭載しているバッテリは性能アップにより4000回の充放電を繰り返しても初期容量の80%を維持し、1日で容量をすべて使い切ってからフル充電をしたとしても約11年間使用できるという。

定格出力は3600Wで、瞬間最大出力は7200W。100Vと200Vにも対応しており、AC(交流)に加えてDC(直流)の出力ポートも備えているため、家庭内のほぼすべての家電に電源供給が可能だ。ただし、AC100Vと200Vの同時使用はできない。

AC100Vの出力ポートは15A・20A兼用が四つと30Aの引掛型が一つ。AC200Vでは単相2線で15A・20A兼用と単相3線で100Vにも対応した30Aがそれぞれ一つ。DCの出力ポートは一般的なDC5521とアンダーソンの二つ。さらにUSBポートではtype-Aとtype-Cが二つずつで、type-Aは急速充電に対応している。

13の出力ポートで幅広い機器に給電が可能

充電に関しては、独自の充電技術であるX-Streamによって高速充電を実現。充電の方法はAC充電とソーラー充電、EVスタンド充電、ガソリン発電機、車のオルタネーター充電とシガーソケット充電の六つに対応している。

AC100V 1500Wの充電ではバッテリ残量0%から150分で80%まで充電ができる。レベル2のEV充電スタンドから3600Wでの充電では残量0%からわずか65分で80%まで充電し、フル充電までの時間は94分と非常に短時間で充電ができるという。

出力インターフェースの反対側に入力インターフェースを配置して6通りの充電方法に対応

エクストラバッテリと連結すると最大12kWhまでの拡張に対応

DELTA Pro 3はバッテリ容量が約4000Whだが、専用のエクストラバッテリと連結させることで容量の拡張が可能。連結はスタッキング(積み重ね)のため、接地面積は全く変わることがなく、2台のエクストラバッテリと連結すると容量は12kWhで、超大型の蓄電池システムになる。

すでに太陽光発電を導入しているが蓄電池は設置していないという家庭であれば、エクストラバッテリと連結して電力をためることにより節電効果が大きく向上する。

3人世帯の平均的な電気代は太陽光発電+DELTA Pro 3の拡張で大きく低減することができる

また、EcoFlowアプリを使えばDELTA Pro 3のバッテリ残量や使用可能時間などをスマホで確認することができ、各入力ポートからの充電状況や接続機器の遠隔制御も可能だ。

切替分電盤を使用して既設の太陽光発電システムにも導入が可能

前述のとおり、DELTA Pro 3は13の出力ポートを備えており、200V対応のポートも付いている。しかし、家庭内には照明器具やビルトイン機器など、電源プラグが露出しておらずDELTA Pro 3と直接接続できない家電製品もある。

照明器具やビルトイン機器などは電源プラグが露出していない

これらの機器に対しては、分電盤に切替分電盤をバイパスで接続することで対応が可能だ。例えば、すでに電力会社と系統連携して太陽光発電で発電した電力を売電しているというケースでは、分電盤に切替分電盤をつないでDELTA Pro 3と接続すると、系統連系システムに変更を加えることなく従来どおり売電をしながら蓄電池への充電や機器への給電も行える。

太陽光発電による電力を売電せずに自家消費に回しているケースの場合は、太陽光パネルとDELTA Pro 3を直接、接続。上記と同様に切替分電盤を用いることで、太陽光パネルで発電した電力をDELTA Pro 3で蓄電し、機器への給電を行える。

DELTA Pro 3は既設の太陽光発電システムでも特に大きな変更を必要とせず使用が可能

切替分電盤は簡単な施工が必要だが、DELTA Pro 3と接続することで前述の照明器具やビルトイン機器への給電も可能となる。さらに突然の停電時でもパススルーで常時接続している機器に対しては、停電後10ms以内に自動で電力を供給する停電対策機能を搭載。また、据え置き型の家庭用蓄電池と異なり、本体底にタイヤが付いているため移動や屋外への持ち出しもできる。

DELTA Pro 3は持ち出し可能でポータブル電源としての使い方もできる

大容量で高性能のDELTA Pro 3の販売価格は53万9000円で、専用エクストラバッテリは39万6000円。オプションでは卒FIT後の家庭におすすめというDELTA Pro 3と専用エクストラバッテリに切替分電盤を加えたセットが104万5000円。手軽に節電を実現するDELTA Pro 3と400Wソーラーパネルのセットが66万5500円だ。

6月25日からEcoFlowの公式オンラインストアやAmazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングの公式ストアで販売を開始。オフラインでは8月1日からヤマダデンキやヨドバシカメラ、ビックカメラ、コジマなどの家電量販店で販売する予定だ。

従来の家庭用蓄電池と比べて低価格かつ高性能で、電気代の削減や充電・給電時の操作性に優れ、停電時の電力バックアップや屋外・レジャーなどでの使用とマルチパーパスに対応したDELTA Pro 3。これまでの家庭用蓄電池のイメージを大きく変える製品だ。

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