「公費解体」6000件の申請で完了は2.6パーセント 「地元に業者が少ない」 能登半島地震から半年

ことしの元日に発生した、能登半島地震。多くの人の命や生活が奪われたあの日から半年です。なかなか復興が進まない被災地の現実を取材しました

【吉原功兼キャスター 6月28日】「大規模な火災が発生した輪島朝市に来ています。震災から半年がたちましたが、まだその火災の激しさは大きな爪痕として残っています」

ちょうど半年前、年の始めに能登半島を襲った最大震度7の大地震。関連死を含めると、現在確認されている犠牲者の数は299人にのぼります。

大規模な火災が発生した輪島市の朝市は、甚大な被害を受けた場所のひとつです。

【吉原功兼キャスター】「がれきがまだたくさん残っています。重機が入ったことによってがれきが集められている状況です。ただ倒壊した建物、そして被害があった建物の残骸というのは今も残っています」

■いつ倒れてもおかしくない危険な建物 半年たった今も多く残る

半年がたち、崩れた建物の解体作業はどこまで進んだのか?地元で解体業を営む方に、話を聞きました。

目の前には、車道側に向かって傾く建物がいまだに残されていました。

【鍜元重機 鍜元裕社長】「(この建物の被害の程度は)全壊です」

【吉原功兼キャスター】「通りに面してせり出すような形ですね。大変危ない状況だと思います」

【鍜元重機 鍜元裕社長】「電話線が2階のあたりにあるんですけど、そこに当たって止まっている状態。電話線が切れれば向こうへ倒れるかもしれない」

【吉原功兼キャスター】「いつ倒れてもおかしくない状況ですが、それでも発災から半年近く解体することができなかったんですか」

【鍜元重機 鍜元裕社長】「はい。そうですね」

■「公費解体」輪島市6000件の申請のうち作業完了は2.6%

壊れた建物を自治体が取り壊す「公費解体」については、輪島市で現在約6000件の申請があるのに対し、作業が完了したのは、そのうちわずか2.6パーセントにとどまっています。その理由は何でしょうか。

【吉原功兼キャスター】「これから、公費解体のペースを上げていきたい中で、どういうことが課題になりますか?」

【輪島市企画振興部 山本利治部長】「地元には解体業者の数が少ない。市外、場合によっては県外の解体業者に来てもらわなければいけない。中長期こちらに滞在するということになると、宿泊施設とか活動拠点施設が必要になる」

さらに、解体に伴う騒音や揺れによって、近隣住民とのトラブルを招くケースもあり、作業の進捗を遅らせているということです。

専門家は、津波対策などと同様に、スムーズに公費解体を進めるための事前の準備が必要だったのではないかと指摘します。

【京都大学防災研究所 矢守克也教授】「津波避難情報をどう伝えますか、避難所の運営をどうしますかという問題と比べて、(公費解体は)認知度が低いです。自治体としても(公費解体の流れを)計画に入れていかないと。正直そこまでいっていない。避難所運営をどうするかということで、手一杯な感じ」

■「最後の1軒まできれいにして、皆さん帰ってくる場を作る」

鍜元さんの会社では、現在8つの建物の解体を同時に進めています。

あの日を境に大きく景色が変わった、大切な街を思いながらの作業が続いています。

【鍜元重機 鍜元裕社長】「発災のときから、自分のこの仕事は地元に対して絶対必要だと。最後の1軒まできれいにして、皆さん帰ってくる場を作ってあげないと、とは思って頑張っています。解体する部分がなくなったら帰って来る人がいて、どこまで復興するか」

半年前には、この場所にあった日常。それを取り戻すことができる日を、近くに感じることは、まだできません。

(関西テレビ「newsランナー」 2024年7月1日放送)

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