PC向け「Snapdragon」が本格展開、モバイルのメリットを活かすクアルコム

by 北川 研斗

クアルコムのパソコン向けチップセット「Snapdragon X Elite/X Plus」を搭載するパソコンの本格的な展開が始まった。すでに一般消費者向けに複数の製品が発売されているほか、法人向けにも夏~秋にかけてSnapdragon搭載のパソコンが登場する。

左からMM総研 中村氏、クアルコムジャパン 中山氏、同 マーケティング統括部長 泉宏志氏

消費電力・性能にメリット、互換性も確保

クアルコムはこれまで、チップセット「Snapdragon」をスマートフォンなどに向けて供給しており、主にモバイルネットワークにつながる携帯機器向けの市場を主戦場としてきた。クアルコムジャパン 中山泰方副社長はこれまでのx86アーキテクチャーを採用したノートパソコンについてバッテリーライフの短さやWi-Fi接続を前提にしていると説明。

一方で、スマートフォンに代表されるクアルコムが長年手掛けてきた分野の製品は、電源がなくても丸1日使うことができ、モバイルネットワークへの接続はもちろん、AI処理用のNPUも搭載しており、パソコン向けのSnapdragonにはこのようなモバイルの考え方が取り入れられている。

最上位モデルの「Snapdragon X Elite」は、インテルの「Core Ultra 7」との比較でシングルスレッドにおけるパフォーマンスが最大54%高く、ピーク時の電力消費量は最大65%低いとその性能をアピールする。マルチスレッドにおいても同じく最大37%性能が高く、消費電力は54%低いという。アップルの「M3」との比較でも高い性能を誇るとして、クリエイティブ関連のパソコンユーザーも恩恵を受けやすい。バッテリーライフは最大で2倍の長さになるケースもあるとされる。

AI関連の処理に用いられるNPUも備えており、Snapdragon X Elite/X Plusはクラス最高性能とする45TOPSを発揮し、マイクロソフトが定義する「Copilot+PC」の40TOPS以上という要件を満たす。中山氏によれば、同社のファンクラブ「Snapdragon Insiders」でも今後、Snapdragon X Elite/X Plusの登場を記念してキャンペーンを用意するという。

28年度にかけてAI対応のパソコンが普及

Snapdragon搭載モデルを含む、AI活用を前提としたパソコンの普及予測として、MM総研では2023年度~2028年度にかけて大きく普及すると見ている。

MM総研 取締役研究部長の中村成希氏はその年平均成長率は120%になることを見込むと説明。Windows 10のサポートが終了する2025年度にひとつの波が起きて以降は、AIへの需要が買い替えを牽引して、徐々に安定的な拡大を見せていく可能性を示した。

企業のAI活用の意向は、AI人材を獲得できているかどうかに左右される傾向にあり、人材に投資しやすい規模の大きな企業がAI活用の意向が高いと中村氏は説明する。AI対応のパソコン市場の活性も従業員1000人以上の大企業が牽引するとみられている。

2028年には70%ほどがAI対応のパソコンになるとされる。Snapdragon X Elite/X Plus搭載製品は一般消費者向けにもすでに日本でも発売されている。今後、法人市場でもデルやHP、レノボ、マイクロソフトなどから新製品が登場する見込み。

© 株式会社インプレス