【選挙ポスター問題】貼る位置が高すぎて訴訟へ、現職が偽造……都知事選だけじゃなかった!選挙ポスターにまつわる今昔物語

今回の東京都知事選は今までの選挙では見られない驚くべきことが複数起きており、この点でも世間の注目を大いに集めています。この中でもポスター掲示場の板に入りきらない候補者がいるなど、選挙ポスターに関する話題は特に注目を集めています。今回は過去にあった選挙ポスターにまつわる話をいくつか紹介します。

2枚のポスターを組み合わせてはいけない

出典:1968年11月13日付朝日新聞

ポスターに関するルールはあまり多くありませんが、ポスターの最大サイズは公職選挙法で規定されており、無制限に大きなポスターを作ることはできません。しかし、2枚の異なる規定サイズ以内のポスターを作り、それを組み合わせて掲示するということが過去に流行ったことがありました。このことが公職選挙法違反になるのかという裁判になったことがあります。

この組み合わせたポスターをめぐって裁判になったのは1966年の兵庫県の川西市長選でした。伊藤龍太郎という当選した候補の陣営は図に示したように組み合わせることで顔になる2種類の規定サイズ以内のポスターを作成し、これを組み合わせて市内各所に掲示しました(当時は定められたルールを守れば、ポスターを様々な場所に貼ることができました)。このことについて、サイズのルール違反では、ということで裁判となり、地裁では無罪になったものの、最終的に2種類のポスターを組み合わせて新たな1枚のポスターが生じると判断され、組み合わせポスターは違法との判決が下ったのです。

現職都知事が偽造!証紙集めがブームに!?証紙をめぐる昔の大騒動

実際の証紙(一部画像を加工しています)

現在は選挙ポスターは指定された掲示板にしか貼ることができない選挙がほとんどですが、前述したように過去にはルールを守ればポスターを色々な場所に貼ることができました。このルールの1つにポスター枚数の制限があります。この枚数管理の方法の1つに選管が定められた数のポスター証紙を各陣営に渡し、これをポスターに貼らないと掲示ができないというものがあります(今回の都知事選でも確認団体のポスター※でこのような証紙を見ることができます)。
筆者注※確認団体は候補者ではないため、ポスターに具体的な候補者名や写真、似顔絵を掲載することはできませんが、確認団体のポスターは候補者を推測できるような文言や候補者のシルエットと思われる画像を掲載していることが多いです。

しかし、制限を超えてポスターを貼ろうとして証紙を偽造したという事例が複数あります。
例えば1963年の東京都知事選では現職の東龍太郎陣営が組織的かつ大規模なポスター証紙偽造を行ったことが発覚し、これに関わった複数の人が有罪になりました。また、この選挙ではポスター証紙偽造事件を筆頭に様々な不正が発覚したことで選挙無効の訴訟を起こされましたが、こちらは選挙有効との判決が下っています。

他の証紙絡みの犯罪としては敵対候補の貼ってあるポスターの証紙をはがすという政治的な意図を持った妨害的なものから、子供たちの中でポスター証紙集めが突然流行りだしてしまい、次々と無差別に証紙がはがされてしまったという非政治的なものもありました。

「ポスターを貼る位置が高すぎる」で訴訟に!その判決は?

ポスター掲示板にポスターを貼る際には好きなところに貼っていいわけではなく、届出番号で指定された位置に貼らなくてはいけません

1983年の東京都知事選ではこのポスターを掲示する場所が高すぎるという理由で裁判になったことがあります。ある候補者が、ポスター掲示板の自分の割り当てられた位置が高いところにあり、飛び上がるくらいのことをしないとポスターを貼ることができないと主張して賠償を求めたのです。これについて様々な検証が行われたようですが、最終的にそれほど高さのない踏み台を使えば貼ることができるということで訴えは認められませんでした。

しかし、この候補者はこの訴えと同時にポスター貼りの最中に東京都が掘った小さな穴に足を取られて転んでケガをしたという訴えも起こしており、こちらの方は認められて治療費や通院費など3万円を都が支払うようにという判決が出ています。

ポスターの内容が有罪になった事例は?

ポスターは指定されたサイズ以内で掲示責任者を記載するなどのルールを守れば基本的にどのような内容でも掲示することができるとされています。しかし、どんなことをしても罪に問われないというわけではありません。

ポスターの記載内容が原因で罪に問われることもあるのです。一番多いのはポスターの記載内容に虚偽があったパターンです。これは公職選挙法で当選を目的として身分、職業、経歴、政党や政治団体の所属などについて虚偽事項を公表すると罪になることが規定されており、ポスターにこのような嘘を記載した場合、当然ながら罪に問われることがあります。

また、2023年に行われたある選挙では、選挙ポスターを勝手にはがすと罪になることや警察が選挙期間中は基本的に選挙ポスターに手出しできないことを利用して、候補者でもない一般の他者の名誉を棄損するような内容をポスターに記載し掲示したとして、そのポスターを掲示した候補者に地裁で有罪判決が下ったという事例もあります。

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