【能登半島地震 半年】変わる防災意識…備えのポイントは“3日間” 日頃の「ちょっとした備えへの意識」が重要

新潟地震の発生から2024年で60年。この60年で高まったのが人々の防災意識だ。発生から7月1日で半年を迎える能登半島地震の際にも注目された防災グッズ。いまは様々な防災グッズが開発されているが、備えておくべき物とは何なのか、そのポイントを取材した。

「起こらない」と思われていた?60年前の防災意識は…

1964年6月16日に発生した新潟地震。

下越沖を震源とするマグニチュード7.5の揺れが新潟県などを襲い、津波や液状化などの被害も拡大した。

しかし、当時の記録には、浸水する街の中、荷物を抱えて避難する人や給水車に殺到する人たちの姿が残されていた。

当時の人々の防災意識について、新潟大学災害・復興科学研究所の卜部厚志教授は「保険も火災保険しかなかったように、訓練などの防災意識は地震よりも火災に着目されていた」と話す。

また、1923年の関東大震災を念頭に、次のように指摘した。

「近代の日本で、太平洋側では地震が起きるということが知られていたが、新潟地震は“日本海側でもこんなに大きな地震が起きるんだ”ということを知らしめた災害。そのため、地震というのは特に新潟では起こらないと、たぶんみんな思っていたので、やはり“備えの意識”が根本的には違うと思う」

変わる防災意識…備えのポイントは“3日間”!

私たちの防災意識は、60年をかけて変わってきている。

長岡市の「長岡震災アーカイブセンターきおくみらい」には様々な種類の食品類、懐中電灯や色々な形のヘルメット、さらには簡易トイレなどの衛生用品と多種多様な防災グッズが展示されていた。

2024年1月の能登半島地震を受けて改めて注目されている防災グッズ。最低限必要な備えとは何なのだろうか。

きおくみらいを運営する中越防災安全推進機構の赤塚雅之マネージャーが指摘するのは、“3日間生き延びる”ための備えだ。

「災害支援物資が手元に届くまでの期間には、どうしてもタイムラグがある。それがおおむね3日と我々は考えている」

【水】1日3リットル…3日分で9リットルの備蓄を

飲料用と調理用だけで一人当たり1日3リットルの水が必要と言われている。最低3日分、つまり9リットルの備蓄が必要になる。

そのほかにも生活用水として手を洗ったり、トイレを流したりするため、30リットルの備蓄があると安心だという。

お風呂の浴槽に水を貯めておくのも、生活用水の備えになる。

【食料】最低3日~1週間分 ローリングストックも

災害発生から1週間は店頭などで手に入らないことが想定されるため、最低3日~1週間分を備蓄しておくことが大切。

いまは防災食も充実しているが、普段から3日分以上の食料を蓄えておき、使った分を足す「ローリングストック」も備え方の一つだ。

また、カセットコンロを用意しておくと、ライフラインが止まっても温かいご飯を食べることができる。

赤塚マネージャーは「家族で暮らしている家庭では、最低でも3日間くらいの食料は、家のキッチンなどにある物を何らか組み合わせてできてしまうことが多いと言われている。そのため、そこまで一生懸命に、改めて全部買い揃える必要はもしかしたらないのではと思っている」と話す。

避難所生活を想定した準備も

長引く避難所生活では体をあまり動かせないほか、いつもと違う環境で体に負担がかかることも想定される。

血行不良により引き起こるエコノミークラス症候群の予防には、弾性ストッキングが役立つ。また、普段使っている薬を準備しておくなど自分の体調に合わせた備えも大切だ。

ウエットティッシュは、水がなくても食器や手洗いをする代わりになる。また最近は、少量の水で最低限の衣服を洗うことができる洗濯キットも販売されている。

「すべての防災グッズに言えることだが、“災害が起こったときに備える”という物は、実はそれほど種類が多くない。普段使いをする中で、“もしも災害が起こったときに役に立つ”みたいな物も、最近はすごく増えてきている」

赤ちゃんを守るための備えは?

小さな子どもを持つ家庭は、子どものことも考えた備えが必要となる。特に、人の助けが欠かせない乳児については、一層の配慮が求められる。

大人の水・食料と同様に、最低3日分の備蓄が必要。おしりふきは全身を拭いたり、ウエットティッシュとしても使えるため便利だ。

避難する際に便利なのが「抱っこひも」で、両手が使えることもメリットの一つ。ベビーカーでの避難は道が通れなかったり、粉じんを吸ったりする恐れがあるため、注意が必要となる。

母子手帳や保険証も普段から持ち歩くようにし、避難用のバッグにはコピーを入れておくと安心だ。

内閣府では「あかちゃんとママを守る防災ノート」という、赤ちゃんとお母さんの防災についてまとめたパンフレットをネット上で公開している。

この中では、普段の備えとして次のようなことも大切だとしている。

▼ハザードマップで避難所や災害時の拠点病院などを確認しておくこと

▼周囲の支援が必要な場合もあるので、顔見知りを増やすためにも日頃から地域の防災訓練やイベントに参加すること

赤塚マネージャーはさらに「一番は子どもの年代に合わせて、乳幼児であれば紙おむつやベビーフードなどを備蓄する。これは大人だけの家庭では用意がないもの。それをもう少し災害の時に備えて、普段から準備しておくことで補えるのではないかと思う」と話す。

大事なのは“ちょっとした”備えへの意識

様々な防災グッズが開発され続けているように、災害への備えに終わりはない。こうした中、赤塚マネージャーが訴えるのは、普段からの“ちょっとした”備えへの意識だ。

「地震・水害・災害に備えて、防災備蓄物資を準備するに越したことはないが、なかなかそのためのスペースや費用面を考えると、一歩踏み出しづらいところはあるのではないかと感じる。そういう人たちに、“ちょっと”意識を変えてもらって、3日間くらい何も手に入らない状態でも自分の家にあるもので生き延びられるだけの準備をしてほしい。家庭の中でぜひ相談をして、揃えてもらうのが恐らく一番良いのではないか」

いつ起きるか分からない災害に備えて、必要なものを改めて家族と話し合ってみてはいかがだろうか

(NST新潟総合テレビ)

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