「頼んでいるけど来てくれない」一時孤立した被災地で今も続く停電・断水 能登半島地震から半年

「こっちまで手が届かない」一時孤立した集落の今

輪島市の市街地から10キロほど離れた西保地区。いまだ水も電気も使えず、住民の姿もほとんど見られません。この集落は地震後、道路が寸断され2週間以上にわたって孤立状態となりました。

住民
「だってみんな仮設住宅に入ったりしてここはもうほとんどいないがいね」

妻と2人で地区に残る小橋敏雄さん(79)。

小橋敏雄さん
「(電気は)全然つかん。一回(6月)10日ごろに来て、いや予想外に早いと思って2日か3日喜んで、来たと思って…」

先月、一度停電が解消しましたが、落石でケーブルが再び傷つけられ、また電気が使えない生活に。さらに地震から半年がたったいまも断水は解消していません。

小橋敏雄さん
「嫌になる。遅い遅い、全然なっとらん何も。輪島(の市街地)見たらこっちまで手が届かない。頼んでいるけど来てくれない。こっちはどうでもいいんだ、孤立しているからもう」

公費解体各地で進むも遅れに懸念…突然倒壊する住宅

一方、大規模な火災に見舞われた輪島市中心部の朝市通り周辺。先月5日からようやく、建物の公費解体が始まりました。

しかし今、公費解体の遅れが被災地のいたるところで形になって現れています。

地震から半年近くたち、これまで持ちこたえていた建物が倒壊するケースが相次いでいるのです。

能登町の酒蔵では先月24日、店舗1階部分が突然崩れ落ちました。公費解体を数日後に控えていた最中の出来事でした。

松波酒造若女将・金七聖子さん
「先日の余震、大きな地震とか雨も降ると本当危なくて、でみんな急いでみんな頑張って下さっているけどどうしても時間かかるので」

自治体のマンパワー不足も浮き彫りに 「綱渡りみたいな状況で」

輪島市環境対策課 友延和義課長
「我々本当に一生懸命頑張っているんですけどなかなか本当に難しい制度というか。ただ手をこまねいて遅らせるつもりは全くないのでなんとか1日でも早く解体が進むようにということで取り組んでいる」

輪島市では6月30日までに、6485棟の申請を受け付けましたが、解体が済んでいるのはわずか2%ほど、166棟にとどまっています。

6月3日の震度5強の地震以降、危険性の高い建物については、所有者の立ち会い無しに解体に取り掛かれる緊急公費解体を再開しましたが、作業が思うように進まない要因の1つはマンパワー不足です。

輪島市環境対策課 友延和義課長
「中長期派遣職員ということで20名要望している中で(来ているのは)11名。これまでも綱渡りみたいな状況で本当に人が来るか来ないか毎月悩みながらやっている」

特に不足しているのは、長期にわたって被災地に常駐し続ける職員。さらに追い打ちをかけるように、窓口での受付業務を担う短期の派遣職員は減るいっぽうで、他の職員の負担は日に日に増しています。

輪島市環境対策課 友延和義課長
「窓口がどうしても市民の方が来て頂いて待っていただくようなことがこれからは起こる可能性があるが、そこもこれからもまだ短期の方とか、いろいろなところにお願いして人はぜひ増やしてほしいところで要望は続けていく」

断水続く自治体では解体に課題 業者は倍にして対応を

公費解体が進まない原因は他にも。珠洲市蛸島町の工事現場、解体作業で生じるほこりは水で抑える必要がありますが、この地区も断水が解消していません。

業者
「今は水が無いのでなるべくほこり出ないように配慮しながらって感じですかね」

解体業者の調整役を担う中谷和浩さんは、4月に始まった公費解体も、道路事情の改善に合わせて、今後は業者の数を現在の倍近くに増やし、作業スピードを向上させたいとしています。

石川県構造物解体協会 中谷和浩さん
「今順調には進んでいるという認識は持っている、受け入れ態勢もようやく7月中に整いつつある、そしたら8月1日からは全力でみんなで解体やっていけるんじゃないかと」

一方で、同じ珠洲市内でも手つかずの地域もあります。珠洲市飯田町、海沿いの地域では津波による被害で解体が全く進んでいません。流されたがれきが辺り一面に散乱し、どの建物のものか分からない状態になっていて、所有者が特定できないままでは、公費での撤去は難しいのが実情です。

石川県構造物解体協会 中谷和浩さん
「空き地なのかよく分からないところに全部流れている。それは公費解体じゃないですよねと言われるし、僕もやっぱりそうだなと思う。どういう扱いをすればいいか。2か月前に同じ話題でえらい人たち(国)に相談したんですけど、いまだに結論出ていなかったので僕たちでは答えは出せないですね」

「話し相手いないと…」奪われた日常はいつ戻るのか

一方、半年が経った今も電気も水も無い西保地区。いつかまた、孤立してしまうのでは。住民はいまも不安を抱えています。

住民
「道路もね今のところほら、崖崩れとか険しいがいね。なんかあった場合ね、もし病気したりけが人が出た場合雨が降って、大雨でも降れば土砂崩れで孤立してしまうがいね。やっぱりその心配もあるし」

3月に2次避難先から戻って以降、集落で暮らし続ける小橋さん。生まれ育ったふるさとを愛する気持ちは変わりませんが、仮設住宅に移る決断をしました。

小橋敏雄さん
「海があるから良い、さっぱりするここに来れば。空気が違う。自分の生まれたところだから本当はここがいいけど、人間がいないから寂しくてダメ。1人か2人話し開いておらんと、頭おかしなるわ」

奪われた日常はいつ戻ってくるのか。あの日から半年が経った今も答えは見つかっていません。

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