水害対策、ハード整備道半ば 予算確保や用地交渉が難航 島根県 人口が多い県東部と「58豪雨」経験した西部で整備の進捗に差

 大雨による水害リスクが増す季節になった。島根県の河川整備によるハード対策は道半ばで、予算確保や用地交渉に時間がかかっている。当面の対策である監視カメラの増設や浸水想定区域の公表などソフト面の整備は2024年度に大詰めを迎える。

 21年7月の大雨で河川が氾濫し、雲南市や出雲市を中心に県内で床上浸水81棟、床下浸水611棟などの住宅被害が発生。23年7月も大雨が出雲市などを襲い、浸水被害が出た。

 県河川課によると、県管理河川は596あり、護岸工事など整備を終えたのは全体の32%にとどまる。予算確保や工事対象区間の長さ、用地交渉などが課題で、整備が一気に進まない現状がある。

 また、県内の整備率は死者・行方不明者107人を出した1983(昭和58)年の「58豪雨」を機に県西部の整備が進んだことで地域差が出ている。県西部が44%に対し、県東部が16%と低い。隠岐は78%となっている。

 県は、人口が比較的多い県東部市街地の浸水対策と近年の災害対応に重点を置き、22河川に改修予算の約8割を投入して事業を進めている。2024年度は、土木部の公共事業費(改良系)の18%に当たる99億3100万円を河川・ダムの改修費に充当。現時点で1河川が完了し、29年度までに8河川で終える予定だが、その他の13河川は見通せていない。

 整備が道半ばの中、県はソフト対策を進めている。21年の豪雨を受け、増設するカメラは24年度に出雲市内の5河川での設置により、県全体でカメラ73基、水位計106基の配備が整う。避難体制の整備や市町村のハザードマップに生かす洪水浸水想定区域は、県西部と隠岐は公表済みで、県東部は24年度中に完成する。

 県河川課は、サイト「島根県水防情報システム」で河川状況の映像を常時流しているほか、有事の際は水位をリアルタイムで観測し、市町村が避難指示を出す参考にしてもらう。同課の三原康一課長は「県民が危険を察知できるよう情報を充実させる」と話した。

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