「Jリーグじゃ抑えられない選手になりたい」マリノス内定FW塩貝健人が超えるべき壁「もう一度、地に足をつけてやっていく」

6月13日に開幕したアミノバイタルカップ。最終日に組まれた3位決定戦の慶應義塾大vs.国士舘大の試合前のメンバー表を見て驚いた。慶應大のベンチにFW塩貝健人の名前が載っていたのだ。

大学2年生ながら横浜F・マリノス入りが内定している塩貝は、横浜ですでにJ1デビューを飾り、初ゴールもマーク。今季は横浜に帯同することが多く、アミノバイタルカップ期間中も慶應大を離れて帯同しており、今大会は一度もベンチ入りをしていなかった。

それが突然のメンバー入り。0-0で迎えた51分にピッチに投入された。

国士舘大が塩貝にマンマークをつけるなど要警戒するなかで、塩貝はドリブル突破からゴールに迫ったり、CKのこぼれから決定的なシュートを放ったりと、存在感を見せつけた。

しかし、チームは79分に失点すると、終盤は塩貝のところにボールが行く機会が少なくなってしまい、そのまま0-1の敗戦。4位で今大会を終えた。

試合後のミックスゾーン。悔しさを滲ませた塩貝はこの結果をこう振り返った。

「今日の試合で途中から40分間出場して、点を取ることができなかったというのは、マリノスでも結果を残せていない自分に繋がっていると思います」

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ベンチ入りが決まったのは前日の夜のことだった。この大会が始まってからずっと横浜でプレーし、6月26日のJ1第20節・アビスパ福岡戦では71分から投入され、今季6試合目の出場を果たしていた。

だが、29日の第21節・東京ヴェルディ戦でベンチ外になったことで、急きょ翌日の3位決定戦への出番が訪れたという流れだった。

「出るからにはチームを勝たせたかったし、ゴールを決めたかった。何もできなかったという事実があるので、もう一度、地に足をつけて一からやっていきたいと感じました」

ピッチ上では獰猛なストライカーであり、ピッチ外でも強気な姿勢を打ち出す彼だが、悔しさを露わにしながらも、しっかりと自分にベクトルを向けながら言葉を紡ぎ出せるのが大きな魅力であり、賢さでもある。

塩貝は今の状況をどう捉えているのか。話を進めると、彼が積んでいる経験の価値をうかがい知ることができた。

「僕のポジションではアンデルソン・ロペス選手が出ていて、なかなかその代わりという役割を担えていないのですごく悔しいのですが、どんな状況でも地道にコツコツとやるしかないと思っています」

FWとしてビッグクラブである横浜に入るということは、能力の高い日本人選手に加え、特出した武器を持った外国人選手とポジションを争わないといけないことは明白だった。彼自身もそれを理解したうえで、覚悟を持って内定を決めている。

「4月にJ1リーグデビューをして、次の試合でスタメン出場してプロ初ゴールを奪って、順調なすべり出しだったと思うのですが、そこからなかなかポジションを奪い切るというところまで行っていない。

悔しさはありますが、上のレベルでやる以上、常に超えなければいけない壁は出てきます。でも、どれもいずれかは絶対に超えることができる壁だと思っているので、早いうちに悔しさも含めて経験をして、どんどん追い抜いて、もうJリーグじゃ抑えがきかないような選手になりたい」

なるべき姿を明確に捉え、その姿は絶対に見失わないという強い意志を持ちながら、目の前で起こることに対して目を背けずに受け入れる。だからこそ、横浜で最初に来たチャンスをモノにできたし、6月4日から14日にかけてフランスで行なわれたモーリスレベロトーナメントでも、U-19日本代表のエースとして初戦のU-21イタリア代表戦でハットトリックを決めるなど、5ゴールを叩き出して大会得点王に輝くこともできた。

「いつも良い準備をしておけば、急に呼ばれたり、チャンスが来たりしても、すぐに力を発揮できるはず。結果が出たり、最近試合に出られなかったり、今日のように大学でも結果を出せなかったりと、浮き沈みはありますが、相変わらずひたむきにやっていけば、本当にチャンスがあった時に掴めると思っているので、一喜一憂せずに準備していきたいと思います」

久しぶりの大学でのプレーを、塩貝は大きな価値に変えるだろう。次の爆発に向けて、日本の将来を照らす獰猛なストライカーは、ただひたすらにその牙を研ぎ澄ませる。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)

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