自宅で孤立出産した男の赤ちゃんを浴槽に沈めて殺害し遺棄した罪に問われているタイ国籍の女の裁判で、「赤ちゃんポスト」を運営する熊本県の慈恵病院の医師らが証言しました。
タイ国籍のカオピアパニット・ジュン被告(25)は、おととし4月、川崎市中原区の自宅で出産した男の赤ちゃんを浴槽の水に沈めて殺害し、マンションのゴミ置き場に遺棄した罪に問われています。
1日は検察側、弁護側が、それぞれの証人として医師2人への証人尋問を行いました。
検察側の証人の医師は、出産時の状況や出産後に一度水中から引き上げた際、「赤ちゃんの鼓動を感じた」などの被告の供述について、「医学的につじつまが合う」と証言。
出産して引き上げた時点では、赤ちゃんが生きていたと推認できるとしました。
一方、弁護側の証人として、親が育てられない乳幼児を匿名で受け入れる「赤ちゃんポスト」の運営を行う、熊本県・慈恵病院の蓮田健医師が出廷。
被告の当初の供述には医学的な矛盾点が多いとして、「記憶をつなぎ合わせてストーリーを作っているような気がして不可解だ」と指摘して、強いストレスから記憶障害になっていた可能性があるとしました。
閉廷後に取材に応じた蓮田医師は、誰にも相談できない孤立出産の末に赤ちゃんを殺害したり遺棄したりする事件は後を絶たず、神奈川県は全国でも大阪府に次いで多いと話しました。
また、そうした母親たちには、虐待や過干渉などを受け両親に恐怖を感じている、発達障害や知的障害の傾向があり職場や学校でいじめや叱責などはずかしめを受け続けた経験がある、物事をうまく言葉で説明できない、などの傾向が見られるということです。
熊本県・慈恵病院 蓮田健医師「妊娠を隠し通さないといけない妊婦たちは、9割以上が『親に見つかると縁を切られる』などと言う。 そのため、相談や支援にもつながらないのが実情だ。 まずは社会に、彼女たちの置かれた状況を理解してほしい」