ススキノ首切断事件 田村瑠奈被告の父は精神科医…なぜ通報できなかったのか 同業者が分析

公判が行われた札幌地裁(Googleストリートビューから)

なぜ娘の暴走を止められなかったのか――。札幌市ススキノのホテルで昨年、頭部を切断された男性(62=当時)の遺体が見つかった事件で、殺人罪などに問われた田村瑠奈被告(30)の母で、頭部を自宅に隠す手助けをしたなどとして死体遺棄と同損壊のほう助罪に問われた浩子被告(61)の第2回公判が1日、札幌地裁で行われ、父で精神科医の修被告(60)=殺人ほう助罪などで起訴=が証人として出廷した。「娘を裏切る気がして通報できなかった」と証言した父の心理状態を、精神科医が読み解いた。

浩子被告と修被告によると、瑠奈被告は18歳ごろから「シンシア」や「ルルー」と名乗り始め、両親が「瑠奈」と呼ぶことを拒否。瑠奈被告は母を「彼女」、父を「ドライバー」と呼んで〝奴隷〟扱いし、家庭内で〝王様〟気取りだったという。とにかく〝瑠奈ファースト〟となり、両親は親として振る舞うことが難しかったとした。

両親は瑠奈被告を幼少の頃から溺愛して、叱ることはなく、言うことをできる限り、かなえていた。瑠奈被告は中学生の頃から不登校を繰り返し、成人してからも就職せずに自宅暮らしだった。食事の世話は母がしていた。

瑠奈被告が自傷行為を繰り返し、修被告は「追い詰めないようなかかわり方が望ましいと考えた」と述べた。なぜ、瑠奈被告が支配するいびつな王国が築かれたのか。

都内の精神科医は「子供が暴力や自傷行為で親を脅して従わさせるケースがあります。女の子の場合は自傷行為で親を脅し、奴隷にするのです」と指摘する。

修被告は精神科医だったが、手を打てなかったのだろうか。

「外科医が身内の手術をできないように、精神科医も身内を治せないのでしょう。だから、一度は外の精神科への受診を勧めたんでしょう。溺愛してしまい自己中心的に育ってしまった上、何らかの精神疾患を抱えていて、普通の生活を送れなくなったことを分かっており、受診を勧めたが、瑠奈被告に拒否された。それ以上言うと自傷行為に走るので、言えなくなったのでしょう」(同)

それにしても、精神科医としての考えとは別に、親ならば、わが子が罪を犯したら自首を勧めたり、通報したりするものではないだろうか。

犯罪心理事情通は「娘を自立させることができなかった父として罪の意識を感じ、暴君化してしまった娘がやりたいようにやらせるのが贖罪になるという考えにとらわれたのでしょう。そして、娘の犯罪行為に対しても、最後まで付き合うと決めたのではないでしょうか」と話している。

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