6月から始まった増税「森林環境税」を考える

国民が森を支える(C)日刊ゲンダイ

6月14日に届いた市民税の納税通知書に「森林環境税」1000円が徴収されていた。「森林環境税」は、2024(令和6)年度から国内に住所のある個人に対し課税される新たな国税だ。市町村において、個人住民税均等割りと合わせて1人年額1000円が徴収される。物価の上昇が止まらない中での新たな国税の徴収だ。今回は「森林環境税」について考えてみる。

19年3月に成立した「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」は、温室効果ガスの排出削減目標の達成や、災害防止を図るため森林整備などの費用を国民が負担し森林を支える制度だ。森林環境譲与税は、19年度から前倒しで全国地方自治体への譲与がすでに始まり、22年度の森林環境譲与税の総額は500億円(市町村440億円、都道府県60億円)が全国の市町村に配布されている。

森林整備が目的とされる森林環境譲与税だが、都市部では森林がないところもある。配分基準は私有林や人工林の面積による配分が50%、人口に応じた配分は30%、林業従事者数に応じた配分が20%。結果、人口の多い自治体は譲与税の配分が増えることになる。

東京都の場合で見ると、22年度に配分された森林環境譲与税は16億6564万4000円。このうち都心23区への譲与額を見ると、千代田区2707万6000円、中央区2246万8000円、港区2912万8000円、台東区2240万6000円、大田区7825万2000円、渋谷区2608万8000円等々とある。譲与金の使い道では、台東区、渋谷区、大田区など全額が基金として積み立てられているのだ。譲与額全体で見ても、積立金は全体の38%と6億5769万2000円にも上る。森林の保護を目的に、納税者から徴収した税金が貯蓄に回されているのである。

東京都は現在、明治神宮外苑の再開発で高さ3メートル以上の樹木1904本のうち、743本を伐採する計画を進めている。新税である森林環境税の徴収が始まった一方で、明治神宮外苑の樹木を伐採する再開発。森林保護を名目とする森林環境税と、都民の森の伐採計画のどこに整合性があるのだろうか。

経済評論家の荻原博子氏がこう述べる。

「横浜市では国税の森林環境税の他に『横浜みどりアップ計画』とうたい、市民・法人税の『横浜みどり税』、や森林の保全・再生を目的に県税の『水源環境保全税』など多様な税金が3重に徴収されています。国民は今後も増税と、社会保険料等の増税にカウントされない負担が増えることは間違いないでしょう」

家計の厳しさは今後さらに増えていきそうだ。

(ジャーナリスト・木野活明)

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