本音を言って嫌われたくない…意見の食い違いで使える「とはいっても」の効果

相手の表情を読み取れると仲も深まるかも?

「信頼される人」として思い出される共通点の中に「本音を言ってくれる」や「裏表がない」という特徴があります。相手は自分への警戒感がほぐれていて、そして自分自身に対して興味を抱いてくれている場合、あなたに、「本当に私と同じ考え=同じ感情かどうか」を確認したいと思います。あなたも自分の本音をぶつけてみたいけれど、相手と違う意見だったとしたらと戸惑うことはあるでしょう。しかし、「信頼関係」に必要なのは、意見の同調ではなく、相手の反応、相手の感情をもっと引きだすためのやりとりです。

声・話し方の総合プロデューサーで阪急電鉄の車内放送の”あの声”で知られる下間都代子(しもつま とよこ)氏の著書『「この人なら!」と秒で信頼される 声と話し方』(日本実業出版社)から、今回は、本音を言っても信頼される話し方を紹介します。(本文から一部引用・再編集しています)

◇ ◇ ◇

例えば、こんな会話をした経験、あなたにはないだろうか。

相手「 山田さんって、いつも優しくて良い人よね。昨日もお土産をみんなに配ってくれて、すごく丁寧なのよね。ほんと良い人よねえ?」

さて、あなたが山田さんに対して同じく「良い人」と考え、好感を持っているのなら問題ないが、もしかしたら違う印象を抱いていることもあるかもしれない。わざわざ自分の本音を言う必要もないかもしれないが、このケースでは相手が同意を求めている。

「ほんと良い人よね?」と。

ここで頷いたら、あなたは後々、「あの人も同じ見解だった」と言われても仕方ない。

では、どう答えるのが良いのか。

そこで登場するのが接続詞の「とはいっても」である。

ときには自分の意見とは違う、と思うこともあるだろう。そこで、本音を自ら話して、さらに関係性を深めて欲しい。

話を逆転させるたったひと言、接続詞の「とはいっても」を挟むことで、今までの会話の流れから新たな展開を作ることができる。

「あなたの意見はわかりました。とはいっても、私はこう思うのですけど」

このような使い方である。では、先ほどの会話に戻ろう。

相手「山田さんって、いつも優しくて良い人よね。昨日もお土産をみんなに配ってくれて、すごく丁寧なのよね。ほんと良い人よねえ?」

自分「へえ、そうなのね。とはいっても、ちょっと気を遣いすぎている感じがして、私はかえって恐縮してしまうの」

このように「とはいっても」は、今までの流れを「汲んだ上で」違う意見を挟むときに使うと良い。

まずはきちんと相手の話を受け止めよう。相手の話をいちいち遮って「でも、でも」と言い返すようでは、信頼関係は築けないし、相手の本音を引きだすこともできない。いくら自分の本音が違うからといっても、それを押し付けてしまっては、ただ言い負かしたいだけの主張になるからだ。

相手の意見を聞いた上で、この「とはいっても」を挟み、違う意見、自分の本音を伝えてみよう。

当然、相手は共感してもらえると思ったのに違う意見を言われ、「え?」と思うし、一瞬たじろぐかもしれない。

相手の「声」で感情を読み取る方法は?

さぁここで、相手の「声」にどのような感情の反応があるかを見極めて欲しい。いよいよ相手の本音が見えてくる瞬間だ。

■相手の反応「え?」:顔、声ともに表情が曇る場合

聞き直すような疑問系の「え?」であり、顔の表情はこわばる。声の表情は曇り、やや小さめの声となる。

このような「え?」の反応の場合、相手は本音で話していたと考えられる。山田さんのことを心から「良い人」と思っている。

■相手の反応「え!」:顔と声の表情が明るくなる場合

驚きを持った「え」であり、顔の表情がパッと明るくなる。声も一段高く、大きめになる。このような「え!」の反応の場合、相手も本音では、山田さんに対して「ちょっと気を遣ってしまう」「良い人とは思うけれど…」など、含みのある感情を抱いていたと考えられる。

そこで、あなたには安心して本音を言ってもいいのかもしれないと思い、本心を吐露し始める。このように、「え」という、たったひと言の声の表情にも本音が埋もれてしまう

自分の本音が相手の意見と同じならそれで良い、と思いがちだが、こちらも先ほどのケースの「表情が曇る」のようなこともあるので注意が必要だ。

では、同じ会話で見てみよう。

相手「 山田さんって、いつも優しくて良い人よね。昨日もお土産をみんなに配ってくれて、すごく丁寧なのよね。ほんと良い人よねえ?」

これに対して、あなたも大賛成だとする。

自分「そうなのよ。ほんと良い人よね!」

ここで相手の本音はどうなのかを見極めたい。

■ 「…」:顔、声ともに表情が曇る場合

一瞬の間が生まれた。自分の本音は違うのに、相手に同意されたことで戸惑うからだ。本音では山田さんのことをそこまで「良い人」とは思っていないことがわかる。

■「そうそう!」「だよね」:顔と声の表情が明るくなる場合

すぐさま同意の相槌を打ってきたときは、心から山田さんのことを「良い人」だと思っている。

どれだけ信頼できる人だとしても、ときに相手は本音を隠すことがある。

しかし、ここでも忘れないで欲しいのは、相手の本音がどうであれ、それらを受け止める心の余裕は持っておきたいということだ。たとえ自分が相手とは違う意見だったとしても、自分の意見を主張しすぎたり、言い切ったりしない。「とはいっても、私はこういうふうに思うときもあるんだよね」と、ライトに自分の本音をぶつけてみると良い。そうすると、相手の口からポロリと本音が出てくることもある。

まずは自分がいつも本音で話すこと。そして、本音を互いに言い合えるようになれば、「この人なら」と信頼できる関係に成長していく。

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