なぜ?車を買うともらえる不思議「雨大国・マレーシア傘事情」街での販売はレア&ビニール傘は皆無!?

日本とはかなり異なるマレーシアの傘事情 ※画像はイメージ (C)123RF.COM

海外に住んでみて、母国の良さを再認識することもあれば、その国の文化や習慣が母国にもあればと感じることもあるでしょう。このコラムでは、元新聞記者で、現在二児の母としてマレーシアで暮らす斉藤絵美さんが、現地での出来事や習慣の違いについて紹介します。今回取り上げるのは、マレーシアの「傘事情」です。

【写真】マレーシアで、なぜか車を買うともらえる傘のイメージ

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日本では平年より約2週間遅れて、6月21日に近畿、東海、関東甲信地方でもようやく「梅雨入り」したとみられると発表があり、傘が手放せない季節になりました。

高温多湿の南国、マレーシアは日本とは違い、季節は乾季と雨季のみで、マレーシア政府観光局のホームページによると、私たちが住む首都・クアラルンプール近郊は5〜9月が雨の多い季節とされています。

ただ、実際に暮らしてみた肌感覚としては、雨季とされる時期に関係なく、毎日、特に夕方の短時間にスコールがザーッと降る印象です。市場調査会社「トレーディングエコノミックス」によると、2022年の国別平均降水量は、マレーシア(3485ミリ)が世界で4番目に雨が多く、日本(1606ミリ)の2倍以上に上ります。

しかし、そんな南国特有の“雨大国”であるにもかかわらず、なんと、ショッピングモールなどでは傘を売っているところをあまり見かけません。我が家はマレーシアに移住して2年が過ぎ、週末はさまざまなモールで買い物を楽しみますが、梅雨時期に日本の百貨店に特設される「雨具コーナー」のようなものも見当たりません。いくつかのコンビニエンスストアでは店のロゴマークが入った大きな傘を売っていますが、日本で主流のビニール傘に至っては、これまで一度も目にしたことがありません。

では、実際に雨が降った時にはどうしているのでしょう。

ローカル(地元)の友人に聞くと、少々の雨では傘を差さない、とのこと。雨が降れば車かタクシーで移動すればいい、と言います。マレーシアは配車アプリが生活に浸透しているので、気軽に、しかも破格の値段でタクシー利用や配車サービスを受けることができます。そもそも、日常からマレーシアは車移動が主流で、外をあまり歩かないため、傘の出番も少ないように感じます。

そうは言っても、傘を差している人はいます。

町でよく見かけるのは、自動車を購入した際になぜかもらえる、ゴルフ場で使うような大型の傘。その頑丈な傘を使っている人が多いように思います。

こちらのスコールはバケツをひっくり返したようなゲリラ豪雨のため、ビニール傘や折りたたみでは到底、風雨は防げません。ビニール傘は透明なため視界もよく低価格なため、日本ではよく購入していましたが、たしかにマレーシアでは役に立ちそうにありません。

それでも、昔に比べて折りたたみ傘を持ち歩く人が増えた、とローカルの友達は言います。気象異常の影響なのか乾季なのに大洪水が発生するなど、以前より天候が読みにくくなっているからではないでしょうか。また、季節を問わず、日差しが異常に強い日があり、折り畳み傘なら日傘としても代用できて大変重宝するそうです。

日本も2024年の梅雨入りが例年より大幅に遅れたように、近年、ゲリラ豪雨を含む異常気象が頻繁に見られるようになりました。日本で今主流のビニール傘の出番も、気象変動に伴って、もしかしたら日本からなくなる日が来るかもしれません。

(取材・文=斉藤絵美)

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