熱海土石流災害から3年“人災”指摘も責任の所在明らかにならず ポイントは「被害は予見できたのか」

静岡県熱海市で発生した土石流災害から7月3日で3年です。自然災害と思われた災害は、刑事事件に発展しましたが、いまだに責任の所在は明らかになっていません。専門家は災害を予想できたかという「予見可能性」をポイントに挙げています。

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<LIVEしずおか 滝澤悠希キャスター>
「3年前の7月3日と同じように雨が降っている熱海市伊豆山です。あの日、この場所には大量の土砂が流れ込み、様相が一転しました」

3年前からこの場所は被災地になりました。2021年7月3日、山肌を流れ下った大量の土砂が28人の命を奪い、建物被害は137棟にのぼりました。

土石流の起点にあったのは盛り土。規制の3倍以上、約50mの高さに盛られた土砂が崩れ、被害を拡大したとされています。

この災害は、“人災”ではないか。遺族らの刑事告訴に応える形で、警察は前と現在の土地所有者の関係先に強制捜査に入り、違法な盛り土の造成を食い止められなかった熱海市や静岡県への家宅捜索にも踏み切りました。しかし、3年が経とうとする今も、刑事責任は明らかになっていません。

<捜査関係者>
「同様の事案や事例が全国的に少ないし、これだけの規模というのは前例がない」
「盛り土の造成だけでなく、放置された時間経過もあり『犯罪の期間』を定めるのも難しい」

捜査が続く中、2024年に入り本格化したのが事情聴取です。

<前土地所有者 天野二三男氏>
「事実を主張します。事実の中から判断してもらいます。警察が調べた事実の照合的、食い違いも多く出てくるかもしれませんね。でも、私は私なりの事実を申し上げます」

また、現所有者の代理人弁護士によりますと、現所有者本人も事情聴取に応じているということです。

盛り土規制に詳しい専門家は、捜査における重要な要素を指摘します。

<静岡産業大学 小泉祐一郎教授>
「刑事責任については、まずは今回の事件では、予見可能性。災害によって人が亡くなったりとか、被害を予見することができたかということが一番のポイントになります」

災害の発生や被害を予想することができたかどうか。それぞれの当事者の認識はどうだったのでしょうか。

6月30日、前所有者がSBSの取材に応じ、「盛り土について報告を受けてはいるが、まさか崩れるという認識はまったくありません」と答えました。

盛り土を含む土地を買った現所有者は予見できたのか。代理人弁護士が見解を述べました。

<現在の土地所有者の代理人 河合弘之弁護士>
「そんなことはわからなかったと思いますね。今の所有者が何をしようと、あの事故は防げなかった。一番悪いのは、前所有者。あんなに無茶苦茶なことをやって。その次には、それを認めた行政が悪い。認めて、かつ、そのあとの指導も非常に手抜きだったこと」

また、崩落を防ぐ最後の砦だったはずの行政側は。

<斉藤栄熱海市長>
「裁判の争点になっていますので、裁判の中で明らかになっていくものと考えております」

<鈴木康友静岡県知事>
「最悪の事態を予見するのは、なかなか難しかったのではないかなと思っております」

「予見ができなかった」で済ますには、あまりにも大きい被害。遺族の無念が晴れることなく、被災地にはきょうも雨が降ります。

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