“王者の行軍”を止めた! ヨッヘンとルーカスのハーン親子が日曜最終ヒートで共闘勝利/ETRC第3戦

 開幕戦から王者ノルベルト・キス(レベス・レーシング/マン)が無双状態に突入し、土日両日の予選最速から週末4ヒート完全制覇の“グランドスラム”を継続しているETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップだが、その第3戦が6月22日~23日にベルギーのゾルダーで開催されると、現役王者の記録はついに途切れることに。

 シリーズ6冠の“帝王”ヨッヘン・ハーン(チーム・ハーン・レーシング/イベコ)と、その息子でクローム登録のルーカスが、日曜のレース4で抜群のチームワークを発揮し、首位の父に対し背後で“防御壁”を務めた息子が迫りくるチャンピオンを抑え切り見事に親子ダブル表彰台を完成させた。

 シリーズがFIA国際自動車連盟のヨーロッパ格式選手権に昇格した2006年以降、たったふたりのドライバーによりわずか5回しか記録されてこなかった週末”グランドスラム”の偉業を連発した王者キスは、このゾルダーで前人未到の開幕3戦連続の記録へ挑むこととなった。

 その偉大な記録を保持するもうひとりのチャンピオンでもあるハーンは、この週末を占う重要な土曜予選で3番手に留まると、キスに対し総合ポールを争える唯一のドライバーのように見えたアントニオ・アルバセテ(Tスポーツ・ベルナウ/マン)も、Q3では0.8秒の大差で届かず。ハンガリー出身のキスが昨季から継続する年間予選全セッション制覇の記録を維持していく。

 迎えたレース1では、オープニングラップでサッシャ・レンツ(SLトラックスポーツ30/マン)を軸に、クレメンス・ヘッカー(ヘッカー・レーシング/スカニア)やルーク・ギャレット(ギャレット・トラックスポーツ/マン)らが多重クラッシュの大惨事に見舞われるなか、ターン1までに仕掛けようと動いたアルバセテも封じてキスが4秒ものマージンを築き先勝。これで早くも年間勝利数を『9』としていく。

 続くリバースグリッドのレース2で、またもや完璧な走りを見せたチャンピオンは、8番グリッド発進から素早い追い上げを見せ3周を終えた時点で首位に立つと、第2戦スロバキアリンクに続きチャンピオンを背後に引き留めようと決意したシュテフィ・ハルム(チーム・シュバーベン・トラック/イベコ)との攻防戦に突入する。

予選では、王者ノルベルト・キス(レベス・レーシング/マン)が昨季から継続する“年間予選全セッション制覇”の記録を維持していく
開幕から週末“グランドスラム”の偉業を連発した王者キスは、このゾルダーで前人未到の開幕3戦連続の記録へ挑む
日曜予選も、総合ではQ1~Q3のすべてでキスが首位に立ち、いまだ誰にも最前列グリッドを明け渡さない速さを維持していく

■3台のマシンで王者キスを抑え込む

 ここでキスはターン5のアウト側から大胆な動きを試みたものの、彼女のイベコを仕留めることはできず。行き場を失った真紅のマンはシケインを横切り、ハルムより先にコース復帰してしまう。これでアドバンテージを取られた王者には5秒加算ペナルティが課されたものの、判定時点ですでにステフェン・ファース(タンクプール24レーシング/スカニア)とルーカス・ハーンを追い抜き首位に立っており、リードを10秒に広げてまずは土曜完全制圧を成し遂げた。

 このヒートでキスの両隣で総合表彰台を分け合ったハーン親子は、これが伏線になったか。明けた日曜の予選で、まずは息子のルーカスがクラス最速のタイムを記録。一方、総合ではQ1~Q3のすべてでキスが首位に立ち、いまだ誰にも最前列グリッドを明け渡さない速さを維持していく。

 そのままレース3でも勝利を飾ったキスの背後では、レンツを抜き去った父ヨッヘンが2位でチェッカーを受け、息子ルーカスは8位でリバースポールを確保するなど、親子ともども気力充分のドライビングで週末最後のヒートに向けた準備を整える。

 そのレース4スタートでジョン・ニューウェル(NWTモータースポーツ/マン)の挑戦を退けたルーカスが首位を維持すると、序盤のうちに父ヨッヘンがその背後にまで浮上。さらにスペイン出身アルバセテもハーン親子の戦略に加担し、中盤3周にわたってキスを背後に抑え込む力走を見せる。

 この間、息子の前に出てスパートを開始した父がリードを広げ、背後から迫るアルバセテとキスを必死で抑え切る役割を演じたルーカスが完璧なサポート役を果たし、ハーン親子が待望のワン・ツー・フィニッシュを達成。2024年シーズンで初めて、キスは表彰台のトップに立つことができず、これで3戦連続グランドスラムの記録を逃す結果となった。

 続くFIA ETRCの2024年シーズン第4戦は、欧州トラックレーシングの“聖地”とも称されるドイツのニュルブルクリンクにて7月13日~14日に争われる。

レース3でも勝利を飾ったキスの背後では、父ヨッヘンが2位でチェッカーを受け、息子ルーカスは8位でリバースポールを確保する
3戦連続”グランドスラム”の新記録に向け、王者キスがレース3まで制覇してあとひとつに迫る
首位の父に対し背後で”防御壁”を務めた息子が迫りくるチャンピオンを抑え切り見事に親子ダブル表彰台を完成させた

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